デジタルブランドマネジメント

第48回 WebキャンペーンのKPI設定方法

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Webキャンペーンなどのデジタル施策はあらゆる側面からの計測が可能です。PVなどの量的指標,CVRなどの質的指標,CPCなどの価値指標と,たくさんの指標が存在します。しかしどんなに測りやすくても,売上や利益などの財務指標に変換することができなければ,KPI(重要業績評価指標)とは言えません。決裁者の承認を得て,マーケティング目的に貢献するためには,予算と目標に基づいてKPIを設定する必要があります。

  • 量的指標:目標を達成するために獲得すべきユーザー数,ターゲット人口に対する比率。
  • 価値指標:予算内で目標を達成するためのユーザー獲得単価上限。
  • 質的指標:量的指標,価値指標を達成するために必要なインタラクションの質。

Webキャンペーンへの投資を正当化するためには,目標や予算に変換できる量的指標と価値指標が必要になります。目標を達成するために,⁠認知」⁠購入意向」⁠購入」⁠リピート」⁠推奨」など,ファネル段階でそれぞれ何人の新規ユーザーを獲得する必要があるのか? また,予算内で目標を達成するためのユーザー獲得単価の上限はいくらなのか?を算出します。

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購買がオフラインで発生する場合,直接的なデータを基にこれらの指標を算出することは現実的ではありません。そのためWebキャンペーンのKPIは,いまだ過去の実績などから感覚的に設定されることがあります。しかし,これでは施策から幾らのリターンを得られるかがわからず,決裁者の承認を得ることや,実施後の効果測定を行うことも困難になります。

手元にあるデータが限られていても,調査データなどを組み合わせ,モデリングを行うことで,目標と予算に基づいた適切なKPIを設定できます。上記の量的指標,価値指標を設定するためには,次のデータが必要になります。

  • キャンペーン予算
  • ROMI目標
  • 平均継続月数
  • プロジェクト期間
  • 平均購入価格
  • 粗利益率
  • 月刊平均購入数
  • ターゲット人口
  • 認知率
  • 購入意向率
  • 購入率
  • リピート率
  • 推奨率

なお,ROMIとはマーケティング投資回収率を意味します。計算方法は「(収益-費用) / 費用」で,マーケティング施策の期間中に得られる直接的な粗利益と費用の比率を表します(以降の各項目の算出式は,Excelの構文を使って表現しています)⁠値がマイナスな場合は損失,プラスの場合は利益が見込めます。値がゼロの場合は直接的な利益はありませんが,対象期間を超えるCLTV(顧客生涯価値)による間接的な利益が見込めるため,必ずしもROI(投資対利益)が無いということはありません。。

マーケティング実務者が基本的な分析を行っていれば,これらのデーは決して入手困難なものではありません。ターゲット層の認知率~推奨率も比較的低価格な調査から得ることができます。これらのデータから,KPIを設定するためには,上記項目にたどり着くまで各指標を分解し,算出に必要な計算式を組み上げます。まずは全体の軸となる購入段階の量的指標,⁠購入数」⁠購入率目標」の計算式を割り出します。

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購入段階の量的指標・価値指標の計算式は次のとおりです。

顧客獲得数
= (キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/月間平均購入数/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2))/(1-購入率)
購入率目標
= (ターゲット人口*購入率+(キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/購入率/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2)))/ターゲット人口
顧客獲得単価
= キャンペーン予算/((キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/購入率/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2))/(1-購入率))

購入段階の数値を基に,他の4段階の指標を推計します。⁠認知」⁠購入意向」⁠リピート」⁠推奨」それぞれ同じ方法での算出が可能です。例として,認知段階の量的指標,価値指標の計算式を割り出します。

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認知段階の量的指標・価値指標の計算式は次のとおりです。

クリック数,ビュー数
= ((ターゲット人口*認知率*(ターゲット人口*購入率+(キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/購入率/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2)))/(ターゲット人口*購入率))-ターゲット人口*認知率)/(1-認知率)
認知率目標
= 認知率*(ターゲット人口*購入率+(キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/購入率/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2)))/(ターゲット人口*購入率)
クリック,ビュー単価
= プロジェクト予算/(((ターゲット人口*認知率*(ターゲット人口*購入率+(キャンペーン予算*ROMI目標+キャンペーン予算)/購入率/平均購入価格/(IF(平均継続月数>キャンペーン期間,(キャンペーン期間*月間平均購入数+1)/2,(平均継続月数*月間平均購入数+1)/2)))/(ターゲット人口*購入率))-ターゲット人口*認知率)/(1-認知率))

最後に,上記計算式の「認知率」を置き換え,段階ごとの量的指標,価値指標の算出を完了します。

手元にあるデータに少しの調査データを加え,モデリングを行うことで,Webキャンペーンの指標を財務指標に変換することができます。これにより,マーケティング目標を達成する施策のプランニング,決裁者との合意形成,本当の意味でのパフォーマンスの改善など,様々なことが可能になります。

今回紹介した,これまでの計算式を含めたエクセルファイルを次に用意しました。今後のWebキャンペーンのKPI設定に活用してみてください。

著者プロフィール

荻野英希(おぎのひでき)

デジタルマーケティングエージェンシー,FICC inc. 代表取締役社長。
デジタルがブランドをどのように強化し,その役割はブランド毎にどう異なるのか? デジタルブランドマネジメントの仕組みを検証する。

URLhttp://www.ficc.jp/

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