gihyo.jpキーパーソンインタビュー~気になる“あの”人に逢ってきた!

#01Twitter共同創業者Biz Stone氏に訊く―Twitterの過去・現在・未来

What are you doing?(今何してる?)――最近、ネット上でよく見かける問いかけの1つです。これは、2006年にスタートしたマイクロブログと呼ばれるWebサービスTwitterのコメント入力欄に表示されている文章です。サービス開始後に、まず一部のネットユーザ間で盛り上がりを見せ、昨年アメリカ大統領選において、オバマ候補(現アメリカ合衆国大統領)が活用するといったことから、爆発的にユーザ数が増えました。

今回、gihyo.jpでは、Twitter共同創業者であるBiz Stone氏への単独インタビューを実現することができました。これまでのTwitterの振り返りとともに、今、Twitterでは何を目指しているのか、今後どういったところへ向かっていくのか、Biz氏本人からのコメントをいただきました。

インタビューは、サンフランシスコSoMa(サウス・オブ・マーケット)地区にある閑静なオフィスの中、Twitterのサービスと同じく、カジュアルに、そして楽しい雰囲気でインタビューが進みました。

(2009年6月4日実施)
Biz Stone氏
Biz Stone氏

参加者:

Biz Stone(Biz)
Co-founder, Twitter Inc.
http://twitter.com/biz

カジュアルな雰囲気の中、インタビュー開始

Biz:(取材者側のノートPCに張られている数々のステッカーを見て)Twitterのステッカーも貼ってもらいたいな。ある?

YM:現在日本から取り寄せているところです。

Biz:もうここのオフィスにはない?

YM:はい。ないですね。

Biz:やっぱり良い物は日本から取り寄せないとね(笑⁠⁠。

BH:ではインタビューを始めましょうか。

Biz:OK

Twitterが大ブレイクした2009年

TF:個人的にTwitterを使っているのですが、今年の初めから春ごろにかけて急にユーザが増え、Twitter上での動きが活発になっているように見受けられます。これには何か理由はあるのでしょうか?また、体感的に多くの人が頻繁に使い始めたようですが、事実でしょうか?

Biz:はい、その通りです。Twitterはここ最近でかなり急速に成長しています。ただ、それは、1つだけの要因ではありません。むしろ、複数のさまざまな要因が絡み合って、この爆発的な成長につながっていると言えるでしょう。

そういった要素の1つとして、たとえばニュースで取り上げられたという出来事がありました。具体的には、2009年1月にニューヨークで飛行機がハドソン川に不時着した際に、救助ボートの乗組員の1人が偶然Twitterユーザで、写真を撮り、Twitter経由でアップしBreaking News をしたことがありました。それを見た人々の間でTwitterが話題になったのです。

その他の例として、最近では、多くの有名人や政治家がTwitterを使っていて、それをさらにマスコミが取り上げ、Twitterの認知度が高まっているといった現象が見られます。

また、そういったマスコミ、ジャーナリストの人々もTwitterを使い始め、新たなコミニュケーションメディアとしてのTwitterの可能性を書き始めているようです。このように、Twitterの成長には複数の要因が関わっていると思います。

したがって、⁠多くの人が使い始めたという事実に関して)答えはイエス。Twitterはここ最近で急成長をしています。

また、最近のサーチ機能の追加も、この成長に一役買っているように思います。Twitterを初めて使うユーザは、自分のアカウントを作る前に、まず、自分の興味のあること、会社情報や商品のリサーチ目的でTwitterを使います。それとともに、個人アカウントを取得しようと、興味が湧いているのです。

TF:近日の成長に対しての具体的な数字はありますか?

