デジタルブランドマネジメント

第18回 ブランド・ロイヤルティを向上させるエンゲージメント

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ユーザーとの定期的なエンゲージメントをいかに実現し,ブランド・ロイヤルティを向上させるのか? これは,ソーシャルメディアに取り組む多くのブランドが,今まさに抱えている課題です。ただ「いいね!」の数を集めることや,コンテンツを拡散させるのではなく,ブランドと顧客との関係を深めることが求められているのです。

本当のエンゲージメントを実現する

そもそもエンゲージメントは「meaningful interaction between brands and consumers(ブランドと消費者間の意味のあるインタラクション)⁠と定義されており,顧客との関係を深める目的やそれを実現する具体的な手法がなければそれはただのインタラクションやコールトゥアクションに過ぎないのです。相手にどのようなアクションを実行させ,ブランドに対してどのような態度変容を起こすかが決まっていなければ本当の意味でのエンゲージメントを実現することはできません。

エンゲージメントを実現し,ブランド・ロイヤルティを向上させるためには,ユーザーとブランドの関係に適したインタラクションを提供する必要があります。

顧客とブランドの関係を知る

顧客がブランドに対して抱く意識は様々です。ブランドを知らない状態から,ブランドを自分ごととして思うまでには様々な態度変容の段階があるはずです。

次の表はとあるマーケティングリサーチ・ファームのBarrier Ladderという資料とPhillip and Milton Kotlerの『Market Your Way to Growth』に含まれていた考え方を組み合わせたものです。

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ブランドへの態度変容の段階は購入後だけでも5段階もあり,それぞれの段階でブランドに抱く意識は異なります。エンゲージメントを実現するためには,個々の段階に適したインタラクションを提供する必要があります。

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「期待通り」ではなく「期待以上」

顧客のニーズに応え,満足させるだけではロイヤルティは生まれません。ブランドに対する意識を「Satisfiaction」からリピート購入をする「Commitment」へと発展させるためには顧客の期待を超える体験を提供する必要があります。

KLMは2010年からソーシャルメディアを通じて個人情報を公開している顧客を見つけ出し,パーソナライズされたギフトを贈るKLM Surprizeというサービスを実施しています。ギフトが小さなものであったとしても,空港や飛行機の中で退屈に過ごすことを想定しているユーザーにとっては強烈なブランド体験となるはずです。

もちろん,KLMの施策のように大きなコストや労力のかかることでなくても顧客の期待を超えることはできます。Zapposでは配送の予定が早まった場合,それをサプライズとしてメールで知らせます。メールを見なければ気づかれないくらい小さなことかもしれませんが,ユーザーにとっては十分嬉しく,期待を超えるものではないでしょうか。

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友人への贈り物

リピート購入をする顧客にブランドを知人に薦めるきっかけを与えれば,実行する確率は高いはずです。ブランドに対する意識を「Commitment」から「Advocacy」へと発展させるためには知人に薦めるメリットを提供することが効果的です。本人に直接インセンティブを与えるのではなく,ギフトとして贈る機会を提供する手法が一般的になりつつあります。

Coca Colaはオーストラリアで最も一般的な150の名前をパッケージに印刷し,友人への贈り物としての購入を促すキャンペーンを実施しました。贈った側も贈られた側もブランドへのロイヤルティが向上し,売上にも大きく貢献したという結果が出ています。

最近はFacebookでデジタルクーポンを知人に贈るキャンペーンなどを見かけますが,無作為にばら撒くようなことは決してブランド・ロイヤルティの向上には役立ちません。成功のポイントは,既に「Commitment」の段階にいるユーザーを抽出し,彼らだけに働きかけることではないでしょうか。

建設的なフィードバック

ブランドを知人に薦める顧客は,その商品やサービスをより良いものにしたいと思うはずです。逆を言えば,それほどのファンでなければ,わざわざブランドに対して建設的なフィードバックを述べる人は少ないでしょう。ブランドに対して強い思い入れがあるからこそ,フィードバックをしてくれるのです。

Starbucksにはそのような強い思い入れを持ったファンが多く存在します。My Starbucks Ideaでは,製品や店舗だけでなくCSR活動についてまで顧客からのフィードバックを求めています。サイトに寄せられたアイディアはユーザー同士の議論や投票を受け,重要なものは実際に採用されます。

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献身的な活動

自分が行ったフィードバックが採用され,ブランドの商品や活動が改善されれば「自分のブランド」という意識が生まれ,フィードバックに費やす時間も長くなります。実際Starbucksには専用のブログを立ち上げ,常にブランドへのフィードバックやアドボカシーに務めている献身的なファンがいます。

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彼女のように自分の時間を惜しげもなくブランドに捧げるファンは最もブランド・ロイヤルティの高い「Ownership」に分類されます。ブランド・ロイヤルティの最終的なゴールはこのようなファンを育成することではないでしょうか。

最近では新製品を開発する際に消費者のフィードバックを用いるケースが多く見られますが,更に参加者の中から貢献度の高いファンを抽出し,深くブランドの活動に関わる機会を提供することが重要なのかもしれません。

コーズを提供する

エンゲージメントにはユーザーの自発的なアクションが不可欠です。インセンティブを小さな後押しとして活用することは考えられますが,それが主目的となってしまっては元も子もありません。ロイヤルティを向上させるためにはユーザーが精神的な充足や達成感を感じられるコーズ<理由・動機づけ>を提供することが効果的です。

ブランドからの発信ではありませんが,最近5人の子供が父親に子犬を買ってもらうために100万いいね!をたった13時間で獲得した事例があります。ユーザーは子どもたちが子犬を買ってもらえるように行動を起こしたのです。

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ブランドが顧客とのエンゲージメントを実現し,ロイヤルティを向上させるためにコーズは不可欠なものとなりつつあります。どんなに小さなコーズであったとしても顧客が関心を持ち,行動を通じて貢献したいと思ってもらえれば十分です。最終的に,ブランドとはロゴや商品を見た時に消費者の中で起こる気持ちなのです。エンゲージメントを通じて,よりポジティブな気持ちを起こすことができればブランドは支持され,ロイヤルティの向上につながるのではないでしょうか。

著者プロフィール

荻野英希(おぎのひでき)

デジタルマーケティングエージェンシー,FICC inc. 代表取締役社長。
デジタルがブランドをどのように強化し,その役割はブランド毎にどう異なるのか? デジタルブランドマネジメントの仕組みを検証する。

URLhttp://www.ficc.jp/

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