読むウェブ ~本とインタラクション

第12回 電子書籍の”今”を読み解く

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

電子書籍とは何か?

現在,本や雑誌をスキャンしてPDFに変換したデータも,プログラミングされたアプリケーション版もすべて⁠電子書籍(もしくは電子ブック)⁠と呼ばれています。本連載では,⁠電子書籍とは何か?」をあらためて考えていきたいと思います。まず,全体を俯瞰しやすいように,電子書籍を「フォーマット⁠⁠,⁠プラットフォーム⁠⁠,⁠リーダー」の3つの視点で見ていきます。電子書籍を,どのようなプロセスで購入し,どうやって読むのか,利点はなにか,どんな問題を抱えているか等々,多層的に検証していくことで,体系化することが可能になると思います。また,80年代,90年代に作られた電子ブックとの違いも明らかになってくるでしょう。

図3 電子書籍フォーマット,電子書籍プラットフォーム,電子書籍リーダーの3つ視点で「電子書籍」を俯瞰する

図3 電子書籍フォーマット,電子書籍プラットフォーム,電子書籍リーダーの3つ視点で「電子書籍」を俯瞰する

電子書籍プラットフォームには,Amazonの「Kindle Store」やSonyの「Reader Store⁠⁠,Barnes & Nobleの「Bookstore」などがあります。Appleの「App Store」も電子書籍の有力なプラットフォームになっています(提供されている電子書籍の数はゲームを上回り,現在トップです⁠⁠。さらに,米国では電子書籍専門のストア「iBookstore」がオープンする予定です。

図には記載していませんが,国内には「電子書店パピレス⁠⁠,⁠eBookJapan⁠⁠,⁠理想書店⁠⁠,⁠コミックi」などがあります。

図4 有力な電子書籍プラットフォームには,Kindle StoreやReader Store,Barnes & Noble Bookstoreなどがある

図4 有力な電子書籍プラットフォームには,Kindle StoreやReader Store,Barne

電子書籍リーダーは,⁠読書専用端末」「汎用端末」に大別されます。KindleやReader,Nookなどは,読書をするための専用機です。 Appleの新製品「iPad」は,タブレット型の汎用端末ですから,パソコンのような使い方が可能です。リーダー(ソフトウェア)をインストールすれば,電子書籍リーダーとして使用できます。その他,スマートフォンや携帯電話,携帯ゲーム機も同様です。

図5 電子書籍リーダーは,専用機と汎用機に分けられる。図には記載されていないが,パソコンもリーダーをインストールすれば読書端末として利用可能。

図5 電子書籍リーダーは,専用機と汎用機に分けられる。図には記載されていないが,パソコンもリーダーをインストールすれば読書端末として利用可能。

電子書籍フォーマットは,⁠オープンな標準規格」「独自フォーマット」に大別できます。今回は詳細を省きますが,オープンな標準規格には, IDPF(International Digital Publishing Forum)が策定している「ePub」があります。フォーマットはプラットフォームとリーダーによって決まってしまう場合があります。たとえば, Kindle Storeで買った電子書籍は,AZWもしくはTopazという独自フォーマットになっていますので,利用できる読書専用端末はKindleだけです。 NookやReaderでは読めません。ただし,iPhoneおよびiPod touch向けにリーダー(Kindle for iPhone/iPod touch)を提供していますので,App Storeからダウンロードすれば読書端末として使用可能です。その他にも,Kindle for PC,Kindle for BlackBerryも提供されています。

図6 電子書籍フォーマットは統一されておらず,オープンな仕様から独自の仕様までさまざまである。

図6 電子書籍フォーマットは統一されておらず,オープンな仕様から独自の仕様までさまざまである。

O'Reilly Media(オライリーメディア)で電子書籍を買って,iPhoneで読む場合,どのような流れになるのか示してみましょう。O'Reilly Mediaの電子書籍は,ePubやMobipocket,PDF,APKなどのフォーマットで提供されています。iPhoneで読みたい場合は, ePubフォーマットを選択し,Stanzaというリーダー(アプリ)で読むことになります。StanzaをApp Storeからダウンロードして,⁠Stanza内のBookstoreから)購入したい本を選びます。Safari経由でチェックアウトすると, Stanza内に電子書籍がダウンロードされます。