Biz:かなり急な成長だから……。簡単には思い出せないですね。まあ、1つの例としては、これは必ずしも成長に関してのデータではないんだけど、あまり知られてない事実として、50%のTwitterユーザが10人をフォローし、10人からフォローされているというデータがあります(そのぐらいつながり、すなわちユーザ数が増えているということ⁠⁠。

その他の例としては、これは少し古いのですが、2008年1月から2009年1月の1年間での成長率はおおよそ900%でした。最近はそれよりも急激に成長しているはずです。

YM:その他の詳しい統計に関しては、正確かどうかは不明ですが、日本のニールセン社からも発表されているはずです。

欧米とアジアのTwitterユーザの比較

TF:欧米とアジア地域でのユーザにおける、Twitterの利用方法に違いはありますか?ユーザのタイプや利用目的に違いはあるのでしょうか?

Biz:おもしろいポイントですね。多くの違いがあり、同時に多くの共通点があります。むしろ違いより、共通点のほうが多いでしょう。世界中のユーザがこの新しいコミニュケーションのかたちを試し始めています。1つ確実に言えることは、私たちが当初考えていた「今何をしていますか(What are you doing?⁠⁠」的な利用方法に対して彼らは皆、Twitterを使ったコミニュケーションをし、リンクの交換も行っています。想定していなかったユーザ独自の利用方法も見つけ出しているようです。

日本のユーザに関して言うと、かなり早い段階でMovaTwitterのようなツールを開発し、利用し始めています。 TwitterのAPIのドキュメントがすべて英語であるにもかかわらず、そのような日本人の適用能力の高さには驚いています。

また、それにはスマートフォンが多く普及しているという、日本の携帯電話事情があるかもしれませんね。

したがって、Twitterのアーリーアダプターの中には多くの日本のユーザがいるようで、他の国のユーザはそれに追随する形でAPIなどのツールを利用しています。そのAPIの普及も先ほどの質問にあった、急成長に関連していると言えるだろう。2倍から3倍のトラフィックが、Twitter.com以外の他のサイトやアプリからの生み出されています。質問の趣旨に戻ると、全般的にみると、相違点よりも共通点のほうが多いと言えます。

技術視点から見たTwitter

RoRを選んだ理由

TF:それでは、すこしテクニカルな質問をさせてください。まずはTwitterが利用しているプラットフォームに関しての質問です。Twitterは以前よりRuby on Railsを利用していると理解していますが、それは今でも同じでしょうか?

Biz:はい。今でもRuby on Rails(RoR)を使っています。RoRの良さは、短い時間で開発やテストが行える点。元々RoRを使い始めた理由は、開発スピードを上げられることでした。しかしながら、私たちのシステムはRoRのパワーをまだ最大限利用しているとは思っていません。今でもこのプラットフォームを活用し、どこまでのことができるかを探っている最中です。

それと同時にオープンソースを使った開発を行い、その結果をコミュニティに対して提供し、貢献することにも情熱を注いでいます。Twitter社内でもまだまだプラットフォームの可能性に対してチャレンジをしています。

現在でもRoRを使っていますが、他にも良いシステムがあれば適応する可能性もあります。人材に関して言うと、RoRの開発チームが社内にあり、現在でもRoRのエンジニアは募集している状況です。

RoR以外の選択肢は?

TF:たとえばPHPなどの他のプラットフォームと比べ、RoRを使うことに対してのデメリットはありますか?

Biz:僕は必ずしも技術者ではないので……。ただ、どんなプラットフォームや言語を使ったとしても、そこには長所と短所が存在するはずです。その時々に適したシステムを使うのが重要ではないかなと思います。

私達のモットーも、常に 新しいアイデアやテクノロジに対してオープンでフレキシブルであること。同時に使えるシステムは使い続けようとも考えています。

TF:現在Twitter社内のスタッフは何人でしょうか?そのうち開発チームの人数は?

Biz:スタッフの人数は最近50人に達したところ。そのうち最低でも半数はエンジニアやシステム運営などの開発チームのメンバーです。サイトに対するトラフィックの量やTwitterに注がれる世界的な注目度を考えると非常に小さなチームと言えますね。

最近2,3人増やしたと言っても、運営陣は5人程度。したがって、開発チームにとってはかなりチャレンジングな環境になっています。現在でもサイトの開発/運営に対しては常に人を探しています。

Twitterエラーページを見かけたら?

