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第9回レポート「「ユーザーが,一番偉い!」~WEB広告界の3人の須田が語る,2009年度への挑戦~」

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仮説探索型

ちょっと思いついた仮説をネットに投げる,すると反応があるからやり取りしていくうちにより正しい仮説を探して行ける,だから仮説検証じゃなくて仮説探索という早稲田の先生の話から,キャンペーンもそうあっていいんじゃないかと思ったという(和さん)⁠

こうなりますと着地を示すのも大事だけど,途中で変わってもいいんじゃないか。ちょっとやってみて「やっぱりこっちでした」と軌道修正する,というのもありなんじゃないか。市場に投げてみて,反応を見て正解を探せばいい。

これはネットのサービスでもそうだ。⁠これだ!」と作りこんで出しても絶対予測どおりはいかない。ネットは変化が激しい。前提条件が予測時とリリース時では変わってしまうからだ。何が当たりかは出してみないとわからない。最初は当たりでもどんどん変わっていく可能性がある。

将啓さんたちが辿りついた方法もある意味,この「仮説探索型」だ。ある程度の予算を決めて,まず小さな規模でやってみる。うまくいかないかもしれないが,この予算を使い切るまではやろう。よければ,そのいいところを拡張していってみようという方法。従来のソフトウェア開発のように完璧に仕上げてリリースというのとは考え方が違う。サービスを出したときが終了ではなく,始まり。

サービスもサービスを提供する側も,ユーザーと一緒に成長していく。

これまでの広告の世界ではまずあり得ないが,ウェブでは当たり前な感覚のβ版公開。そういうカルチャーを生かしていったほうがいい。

ブランデッドユーティリティ

「2008年広告業界の最重要キーワードだった」⁠和さん)⁠

ユニクロックがこの「ブランデッドユーティリティ」を掲げて,世界中から高い評価を受けた。それでうちもブランデッドユーティリティやらないとまずくないか,みたいな空気になってるけど,そもそもブランデッドユーティリティって?

和さんなりの解釈は,⁠みんな忙しいから,役に立たないことにはふれようとしない。それがブランデッドユーティリティなんじゃないか」⁠役に立つことではじめて接触してもらえる接触したいと思わせるようなメディアになる。自分なりに中高生向けにブランデッドユーティリティを提供するとしたらと,そう考えて,出したのが,魔法のiらんどさんと組んだ,部活のホームページを作れるサービスだったという。

いわゆる「プロモーションとしてのサービス」広告は将啓さんがやっているようなサービス開発により近づいていってると思う,見たら終わりじゃない,そういう視点が必要なのではないか,と。

突っ込まれクリエイティブ

どう突っ込めるか。初音ミクのニコニコメッセのとき,ポイントはそこだったという。取説を歌詞にしたというのもそうだし,カットごとにいろんな突っ込みどころを仕込んだという。CGM時代にマス広告的なものがどう広まるかというと,この方法なのではないかと。ユーザーがいろいろ書ける,突っ込めるから広まるのだ。

その後の展開も,このネタを使って誰かがリミックスとかしてくれたりするといいなあと思っていた(歌も全部コモンズに上げていた)そうなので,相当な確信犯ですね。

ユーザーとの向き合い方

まず,和さんが広告会社としてどうユーザーと向き合っていけばいいのか,を。広告会社の立ち位置は,実はあまり変わっていないという。

以前は,企業のメッセージを代弁する,ユーザーに伝えるというのが広告の役割だったが,いまはソーシャルメディアが発達してユーザーが自身で情報やメッセージを発信するようになった。だけど,ユーザーと企業の間にいるというのは変わっていない。それは,サービスをロンチする意味でも同じなのではないか。

ここで,サービスの側から将啓さん。プレスブログをはじめるとき,絶対そんなの機能しないと,特に広告の人から言われたという。クライアントはお金を払うのに媒体(ブログ)にどう書かれるかわからないなんて,そんな広告にお金を出すかと。しかし,実際プレスブログをはじめて効果が出てくるとクライアント側の意識が変わってきたという。どう書かれるかわからないけど,書かれることで話題になれば,そのほうが効果的だと。ここ2,3年の間に,クライアントとユーザーが対等になってきた。

いっぽう,ユーザーが変わってきたのでクライアントもそれについていかざるを得ないというところではないかというのは伸さんだ。

経験値,これまでのテレビ広告,グラフィック広告だったりマス広告では財産であるものが,メディアのパラダイムが変わった今,逆に経験値がある人ほどそれが足かせになってしまうのではないかと。ネットに従来の作り方や,他のメディアでの経験則を持ち込んでもうまくいかない。