図7 App StoreからStanzaをダウンロードし,Stanza内から本を選び,Safari経由で購入。電子書籍は,Stanza内の本棚に納められる。

図7 App StoreからStanzaをダウンロードし,Stanza内から本を選び,Safari経由で購入。電子書籍は,Stanza内の本棚に納められる。

図8 iPhone用の電子書籍リーダー「Stanza」

図8 iPhone用の電子書籍リーダー<a hre

O'Reilly Mediaは,App Storeにも電子書籍を用意しています。App Storeで購入したアプリ版の電子書籍は,Stanzaと一体になっていますので,ダウンロード後,すぐに読むことが可能です。Stanzaから購入した場合は,手続きがあって面倒ですが,Stanza内の本棚に収納されていきます。App Storeで購入した場合は,アプリ版なので,買うたびにアイコンが増えていきます。10冊買うと,10個のアイコンが並ぶことになります。

図9 App Storeで購入した電子書籍は,Stanza(リーダー)と一体になったアプリ版。Safari経由の面倒な手続きなしで購入できる。

図9 App Storeで購入した電子書籍は,Stanza(リーダー)と一体になったアプリ版。Safari経由の面倒な手続きなしで購入できる。

まとめ

  • 1987年,Apple Computerが「HyperCard(ハイパーカード⁠⁠」をリリース
  • 1991年,Apple ComputerがQuickTimeをリリースし,マルチメディアの時代に突入
  • 1991~1995年,CD-ROMを媒体として提供される電子ブック百花繚乱の時代
  • 2007年11月,米国でAmazonのKindle(キンドル)が登場
  • 電子書籍を「フォーマット」⁠プラットフォーム」⁠リーダー」の3つの視点で見ていく
  • 電子書籍リーダーには,⁠読書専用端末」「汎用端末」がある
  • 電子書籍フォーマットには,⁠オープンな標準規格」「独自フォーマット」がある

80年代はフロッピーディスク,90年代はCD-ROMを媒体として,パソコンショップや書店などで流通していた電子書籍が,現在は読書端末一台あれば,ネット経由で購入し,その場でダウンロードできてしまいます。しかも,読書の続きをスマートフォンやパソコンを使って再開できるのです。今後,読書スタイルがどう変化していくのか,とても興味があります。日本の電子書籍市場がどのように発展していくのか,見守りつつ,私自身も積極的に新しい試みを実践していきたいと考えています。

今回の記事では,2000年前半のエピソードをばっさり割愛していますが,追々取り上げていきたいと思います。また,電子書籍関連のPodcastを毎日更新していますので,ご興味のある方はアクセスしてみてください。

電子書籍メディア論 - 日刊徒然音声雑記
URLhttp://admn.air-nifty.com/web_design/

次回からは,⁠電子書籍の種類とフォーマット」⁠第13回⁠⁠,⁠電子書籍のプラットフォーム」⁠第14回⁠⁠,⁠電子ブックリーダー(ハードウェアとソフトウェア⁠⁠第15回)といった流れで,各テーマについて詳しく取り上げていきたいと思います。

著者プロフィール

境祐司(さかいゆうじ)

インストラクショナル・デザイナー[Instructional Designer]として学校,企業の講座プラン,教育マネジメント,講演,書籍執筆などの活動をおこなう。2000年より情報デザイン関連のオンライン学習実証実験を始める。現在,教育デザイナー育成を目的としたフォーラムを立ち上げるため準備中。著書に「速習Webデザイン Flash CS4」(技術評論社),「Webデザイン&スタイルシート逆引き実践ガイドブック」(ソシム)などがある。

URLhttp://admn.air-nifty.com/monkeyish_studio/

著書