多様化する消費者心理に響く、イマドキのプロモーション

第6回オフラインメディアの活用

前回は、オウンドメディアとオンライン広告の活用方法について説明しました。

今回は、オフライン広告をどのように活用すれば、事業の収益に結び付くのか提示していきます。

オフライン広告はいまだ必要なのか

インフラの拡充、デバイスの進化によりインターネット使用者が年々増加しています。前回述べたように、新聞や雑誌の購読率が低下し消費者の動向が以前よりもオンラインにシフトしている状況下ではオンライン広告のみを活用していれば良いのでしょうか?

答えはNOです。

オンライン広告は出稿費用が安価なため、企業規模を問わず露出を行っており情報が氾濫しています。現代の消費者はTVCMで認知し、興味を持ってオンラインで調べる。というように「オンラインとオフラインの行き来」が盛んです。

ですので、プロモーションや制作を考案する際は、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの「オフライン上で行ったこと」「オンライン上で行ったこと」「どの広告の組み合わせ」「どのような相乗効果があって、実利に結びついているのか」を意識する必要があるのです。

オフライン広告の種類と特徴

オフライン広告とオウンドメディアをどのように組みわせるのかは、オフライン広告を理解していないとできません。まず、オフライン広告の種類と特徴について紹介します。

テレビ

テレビは出稿費用が高額な媒体ですが1度に多くの視聴者への情報発信に長けており、⁠映像」を利用した分かりやすい説明は「商品や企業に対するイメージ付け」や、電話注文などの「視聴者にアクションを素早く起こさせたい場合」に最適です。

テレビ広告の種類は3つあり、30秒や60秒の秒数で提供番組中に広告が放送され提供社名が表示される「タイム広告(番組提供広告⁠⁠、15秒または30秒の秒数で、前の番組と次の番組の間に放送される「スポット広告」です。

また、映画やテレビドラマの劇中において、役者に特定の商品を使わせて消費者の潜在意識に刷り込む「プロダクトプレースメント⁠⁠、対価を支払うことで、番組内のコンテンツを活用し、商品や企業の情報発信を行う「ペイドパブリシティー」があります。

TV広告全般にいえる特徴は、映像と音声によって視角・聴覚の両方に訴え、商品やサービスを正確に伝えることができる「説得・訴求性」でしょう。

実際、テレビほど単純なメディアはなく、その単純さは人間の生理機能である「五感と本能」に直結しているため、他のメディアに比べ商品についての記憶がより強く残り、⁠持続性」も高い傾向にあります。

また、テレビ番組は、子供からお年寄りまで老若男女に関わらず、幅広い年齢層が気軽に楽しむことができ、生活に溶け込みやすいメディアであるため、視聴者はCMに対して「親近性」があり、番組内容にもよりますが、幅広い層に訴求できるメディア特性を持つため、到達効率が良く「即効性」もあるといえます。広く認知させたい新製品やブランドのPRにテレビ広告は効果的な手法であると言えます。

ラジオ

ラジオは、番組全部または一部に広告主として提供でき、人気番組の場合はその人気が「企業イメージ」にも作用し、番組提供元としての信頼性も加わるため、ブランディング効果を見込めます。

ラジオ広告の種類は3つあります。レギュラー番組に提供することで「同一時間」「決まったターゲット」に届きやすく、契約期間中の「反復訴求効果」も期待できる「タイム広告⁠⁠、番組間、または番組内に流れる広告で、放送する期間、時間、回数を個別に設定する事が可能な「スポット広告⁠⁠、生放送中に番組内でパーソナリティやラジオ局のアナウンサーが、PR原稿を読む「生コマーシャル」です。

ラジオ広告の特徴は、時間帯によってターゲットとするリスナー属性が異なることから、ターゲットに合わせた番組を選べる「特定性⁠⁠、聴覚のみに働きかけて強い印象を残す「想像性⁠⁠。また運転や家事をしながらでも内容を理解できるため、ラジオを愛用するリスナーも多く、リスナーの状況を想定した広告が打てる「適時性」があるといえます。

移動中にラジオを聞くことができるため、リーセンシー効果[1]が生まれやすいのも特徴です。

新聞

インターネットの利用者増加により「購読者の減少」が取り沙汰されがちな新聞ですが、その信頼性は今もなお高いと言え、コーポレートメッセージなどの公的な情報を発信する際に適しています。

