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第10回CMS活用2010(前編)

企業サイトにおけるCMSの導入は、ここ10年で急激な伸びを見せています。その一方、Webを取りまく技術、携帯デバイスの登場やインフラの変化など、CMSを活用するうえで新たな取り組みが求められています。そこで今号から2回にわたり、CMS選びについて考察していきます。

CMSの最新動向 小規模から大規模まで多種多様なCMS

SNSやソーシャルメディアなどのWeb2.0の登場により、CMSはWebの更新性を高めるだけでなく、変化の少ないデザインと更新頻度の高いコンテンツを分離することで担当者の負荷軽減やコストを削減する仕組みとして積極的に活用されています。しかし、CMSとひと口にいっても、その内容はオープンソースから商用まで、またコストも無償から数百万円までと多種多様です。CMSをより有効に活用するために、CMSについておさらいしてみましょう。

比較的小規模なサイトで利用が増加しているのがブログツールです。これらは使いやすいインタフェースや容易なカスタマイズ、豊富なプラグインなどによって、ページの自動生成や公開日指定などの操作を効率よく行うことが可能です。日本語の解説書などの参考文献も多く、オープンソースとして開発が進められるなど、最もホットなCMSと言えます。

一方、大規模向けのCMSは、公開承認や指定時間公開などのワークフロー管理、サイト切れ防止、検索、階層構造管理、多国語管理などの運用管理機能などを備え、高品質でセキュアに組織や企業間でリレーションが取れる仕組みが構築できます。大企業では更新性が求められるため、ニュースや新着情報、IR情報の公開など即時性の高い企業情報発信の管理に効果的なうえ、アンケートやユーザ登録などユーザとのコミュニケーションにも大いに役立っています。

また、周知の通り、CMSにはオープンソースと商用があります。オープンソースは、GPLを適用して提供されるため導入コストが格安です。開発企業から提供されているもの以外にも、現在多くのCMSが存在していますが、総じてカスタマイズに専門性を要するものが少なくないようです。

一方、商用は導入時にコストが発生しますが、カスタマイズや運用、サポートなどが受けやすいと言えます。また、商用にもユーザ数やCPUライセンスから、ASP/SaaSといった月額使用まであり、運用コストを抑えて活用できるものも用意されています。最近では、同一製品でもASP/SaaS対応版や機能を付加した商用のエンタープライズ版などを用意するなど、ニーズや予算に応じた提供も始まっています。

様々なCMSがある中で、自社に合ったCMSを選ぶのは容易なことではありません。また、せっかく導入したCMSが機能しないという事態も避けたいところです。そこでCMSを選ぶ際のポイントを整理してみましょう。

まず、管理したい情報量、利用者、管理者、読者数、さらに記事の管理に欠かせないインタフェースと編集機能、運用管理機能、負荷分散機能、デザインの更新性、カスタマイズなどがポイントに挙げられます。また、オープンソースを利用する場合、コストだけでなく、アップデートやカスタマイズ、サポートなどが重要です。とくに拡張に関しては自由度が高い分、目的と作業範囲、機能の選択を見誤ると運用コストがかかるケースも見られるので注意が必要です。

このほかにも、ログインや更新などの処理には最低でもSSLが欠かせません。いざという時のバックアップやデータのエクスポートなどの対応も含めセキュリティは必須でしょう。システム環境では、文字コードや開発言語、データベース、サーバの設置形態など、規模や用途に応じてツールの特性をリスト化し、導入を検討していくことが大切です。

レンタルサーバで使えるCMS

大企業ならば自社で専任の管理体制を構築できるケースもありますが、多くの場合は独自ドメインで利用する必要もあり、ホスティング企業が提供する専用サーバや共用サーバを利用してサイトが構築されます。

そこで、レンタルサーバで使えるCMSの条件をみていくことにしましょう。

一般的にレンタルサーバでCMSを利用するためには、必須要件がそれぞれ異なるためインストール環境や導入のしやすさ、マニュアルの整備などは確認しておきたいところです。その際、CMSの中にはUTF-8の文字コードに対応しているものも多いので、EUC-JPを使用しているサーバかを事前にチェックしておきましょう。オープンソースでは、インストールに戸惑うケースが少なくないので対応OSやCGIなども含め注意が必要です。

なお、CMSの多くはPHPで作成されていますが、一部にはPerlなどの開発言語で作成されているものもあります。さらに、MySQLやOracleなどのデータベースを使用してコンテンツ管理をするCMSが多いだけに、データベース標準や複数データベース対応など、作成できるデータベースの数も重要なポイントになります。

大規模向けのCMSは、専用サーバを利用して文書やワークフロー管理などを行うことができますが、その反面、システムは柔軟かつ高度な運用管理が求められ、冗長性や負荷分散なども必要条件となります。

中規模から小規模向けのCMSは、専用あるいは共用サーバを利用して会員向けサイトやショッピングサイト、ポータルサイト、ブログなどの管理に利用できます。これらのサイトも更新性を必要とするものが多いので、サーバの安定性は必須となるでしょう。

また、CMSの導入では、既存のコンテンツサイトの管理の簡素化を目的に挙げるケースも少なくありません。既存のサイトへCMSを導入する場合、コンテンツの移行作業がともないます。そこで、ページの移行に際し、実績を持つホスティング会社、サービスプランを選ぶと便利です。

コンテンツの追加や削除、リニューアルにともなうデザイン、構造管理などは経験がないと整理するまでに時間がかかりコストもかさみがちです。経験豊富なホスティング会社から適切なアドバイスをもらえるか否かで、長期的な運用、環境の変化への対応に大きく影響すると言っても過言ではありません。

もう1つ、レンタルサーバでCMSを利用する場合、外せないのがモバイルサイトやSNSアプリの対応です。mixiをはじめ、GREEやモバゲー、Fecebookなど、膨大なユーザ数を誇るモバイルサイトやSNSアプリの利用は、今後も右肩上がりで増加する見込みです。iPhoneに続き、2010年にはAndroidも本格化するといわれており、キャリアが対応を表明しています。

このため、CMSの更新やサイト公開・閉鎖、パフォーマンス、キャリア別機能、課金認証、など様々な対応が求められていますが、モバイル・携帯サイト専用のレンタルサーバで稼働できれば、大きなビジネスチャンスにつながることは間違いありません。

モバイルサイトやSNSアプリは、急速に立ち上がり終息することから、ピークが読みにくく、CMSへの要求も自然と高くなります。レンタルサーバには様々なプランが用意されているので、サービス体制も含め、目的や用途、運用コストなどをよく吟味して選ぶようにしましょう。

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