今回は「読むウェブ」からすこし離れて,UGC(User-Generated Content:一般ユーザーによって生成されるコンテンツ)と仮想世界の書物について書いていきたい。ディスプレイで読むオンラインマガジンのさらに先の話になる。前知識がある程度必要になるので2回に分けて掲載することにし,今回は仮想世界について考えてみたい。話題のきっかけとして取り上げるのは「Second Life」である。
Second LifeとUGC
最近,国内でも「Second Life」に関するニュースが増えてきた。大半は企業参入のニュースだが,自治体や国会議員が活用するといった例も紹介されている。Second Lifeは,米国リンデン・ラボ社の仮想空間を提供しているサービスである。Webや雑誌などで掲載されている画像をみると3Dゲームのように思えるが,遊びのルールが明確に設定されている「作り込まれたオンラインゲーム」ではない。UGCの場であり,新しいコミュニケーションシステムとして捉えることができる。
Second Lifeを話題にする上である程度の専門用語を知っておく必要がある。まずは基本的なものを抜粋し,簡潔に解説しておこう。
- シム(SIM)
- シミュレータ (simulator) の略。Second Lifeでは世界をエリアで分割し,任意の数の地域を含む。各エリアは1つのサーバで管理されている
- アイランド(island)
- Second Life内の島のこと。1つもしくは複数のシムで構成される。面積に応じて土地使用料を支払うメインランド(Mainland)とシム単位で購入するプライベートランド(Privateland)がある。プライベートランドで分譲された土地を購入もしくは賃貸することもできる
- オブジェクト(object)
- Second Life内に存在する自然,建物,乗り物,衣装,道具などあらゆるもの。オブジェクトは複数のプリムで造られる
- プリム(prim)
- プリミティブ(primitive)の略。球や円柱,円錐,立方体などの基本形状のこと
Second Life内の土地に建てられた家や小道具,アバターの衣装などは住人が造ったもの(オブジェクト)である。プリムを組み合せ,加工して造り上げていく。これら創作物の著作権は作者に帰属する。サービスを提供しているリンデン・ラボ社に帰属しないというのがSecond Lifeの大きな特徴である。住人は自分が建てた家や製造した乗り物,デザインした衣服などを自由に販売することができる。売買にはSecond Life内の貨幣リンデンダラー(L$)が使われるが,米ドルに換金することも可能だ。つまり,RMT(Real Money Trade:リアルマネートレード)が容認されたサービスなのである。
Second Lifeは企業にとって実証実験の場
Second Lifeは,目的が設定されているゲームではなく,自らの表現行為や人とのコミュニケーションの場を提供する仮想空間である。社会シミュレーションを試みるには絶好のサービスといえるだろう。3DCGによる仮想世界を新しいビジネス・インターフェイスとして研究している企業は多いが,実証実験には莫大な費用がかかる。今からノウハウを蓄積しておきたいが,プロジェクトとして動かすのは大変であった。
Second Lifeの登場はそれら企業に大きなチャンスを与えることになった。実際に稼働している大規模な仮想世界に参加することができるからだ(しかも参入に対する制約がない)。Second Lifeのビジネス展開というよりは,3D仮想空間サービスの実証実験の場として活用できることに大きな価値がある。参加することで問題点や可能性を探ることができるのである。たとえば,どんな場面でdeep-think(処理が遅くなりアバターの動作が重くなったり,オブジェクトが欠けてしまう状態)が発生するかなど,傾向を調べることができる。
Second Lifeが日本で流行るかどうか,賛否両論さまざまな意見がある。現在,利用者にとって参加の障害となっているのは次の3点である。
- 快適動作にはハイエンドなPCが必要
- 自由度が高すぎる(ゲームのように明確な目的がない)
- システムやオフィシャル情報が英語
動作環境や言語については時間の経過によって解決していくと思うが,利用者が「楽しみ方を見いだせない」ことについては旅行業界におけるツアーガイドのような仕組みが参考になるかもしれない。同様にライフエキスパートの存在も必要になってくる。いずれにしてもスタートしたばかりの前例のないサービス,企業にとってはSecond Lifeに参入することが貴重な「勉強」になるはずだ。
今後,Second Lifeのようなサービスが続々登場してくると思うが,その源流は「住人の自由度が高く,制限のない社会」を提供したSecond Lifeの運用方針にあったといってよいだろう。