TF:ここ1週間ほど、最近よくTwitterクジラ(システムがダウンしてる状態)を見かけました。ご存知でしたでしょうか? またそれに対しての対策は?

Biz:そのクジラ、どこで見ました?日本サイト、それともメインのサイト?

TF:おそらく日本サイトです。

YM:ステータスブログがありますので、まずはそちらをご確認ください。

それでもエラーページが出ましたら、お問い合わせで時間をご連絡ください。

Biz:日本サイトに対しては、まだまだやることはいっぱいあるんです。Twitter自体は非常にうまく行ってるし、開発チームも常に細かな点に気を配って、管理/運営を行っています。今でも小さなチームで「職人的」な感覚を忘れないようにしています。

Twitterの人気も上がり、いくつか問題点も出てきていますが、さまざまなAPIの開発も完了した今、そろそろ日本サイトに対しても注力し始めているところです。メインのサイトで追加した機能を日本サイトに追加をし始めています。

日本サイトに対して、早くスムーズに動くこと以外に、独立したサイトとして新たな命を吹き込むように、さまざまなポイントに対して細かなサービスやケアを注ぐように努力しています。

日本独自機能の実装は?

TF:日本サイトに対して独自の機能を追加する予定はありますか?

Biz:日本のサイトに追加する機能やAPIは最終的にはメインのサイトにも反映される予定です。とくにAPIに関しては、日本のデベロッパコミュニティによって開発されたドキュメントを英語に翻訳することによって、Twitterに対して膨大な数の、そしてとてもユニークな方法でTwitterを利用できるよAPIが公開されることになるでしょう。

また、メインのTwitterサイトに追加される機能も、追って日本サイトにも活かされることになります。

YM:まずはサーチ機能の改良を行っています。現在のサーチ機能は思うようにうまく機能していないので、そこを数ヵ月以内に改良する予定です。

ソーシャルアプリケーションとの対比

TF:APIにも関連するのですが、FaceBookをはじめとした他のソーシャルネットワーキングサイトとの関係はどのように考えていますでしょうか?他のサイトのステータス表示など、Twitter機能とかぶる点が多々あるようですが、脅威と考えていますか?

Biz:他のSNSサイトの存在はTwitterに対し、大きな可能性だと考えています。

まず言えることは、Twitterのモットーはシンプルであること、そしてシンプルであり続けることです。Twitterが非常にうまく行っている要素の1つとして、APIによる他のサイトとのコラボレイティブなイノベーションがあります。Twitter自体はシンプルではありますが、APIを使い、他のSNSとパートナーシップを結ぶことにより、大きな可能性が広がっているのです。

日本で展開する際もデジタルガレージ社を通し、他のサイトとのコラボレーションを考えている。従って、他のソーシャルネットワーキングサイトの存在は、とてもポジティブにとらえている。

日本のユーザに向けて

さまざまな内容の質問に、快く、そしてTweetするように気さくに答えてくれたBiz Stone氏
さまざまな内容の質問に、快く、そしてTweetするように気さくに答えてくれたBiz Stone氏

TF:日本のTwitterユーザに対して何かメッセージはありますでしょうか?

Biz:個人的なメッセージでも良いですか?まずYukariをフォローしてください(笑)

それから、僕のメッセージは日本のユーザに限らないのですが、ここ10年ほどで見られるオープンなコミニュケーションに対するトレンドに可能性を感じています。多くのユーザが電子メールやIMといった 既存の限られたコミュニケーションツールから、ブログ、フォトシェアリング、ビデオシェアリング、そしてソーシャルネットワークといったオープンなツールを使い始めています。

そして、今、Twitterがある。

このようなオープンなコミニュケーション手段、そしてオープンソースに対しては大きな可能性があると信じています。したがって、どんどんTwitterを使い続け、どんどん感想を僕たちに届けてください。日本サイトに対してどのような機能を期待してるか、どうしたらより良いサービスになるか、なども、ぜひ知らせてほしいです。

Twitterの未来

TF:Twitterは今後どのような存在になっていくのでしょうか?

