読むウェブ ~本とインタラクション

第13回 電子書籍の種類とEPUBフォーマット

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EPUBフォーマットの特性

EPUBフォーマットは,コンテンツ全体がリフロー処理されるため,ページの概念がありません。さらに,拡大やスクロールもありません。長い巻き物をイメージしてください。巻き物の最上部からテキストとイメージが流し込まれ,読者は窓枠(リーダーアプリケーションのフレーム)でのぞくわけです。Webページのように,長いページをスクロールしながら見ていくわけではありません。

もし,読者が「文字が小さい」と感じた場合は,文字のサイズを大きくすることができます。文字が大きくなると,画面から文字が溢れますので,次の画面に移動していきます。つまり,画面数が増えていきます。逆に,文字のサイズを小さくすると画面数は減っていきます。リーダーアプリケーションでは,⁠全体の40%」のようにパーセントで画面の位置を表示しています。

図12 目次は,紙の書籍と同様のユーザビリティを提供しているが,ページの概念はない。右の画像を見ると「36% into Book」と表示されている

図12 目次は,紙の書籍と同様のユーザビリティを提供しているが,ページの概念はない

読者は,ページ全体を拡大したり,拡大したページをスクロールしながら読むという煩わしい「操作」をする必要はありません。電子書籍のコンテンツ部分は,最初から読書専用端末やモバイルデバイス,パソコンなどの画面に最適化されているため,クリック(もしくはタップ)するだけで,画面を切り替えていくことができます。

多くのリーダーは,⁠ページをめくる」という本のメタファを採用していますが,実際の紙の本のページめくりとはまったく異なることを理解しておきましょう。

  • リフロー処理によって,最初からデバイスに最適化されている
  • 画面全体を拡大したり,スクロールする煩わしい操作が必要ない
  • 読者の好みで文字サイズや字体の変更が可能
  • 視認性,可読性を重視した仕様

EPUBフォーマットの拡張

前述したとおり,EPUBは文字主体の欧文の書籍に適したフォーマットであるため,レイアウトが消滅すると構造が崩れてしまう書籍では使われていません。たとえば,ビジュアルが多く,複雑な段組みで構成されているような書籍は,EPUB用に大幅な修正が必要になってしまいます(これではEPUBフォーマットにする意味がない⁠⁠。

現在,レイアウト構造に意味のある書籍については,圧倒的にPDFフォーマットが採用されています。EPUBフォーマットで,レイアウトを表現するには,90年代に流行った物理マークアップ(テーブルレイアウトなど)を使うしかありません。ただし,このようなレガシーな手法を使うと,EPUBの利点を損なうことになってしまいます。

EPUBフォーマットの拡張については要望が多く,次期バージョン「EPUB 2.1」⁠草案)には,ページレイアウトやインタラクティブコンテンツの埋め込みなどについても,今後の課題として盛り込まれています。

図13 PDF版マガジン(上)とEPUB版のマガジン(下⁠⁠。EPUBは,Adobe Digital Editionsで表示している。可読性は,PDFよりもEPUBの方が高い。ページレイアウトの仕様が拡張されると,雑誌などでも有効なフォーマットになる可能性がある。マガジンはThe Pragmatic Bookshelfを参照した

図13 PDF版マガジン(上)とEPUB版のマガジン(下)

読書専用端末

日本にはまだ読書専用端末がありません。Kindleの国際版は購入できますが,日本語で読める本が揃っていませんので,一般ユーザーに訴求できる製品とはいえません。現在,日本ではケータイやスマートフォンなどのモバイルデバイスやパソコンなどが読書端末として利用されており,本格的な普及にはまだ時間がかかりそうです。

ただ,デジタル化の勢いは止まらないでしょう。個人的に,可能性を感じているのは,ソーシャルメディアを取り込んだリーダーアプリケーションです。まったく新しい読書体験を提供できる可能性があり,動向に注目しています。

さて,次回は電子書籍のリーダーアプリケーションについて取り上げてみたいと思います。

電子書籍関連のPodcast電子書籍メディア論 - 日刊徒然音声雑記を毎日更新していますので,ご興味のある方はアクセスしてみてください。

著者プロフィール

境祐司(さかいゆうじ)

インストラクショナル・デザイナー[Instructional Designer]として学校,企業の講座プラン,教育マネジメント,講演,書籍執筆などの活動をおこなう。2000年より情報デザイン関連のオンライン学習実証実験を始める。現在,教育デザイナー育成を目的としたフォーラムを立ち上げるため準備中。著書に「速習Webデザイン Flash CS4」(技術評論社),「Webデザイン&スタイルシート逆引き実践ガイドブック」(ソシム)などがある。

URLhttp://admn.air-nifty.com/monkeyish_studio/

著書