新聞広告の種類は3つあり、新聞紙面において、記事の下部に掲載される「記事下広告」記事面の中に全1段未満の大きさでコンパクトに掲載される「雑報広告⁠⁠、最低1段2行から利用できる文字中心の「案内広告」です。

新聞広告の特徴には、全体をひと目で見渡すことができる「一覧性⁠⁠、一回の広告で何度でも情報を見られる「反復性⁠⁠、軽く、折りたため、持ち運びしやすい「携帯性⁠⁠、⁠全国紙・地方紙」と分けることができる「地域性⁠⁠、文字と一緒にイラスト・写真などを見せられる「説得性⁠⁠、媒体自体が持つ公共性や社会性を基にした「信頼性」が挙げられます。

雑誌

近年、紙媒体の中でも娯楽要素の高い雑誌は苦境に立たされており、有名誌でさえも休刊を余儀なくされています。

その背景には、インターネットの大衆化、さらに「電子書籍」の登場により、出版業界に新しい情報伝達手段が次々に導入され、これまでの業界構造が根本的に変わりつつあるということがあります。

とはいえ、雑誌の強みは、⁠専門的なコンテンツ」と、それをわかりやすく伝える「編集技術」にあります。多くの情報の中から「タイムリーな話題」「重要な情報」を、わかりやすくまとめたレイアウトは読者にとって読みやすく、いまだWebの勝てるところではありません。

雑誌編集者は、読者の趣味嗜好を最も理解しており、商品やサービスをどういったメッセージで発信したらよいかを熟知しているため、優れた技術によって編集された雑誌広告を出すことで、ターゲットに効率的に訴求することが可能です。

雑誌広告には下記のようなものがあります。

「掲載枠」は大まかに分類すると「見開き⁠⁠、⁠中面1ページ⁠⁠、⁠中面2分の1ページ⁠⁠、⁠縦3分の1ページ」の4種類があり、⁠掲載面」の種類は「記事中」⁠前付き」⁠目次対向」⁠表2(表紙中面⁠⁠表3(裏表紙中面⁠⁠表4(裏表紙外面⁠⁠」の6種類があります。

「雑誌内の広告の掲載方法」は、自由にデザインでき読者の行動を喚起する「純広告⁠⁠、出版社側が雑誌の特性に合わせた形で作成する「編集タイアップ広告⁠⁠、出版社の編集部以外の制作会社・広告代理店が編集ページのように制作する「記事型広告⁠⁠、広告代理店が、出版社規定の広告スペース以外の枠を企画する「連合広告/記事型連合広告」があります。

その他、雑誌に商品サンプルを同梱する「サンプリング⁠⁠、雑誌の中に小冊子を綴じ込む「ブックインブック⁠⁠、アンケート回答や資料請求を容易にするための(とくにターゲット層が高齢な場合に効果的です)⁠ハガキ⁠⁠、1冊すべてを1つの企業の紹介に特化させた「カスタマーブック」などが「紙面掲載以外の広告」としてあります。

雑誌の特徴として、対象となる読者の年齢・性別・社会階層・職業・ライフスタイルなどが明確に細分化されているため、届けたいターゲットにダイレクトに訴求できる「専門性⁠⁠、伝達できる情報量が多く、写真やイラストで情報を視覚的に伝達できる「詳報性⁠⁠、テレビCMやラジオCMなどと違い「見返す」ことができるため、広告を目にする回数が多くなることから「保存・反復性」があるといえます。

さらに、次号の発売まで何度も読まれることが多く、そのたびに商品知識が読者の意識に刷り込まれます(この行為を表す指標を「リーディング・フリークエンシー(閲覧回数⁠⁠」と言います⁠⁠。