Biz:Twitterの将来?もっと多くの人が、⁠今⁠何をしているか、何が起こっているかを伝えるツールとなるでしょうね。元々の友達や家族とつながる、といった使い方にとどまることなく、もっと大きなスケールで利用してもらえるのではないでしょうか。友達や家族だけではなく企業やマスコミなど、他のタイプのユーザにとっても魅力的なサービスであるはずです。

同時に、Twitter社としては、あえて使い方を設定しないように心がけています。⁠Twitterが何か?⁠っていう部分に関しては、極力謎のままにしておきたいんです。僕たちがたの人々よりも賢いなんて思ってないから。今後Twitterがどのような存在になるかを見届けたいですね。

モバイルユーザにとってのTwitter

TF:日本ではMovaTwitterをはじめとして、モバイルからTwitterを利用しているケースが多いのですが、アメリカではどうでしょうか?

Biz:そうだね。アメリカでも同じです。Twitterのトラフィックはさまざまなデバイスから来ています。iPhoneやBlackBerry経由のユーザや、SMSもアメリカやイギリスのユーザを中心に盛んです。全般的に言って、モバイル経由のユーザは多いです。モバイルデバイスは、PCに向かっていなくても情報が配信できるという点でTwitterにおけるインスピレーションの1つなんです。

(取材者が持っていた携帯電話に表示させたMovaTwitterの画面を見て)おー、MovaTwitterじゃないか!シンプルで格好良いですね。

PCとモバイルの違い

TF:モバイルからとPCからで、Twitterの使い方に違いはありますでしょうか?

Biz:これは感覚的な感想で、これといった根拠があるわけではないんですが、PCだとコピペができる分、リンクを貼付けやすいと思います。でもモバイルやSMSだと、なかなかそのようにはいきません。

一方で、⁠モバイルは)そのときに自分の周辺で起こっている事柄をポストすることが多くあります。個人的にもモバイルから更新されたポストには興味があります。なぜなら、その人がその時に自分の周りで起こっているタイムリーな事柄を書いているからです。

なので、1ユーザとしても、モバイルから配信される情報にはとても興味があります。暗い部屋で1人きりでPCに向かって書いている内容とは明らかに違いますからね。もちろん、PCユーザからも良い情報は配信されますけど。

デザインから見たTwitter

TF:Twitterのサイトやアイコンデザインに関しては、どのように決められているのでしょうか?何かプロセス的な基準はありますでしょうか?

Biz:当初は僕がすべてデザインをしていました。会社が大きくなるにつれて、実際の(組織的な)企業になっていることに気づき始めたんです。そうなると、僕は経営とか他の事柄に携わらなければならなくなったから、クリエイティブディレクター+数人のデザインチームを雇いました。そもそも、最近までは技術的な問題を解消することで、手一杯だっんです。

現在はチームも充実し、システムもずいぶんと落ち着いてきたから、そろそろデザインやユーザビリティに注力しようと考えています。大まかなガイドラインはあります、決して大それたものではありません。楽しくてシンプル、そして使いやすいサービスであるのがモットーなので、デザインをする際も常に制限を意識し、それに刺激を受けています。

たとえば、140文字の制限がありますよね。それも⁠制限された中でどこまでのことができるか⁠ってと考えています。制限があったほうが、クリエイティブ性は高まると思います。俳句みたいなものですね。語数に制限があると、人はクリエイティブになりませんか?それが僕らのプロセスみたいな感じですね。

この取材の後、Biz氏はニューヨーク、シカゴでのMTGと、とてもタイトなスケジュールが入っていました。その合間をぬって日本のメディアに対して、快く取材に応じてくださったことに感謝申し上げます。

インタビュー後、参加者3名にて
インタビュー後、参加者3名にて

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