これまでは,メディアつまり,新聞であれば記事と紙,テレビとテレビのコンテンツなど,パッケージとナカミが一体となっていた。この場合,システム側にいることが強みであった。でもいまアウトプットがマルチウィンドウ化している。ネットで配信されたものが,街中のデジタルサイネージにいくかもしれないし。結局,システム側にいることの強みが薄くなってきている。そういうマスメディアのパラダイムが変わろうとしているのが今だと。

クライアント

クライアント

未来の広告

技術とメディアとクリエイティブ。広告の未来を作るには,新しい技術,新しいメディアを使ってクリエイティブな能力を発揮していくしかない(和さん)⁠

  • 技術×媒体×制作

この場合,メディア(媒体)は何でもあり。ウェブでもiPhoneでもいい。いわば,ユーザーとの接触ポイント。そういう新しいメディア,新しい技術を学びながら,でもクリエイティブもおろそかにしちゃいけない。結局はネタだろうと。最新の技術を使ったものであろうと,結局はネタ。そういう意味で,この3つのかけ算が未来の広告だと。

伸さんは,中川元大臣の一件から広告の未来を語ります。メディアがフラットになっている。あの会見の直後,日本のマスコミは報道していない。何かちぐはぐなやり取りがあった程度だった。海外のメディアで取り上げられ,YouTubeに上がったりして,はじめて日本のマスコミが騒ぎだした。

つまり,世界がもうつながってしまって,日本の中でオフレコにしようよなんてことはもうきかない。まさに,メディア,クリエイティブなど,こういう世界にいまいるんだということを認識する段階じゃないのかと。

将啓さんは2人の話を受け,そういう中で広告代理店がどう絡んでいけばいいのか,というのが気になると。新しい技術で新しいメディアが増えていくと,おそらくすべてを追いきれなくなる。企業とユーザーは,どんどん直接つながっていくだろう。ユーザー自身が媒体になり,企業とより密になっていく。そのときに広告代理店のビジネルモデルがどうなっていくのか?

そこはかなり実はやばいんだというのは和さん。⁠仮説探索しない広告代理店ダメ,テクノロジーについていこうとしない広告代理店ダメ,クライアントとユーザーが直に向き合おうとしているとき,間に入ろうとしないところもダメでしょう。いま警鐘をならさないとやばいんです。」

クリエイターの今後のあり方

最後に,タナカさん自身,非常に気になるという「今後,クリエイターはどういうことを目指したらいいのか?」その指針をお三方から。

和さん:
どんどん新しい仮説を探索してください。スタンスはβ版。過去の経験則に縛られない。とはいえ,定着は必要。とりあえず,何かのプロになる。それを足場に他のプロになっていってください。
伸さん:
クリエイティブにはクリエイターとプロデューサーという役割の両輪が大事。これまでは広告会社であったりテレビ局であったりがプロデューサー的役割を果たしてきたので,ビジネスプロデューサーが不在でもシステムとして回ってきた。でも,いまビジネスプロデューサーが必要なのではないか。クリエイターとうまくコミュニケーションができて,同時にビジネス的な動きをできる人が必要になる。と言う意味でも,やはり個と個の結びつきが重要になっていく。
将啓さん:
クリエイティブはすごく必要。いまのネットベンチャーは,自分だけじゃなくいろんな企業が求めているはず。活躍するフィールドは実は広い。ぜひ,幅広に考えて,自由に行きたいところに行って活躍してください。

クライアント

クライアント

話を聞いた印象は,いまの広告業界に危機感をもっていろいろ考えてるんだなと。

一般市民,普通のユーザーにとってこれまで広告業界って遠いものだったけど(これもおかしいですよね。自分たちに向けられているものなのに)⁠作り手,受けて,発信者と,どんどん境界がなくなっていくのかも,と思いました。

個人的には,メディア力,欲しいと痛感するこの頃です。

著者プロフィール

月刊インタラ塾(げっかんいんたらじゅく)

昨今、マス広告のあり方が大きく変化し,Web広告はより一層重要なポジションを担って来ております。そんな中,「宣伝・広報」「広告代理業」「広告制作業」に携わる方々へ向けてユーザーに響くWeb広告を生み出すための考え方や技術など,役に立つ情報をイベントを通じてお伝えできるのではないかと思い,開催致しました。また,このイベントをきっかけに,次代を担う人がでてきてくれればと願い,微力ながらもWeb業界全体に貢献ができればと考えております。

URLhttp://www.intarajyuku.net/