価値を生むために知っておくべき,フルフラッシュサイト制作のあらすじ

第7回 モーション,インタラクション ― 演出効果と機能性の提供 ―

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関わり合い,補完し合う要素

連載第7回目となる今回は,「モーション」「インタラクション」をテーマにお話していきたいと思います。主にモーションは演出効果を高める役割を持った動きとして,一方インタラクションはユーザーインターフェース(UI)を支援しながらその機能を補うものとして,それぞれ説明していきます。

モーションもインタラクションも,ともにフルフラッシュサイトという手法の価値が最も発揮されやすい領域です。モーションには世界観を醸成する点で,インタラクションにはユーザーのWeb体験を機能的に支援するという点で,ともに大きな役割があります。今回はその役割を意識しながら,二つを構築する際に著者が大切だと考えているポイントを言及していきたいと思います。

モーション編:世界観共有の決め手はない?

時間軸を使って演出効果を高めるモーションの制作は,Webサイトの世界観を大きく左右する作業のひとつであり,フルフラッシュサイトの真価を特に発揮できる要素です。動かそうとする対象物のちょっとした速さや軌跡が世界観に直結していきやすい領域ですから,制作にあたってはWebサイトの目的や企画をただしく理解する必要があるでしょう。

その企画意図を間違いなく捉えたモーションを実現するためには,(一つのWebサイトを一人で制作する場合を除き)全制作関係者がサイトのコンセプトやイメージをブレずに共有し,細部のモーションの一つひとつにまで反映させていくことが大切だと思います。特にフルフラッシュサイトの制作では,HTMLベースのWebサイトに比べてデザイナーがモーションまでイメージしながらデザインしていく場面が多いと思います。その際,デザインを実際のモーション制作へ引き継ぐにあたって"ボタンの掛け違い"が発生しないよう,デザイナーとFlashオーサーは常に密なコミュニケーションを図る必要があるでしょう。

もちろん,「これを踏まえれば世界観の共有についてコミュニケーション・ロスは起こらない」という決定的手法は存在しないと,著者は考えています。実際の制作現場では,明確な指示書を作るのは難しく,むしろ身振り手振り,ときには擬音も交えるといったプリミティブな手段に訴えるほうが,かえってイメージを共有しやすいというのはクリエイターの皆様なら思い当たるフシがあるのではないでしょうか。

モーションに限った話ではありませんが,「気持ち良さ」にリファレンスは存在しません。抽象的であっても密なコミュニケーションで着実に目指すべき世界観へ迫っていけるようなきめ細やかさが,モーション制作ではとりわけ大切な要素になるのではないでしょうか。

また,特にモーション制作ではFlashというツールだけにこだわらないという制作スタンスも大切になると思います。程度の差こそあれ,各ソフトウェアには実現可能な領域とそうでない領域があります。仮にFlashで表現できないモーションを「Adobe After Effects」などの別ソフトで制作して,それをフルフラッシュサイトに組み込むという選択肢も視野に入れる必要があると思います。

フルフラッシュサイトとは単なる一手法のことであって,Webサイトの目的をより具現化できると考えるからこそ採用されるものです。ですから,「Flashで表現できないから実現できなかった」というツールありきの制作手法は本末転倒と言えるでしょう。Webサイトの目的に応じて,そのつど最適な制作ツールを選択し,取り入れるという幅の広さや柔軟性は,フラッシュオーサーにとって大変重要な資質だと思っています。

インタラクション編:ユーザーに提示すべきこと

一方,適切なインタラクションを実現するためには,基本的な機能性に対する欲求,いわばUIを補佐するという意識が大切になると考えています。Webサイトは具体的な目的を持って訪れたユーザーに対してはもちろん,漠然と訪れたユーザーに対してもわかりやすいWeb体験を提供する必要があります。機能上で誘導するインタラクションによってユーザーのサイト閲覧を支援することは,使い勝手の良し悪しを越えて,Webサイトそのものを成立させる定義でもあると,著者は考えています。

例えばエレベーターで行きたいフロアを押してもボタンが光らなければ,不便というよりもエレベーターとしての機能自体が欠落しているのかと思います。Webサイトにおけるインタラクションの必要性についても同様のことが言えるのです。

同時に,インタラクションはHTMLなどと比較してもFlashの優位性をより強く打ち出せる領域ではないでしょうか。マウスオーバーに反応させてボタンを光らせる,クリックして音を鳴らすetc…。Webサイトの目的に合った多種多様なインタラクションを用意できるという意味で,Flashが持つ表現領域の幅広さは「見た目の格好よさで終わらない」フルフラッシュサイトの大きな可能性だと思います。

演出効果と機能性が渾然一体に

もちろん,モーションを利用して機能性まで高めるアプローチは珍しくありませんし,機能性をまったく伴わない演出効果だけを狙ったインタラクションのアイディアも数多く存在します。モーションもインタラクションも,ともにWebサイトの目的に応じて演出効果や機能性を高める役割につなげることで,より強く世界観に訴求する効果を発揮することができると言えます。たとえば,ただ映像再生ボタンが見えやすい,押しやすいだけでなく,「マウスオーバー効果がかわいい」「ナビゲーションの動きが格好いい」といった演出あるインタラクションなどはその一例と言えるでしょう。演出効果と機能性のあいだに明確な境目はありません。優れたフルフラッシュサイトは両者が渾然一体となって世界観に訴求し,よりよいWEB体験を可能にしているものだと思います。

新しい可能性の数々

このほか,インタラクションという考え方を拡大してみると,最近になって屋外広告やリアルなイベントと連動した各種Webサイトが登場してきたことが,とても興味深い流れだと思います。また「AIR(Adobe Integrated Runtime)」や「Microsoft Silverlight」といったデスクトップアプリの制作環境が充実しはじめている点も見逃せません。

Flashを使いこなすWebサイト制作関係者は,そのような他のメディアとのコラボレーションや新たな制作ツールの登場に対して非常に敏感で積極的だと,著者は感じています。とりわけフラッシュ・クリエイターの皆様が持つインタラクションを作り上げるトーン&マナーは,これまで見たこともないようなユーザー・エクスペリエンスを創出する可能性を存分に秘めているのではないでしょうか。

ここにきて最新版のアクションスクリプト「Action Script 3(AS3)」が登場し,従来のスクリプトに比べて格段に処理速度が向上したことでFlashの表現領域はさらなる拡大を見せてきました。従来までは処理に負荷がかかり過ぎていた3D表現や何百~何千におよぶパーティクルの挙動制御といったアイディアも,AS3では現実的にWebサイトに実装できるレベルへと機能向上を果たしています。

他メディアとのコラボを実現可能にする環境の充実,AS3のような技術の向上といった背景によって,Webサイトの表現領域は急速に広がってきています。そのような状況にあるからこそ,フラッシュサイト制作関係者皆様はアイデアレベルから技術レベルまで,これまで存在しなかった,あるいは実現できなかった新しいWebコンテンツを制作する姿勢も重要になると思います。

著者プロフィール

齋藤順一(さいとうじゅんいち)

ARCHETYP代表。キノトロープ,ベースメントファクトリープロダクションを経て2007年5月株式会社アーキタイプを設立。

URLhttp://www.archetyp.jp/

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