また、雑誌の読者は「対価を支払って情報を得ている」という自発的な特性を持つため「優良顧客の獲得」にも役立ちます。

オフライン広告とオウンドメディアをどのように組みわせるのか

「オフライン広告」「オウンドメディア」をどのように連携させればよいのでしょうか?具体的な事例を交えて、ご紹介していきます。

テレビ

資生堂「UNO FOG BAR」

テレビの親近性・説得性・即効性を活用し、好感度の高いタレントの複数起用で細分化されたターゲットに訴求し売り上げ増加につながりました。

人気タレントを多用したCMは、同社のTSUBAKI(ツバキ)や花王エッセンシャルなど、⁠女性をターゲットとした広告」に多く見られる手法でしたが、⁠UNO FOG BAR」では初めて「男性用化粧品」にこの手法を採用しました。

起用されたのは、妻夫木聡、小栗旬、 瑛太、三浦春馬という現在最も人気の高い若手俳優4人で、CM内ではビートルズを彷彿とさせるルックスで親近感と説得性を持たせています。

オウンドメディア(商品のWebサイト)では、使い方と製品特性を説明しながらヘアスタイリストが実演するなど、さらに商品の魅力が伝わる工夫がされ、CMのビジュアルに惹かれて興味を持ったターゲットにとっては、Webサイトでの訴求でさらに印象が強まります。

Webサイトにはほかにも、CMの映像に自分の写真をはめ込み合成できるコンテンツが用意されており、⁠ソーシャルメディアでの拡散」を狙っています。

また、エコに配慮した詰替え用の発売直後に新聞広告での露出も行いました。全国紙を中心に15段カラーで掲載され、キャッチコピーである「さよならWAX」を目立たせた構成です。

広告の内容は、⁠ワックスとの違いの研究結果」「具体的な商品の使い方」など、ジャーナリズムやニュース性のあるメディアとしての新聞媒体に合わせたコンテンツに仕上がっています。

上記のようなメガブランドならではの「即効性のある大掛かりな訴求」で認知を広げるとともに、店頭ではCMとは違うバージョンの映像を流すなど店頭プロモーションも行いました。

結果、発売から5ヶ月目に当初の年間販売予定であった240万本の2倍を超える500万本の売り上げを達成しました。

人気タレントを起用した「親近性」や、映像のもたらす「説得性」で、新商品のブランディングをおこない、さらにテレビのもつ他のメディアにはない「即効性」から、短期間で認知を広めることに成功しています。

ターゲット10代~30代前半 男性
メディアTVCM…ターゲットを含めた幅広い層への認知拡大
オウンドメディアWeb…商品の使い方や出演タレントのヘアスタイル解説など、より詳細な情報を提供し、さらに拡散できるコンテンツを用意し、認知拡大を狙う
新聞広告商品特性や使い方を掲載し、活字メディアであることを活用した商品知識の提供
店頭タレントの写真を利用したPOPや、CMとは違うバージョンの映像を流すなど、売り場で目を引くプロモーションを展開

雑誌

ポーラ

雑誌の専門性・詳報性・記録性を活用し、Webサイトと雑誌広告の連動を図り販売数を伸ばしました。

ポーラは、美容雑誌とファッション雑誌を中心に広告を出稿しており、純広告とタイアップ広告の割合は4:6と、タイアップ広告を多く利用しています。販売店からも、雑誌広告が来店のきっかけという客が多いという声が上がっており、狙い通りの結果を出せているようです。

雑誌への広告に検索ワードやURLを載せてオウンドメディア(Webサイト)へ誘導させたり、新商品発売時には、オウンドメディアでクーポンをダウンロードすると、店頭でサンプルが貰えるキャンペーンも実施し、雑誌からWebを通して店頭に誘導しています。

米倉涼子と夏木マリを起用した純広告の影響力も高く、近年認知度が高まり、20代~30代のユーザが増えています。

また、女性誌で発表される「ベストコスメ賞」では受賞の実績を残しつづけており、とくに2011年には多くの美容雑誌で年間ベストコスメ大賞1位を受賞し、百貨店での日商を3倍まで伸ばしました。

ターゲット20代~30代 女性
メディア雑誌…ブランディング、認知拡大、販売店や自社Webサイトへの誘導
オウンドメディアWebサイト…協賛店で利用できるクーポンのプレゼントを実施し、来客増加を図る

ラジオ

協賛5社(飲食店)

