キーパーソンが見るWeb業界

第3回 プロモーションにおけるWeb(後編)

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森田:一方で,クライアントから見た場合は,全体的な傾向として,まずWebを作ってというのが基本スタンスとしてあると思います。領域が広がっていくということは,その「まずWebを作って」ということに対応し,やっていくうちに信頼を勝ち得たときにこそできるのではないでしょうか。つまり,成功事例を提供してあげられることによって,次の展開にも進むわけです。

つまり,プロモーションにしても,さまざまなチャレンジをしながら結果を出し,クライアントと二人三脚で進んでいくことで広がっていくと思います。そのときに,Webではないものも出てくる可能性があって,そのWeb以外のものに対しては別のところからの予算が付くというところまでできると理想的ですよね。ただし,現実はWebの予算として付いてしまっているので,提案やその結果もWebだけになりがちでしょうけども。

螺澤:クライアント側も,最近は意識が変わってきていて,こういうおもしろいことができる人がいるから,その人にお願いしようというような動きも見えてきていると思います。

阿部:とくにWebに関して言えば,ユーザ環境としてブラウザ以外での表現力が格段に進歩していますし,また,使えるデバイスもiPhoneやニンテンドーDSのように多様化しています。こうなると専門性の重要性がますます高くなり,僕たちの強みが活かせますね。

森田:ええ,それは絶対に強いと思います。

阿部:そこからリアルにつながるものがあったり,Webと親和性が高いものとの融合があると思います。あるいはTVにつながるかもしれません。となると,やはり僕たちがやってきたことが活かせる時代になってきつつあるように思います。

長谷川:まさにそうだと思います。だからこそ,今Web制作をしている人たちが,目先の業務に追われてしまっておぼれるのはもったいないですし,どのぐらい視点を広げて考えていけるかというのが重要になります。

森田:ちょっと乱暴にまとめてしまうと,とにかく今後の可能性について考えられることについては「すべてやっておくべき」だと思います。すべてやっておけば絶対に後々活きてきます。あくまでWebは手段なので,そこでできることをすべて実現できるという状態を作っておくというのは明白な強みです。

螺澤:今,阿部さんがおっしゃったWeb領域の人の強みとしてあたらしいデバイスがつなげるというのはまさにそのとおりだと思います。それに加えて,いわゆるマスの広告制作の人がやっているような「これだ」という明快な旗になるようなコミュニケーションが成立するものをつくっていけると本当の意味で強くなるはずです。具体的には,よりどころとなる考え方やコンセプト,ビジュアルといったものです。クライアントに対して,どういうポジションでどう関わっていくかということにもつながります。

長谷川:現在のWebに関わっている人たちの,クライアントとの接し方はクリエイティブディレクターとしての総合的なブランディングに関するものです。あとは,Webにとらわれない企業の総合的なコミュニケーションに関する方向性があって,その両方の方向性ができるはずです。

森田:Webにとらわれないというのは,Webディレクターではない⁠ディレクター⁠としての方向性ですよね。

ただし,これからデバイスが増えていったり,Webの領域が広がっていったときに,Webを専門的に扱える,Webにとらわれたスペシャリストが必要になる時代も近づいてきていると思います。

長谷川:プロジェクト全体のディレクターになるのか,Web専門のディレクターになるのかは個人のやりたい方向性次第だと思います。どっちも今後より必要になってきますから。

森田:それと,ディレクションだけではなくて,オペレーションに特化していく道というのもありうると思います。Web制作の中で定型化できる業務を増やしていくということです。最近は大量生産や品質管理などに特化したサービスを提供する企業が少しずつ増えてきています。

つまり,Web制作はより不定型なものが増えて対象となる専門領域が広がっていく一方で,テンプレートを利用したページ制作やコーディングなど,定型化できるものもどんどん増えてきているということです。クリエイティブの領域を円で表すと,それがどんどん広がっていきつつも,内側から削られていくという,ドーナツ形のようになっていく感じです。そういう点でも,その不定型なものを早く身につけていかなければ自分たちのコアな事業領域が狭くなっていくということになりかねません。

阿部:最終的には,自分たちがどこを目指したいのか,ということにもなりますね。

長谷川:以前の座談会でも話が出ましたが,対価というのは相手のニーズに応じて発生するのであって,何かをやれば勝手に発生するわけではありません。好きなことをすること自体は良いと思いますが,仕事として考える場合,どういった価値があるのかをまず意識する必要があります。あたりまえの話ですが。

森田:領域が広がっているということは,好きなこと,やりたいことを実現できるようになっていくということでもあります。モチベーションやクオリティにも好影響があると考えられ,多くの成果につながっていくことでしょう。ただ,それは単にやればいいということではなくて,自分たちが誰のどのような問題解決をしているのかという視点と使命を持って取り組んでいくことが大事だと思います。

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⁠株⁠ビジネス・アーキテクツ

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顧客企業の事業を支援するコミュニケーション戦略を提案・実施する国内最大規模のWebデザイン企業。顧客企業の経営課題を的確に捉え最新の情報技術を活用し,デザインという切り口から多面的なサービスを提供することにより,大企業の新事業立ち上げや事業の再編・再構築を支援。制作したWebサイトを通じて国内外のアワードを多数受賞している。

⁠株⁠コンセント

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「Web時代の設計事務所」として2002年設立。ビジュアルコミュニケーション,情報アーキテクチャ(IA)⁠テクノロジーを融合して,おもにWebや情報プロダクトを活用した問題解決を行っている。大規模コーポレートサイトの構築,サービスサイトの最適化,インタラクティブコンテンツの企画・制作,運用によるサイトの効果向上,Webサイトやサービスでのユーザ経験のデザイン,情報プロダクトのコンセプトモデルの企画など,活動は多方面にわたる。最近開設したコンセントブログにて活動実績など情報発信中。

⁠株⁠ワンパク

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リクルート「スゴイ地図」⁠L25.jp」⁠R25.jp」⁠日本マクドナルド「メガマックショウ」などを手がけてきた中心メンバーがスピンアウトし,2008年1月に新たに立ち上げたWeb制作をメインとしたクリエイティブプロダクション。HOTなアイディアとHOTな技術をベースにHOTなマインドを持ったHOTなメンバーでHOTなものづくりを行い,クライアントやエンドユーザの心をHOTにするため日々奮闘中。

⁠株⁠電通

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2008年,創立107周年を迎えた広告コミュニケーション企業。米国に次ぐ世界第2位の広告市場である日本で長年にわたりナンバーワンのシェアを持つ。同社グループの経営ビジョン「価値創造パートナー」に含まれる,クライアント,メディアコンテンツホルダー,生活者の皆さまの満足感や幸福感をも含む多種多様な価値を創造するパートナーであることを目的としている。