ラジオ広告の特定性・想像性・適時性を活用し、麺の美味しさを⁠音⁠で伝え、協賛店への来店を促進しました。

エフエム高知では、運転中にラジオを聴く男性ドライバーをターゲットとしたグルメ番組『麺のささやき』を過去に放送していました。この番組の目的は、男性ドライバーの協賛店への来店を促す事で、お昼前の午前11時前に放送されています。

「麺好き」のアナウンサーが曜日ごとに協賛店舗を取材し、店主のインタビューを交えながら調理中の様子を実況し、出来上がると、豪快に麺をすする音やスープが喉を通る音を聞かせます。

リスナーは、麺をすする音やスープを飲み干す音を聴くことで、想像力と食欲をかきたてられ、さらに、オウンドメディア(番組Webサイト)で、協賛店で使えるクーポンをプレゼントするキャンペーンも実施し、協賛店である飲食店の来客増加につながりました。

ターゲット運転中にラジオを聴く男性ドライバー
メディアラジオ…昼休憩をとる前の時間帯に、食欲をかき立てる音を聴かせることで、
協賛店への来店を促す
オウンドメディアWebサイト…協賛店で利用できるクーポンのプレゼントを実施し、来客増加を図る

新聞

味の素ゼネラルフーヅ

雑誌の信頼性・説得性を活用し、企業姿勢などのメッセージ性の高い広告を行い、認知度拡大を図りました。

味の素ゼネラルフーヅは、⁠詰め替えタイプ」という製品を通じて、エコに対する自社の取り組みを消費者に伝える広告を出しました。この広告にはオウンドメディア(Webサイト)との連動のプレゼントキャンペーンの情報も合わせて掲載しました。

このキャンペーンは、クイズに答えると抽選でエコに関連した商品が当たるというもので、出題されたクイズは「AGFの詰め替えは〇〇に取り組んで10周年!」という内容でした。広告で訴求している「瓶が空いたら詰め替えよう!」という内容と、⁠AGFがエコに取り組んでいることを認知してもらう」というキャンペーンの主旨が合致しており、広告を通して企業姿勢を親近感をもって伝えることができます。

キャンペーンでは、ハガキとWeb応募が合わせて196万588通あり、環境への取り組みを称賛する声が多く寄せられました。

ターゲットインスタントコーヒーを利用する家庭の主婦
メディア新聞…エコに取り組んでいる事を消費者に認知させ、自社ブランディングを図る。キャンペーンへの応募の促進。
オウンドメディアWebサイト…エコに取り組んでいる事を消費者に認知させ、自社ブランディングを図る。

また、オフライン広告をいくつか利用しオウンドメディアに誘導するケースもあります。 大正製薬の育毛剤「リアップ」では複数メディアを活用した商品購入までの導線づくりを次のように行いました。

  1. CMで商品の存在やイメージを訴求
  2. 新聞や雑誌で効果効能について訴求
  3. オウンドメディア(Webサイト)でより詳細な情報を提供

今後は、オフライン広告のメリット、オンライン広告の特徴を把握し、双方を視野に入れ、クロスメディア的な戦略も必要となってきます。

オフラインとオウンドメディアをどのように組み合わせるのか

オンライン上では「オフライン上では把握しにくいデータ」を得ることができます。

「QRコード(オフラインからスマートフォンのカメラ機能を経由してオンラインへ⁠⁠」や、⁠検索キーワードやフリ-ダイヤル(マス媒体から自社チャネルヘ⁠⁠」などでオフラインからオンラインへの誘導を行い、そうして誘導してきたユーザーの詳細情報を、オウンドメディア(Webサイト、ブランディングサイト、メールマガジンなど)で把握します。オフライン広告では潜在顧客に「興味」⁠認知」させ、オウンドメディアでは「消費行動に導く後押し」をしてもらうのです。

そのためには、⁠オフライン広告の特徴」を把握し、⁠自社の顧客がいるところ⁠⁠、⁠誘導可能なところ」に露出をしていきます。

オウンドメディアでは、KGIを「商品購入数や予約数⁠⁠、KPIを「滞在時間、誘導数」などに設定し、取捨選択したオフライン広告と組み合わせることが実利に結びつき、そして、オンライン広告の考え方と同様(前回のリンクをはる)に、実施したプロモーション結果に対してPDCAサイクルをこまめに回していくことが成功への近道となるのです。

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