キーパーソンが見るWeb業界

第7回 継続は力なり―成功するコーポレートサイト(後編)

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継続は力なり

長谷川:他にもさまざまなエピソードがあるかと思いますが,そういったストーリーが一貫しているところに着実性を感じます。一回のリニューアルですべてを実施するのではなく,長期計画に基づいて着実に進化していっているのは,企業側でしっかりとしたポリシーを持って運営ができているたまものだと思います。そうした意味で,三菱電機のサイトは「積み上げ」を感じさせてくれるサイトと感じました。

粕谷:コーポレートサイトを組織間で連携して構築していくことで,それを統治するためのWebガバナンスのきっかけを生み出せたと思っています。先に企業ガバナンスから取り組むのは難しいかと思いますが,Webを統治するためのガバナンスを作ったことで,それが企業ガバナンスにもつながっていけば当初の期待を超える効果と言えるかと思います。

森田:たしかに企業ガバナンスありきをイメージしてWebに当てはめるのではなく,まずはWebのためのガバナンスとして,Webガバナンスから企業ガバナンスの構築に取り組むというのは成果も見えやすい分,進めやすいと思います。

今回の三菱電機のサイトは,コーポレートサイトの制作・運用事例としてあるべき姿の1つではないでしょうか。継続してきたからこそ形になり,成果を生み出しています。

長谷川:先ほどのBtoB/BtoC向けコンテンツの話や横断的な事業部の話を聞いていて,エンタープライズ情報アーキテクチャの教科書のような事例と思いました。

森田さんもおっしゃったように,継続したことで資産が蓄積され,自社にディレクション機能が備わっています。これは,コーポレートサイトの運用においては大きな強みです。

阿部:コーポレートサイトに限らず,Webの世界ではPDCAを回していく必要があります。それでも,実際にはここまでPDCAを実現している例は,あまり見たことがなかった分,担当者の意識次第でしっかりできるものなんだと実感しました。Plan,Do,Check,Action,それぞれにおいてどう行ったかが見えているサイトだと思います。

地道でもきちんと続けていくことで,それが報われているケースです。僕も繰り返しになりますが継続の力だと思いますね。

粕谷:私が所属するデジタルメディアグループのマネージャーは,当社のデザイン研究所出身の方が二代続いており,そのことが大きなターニングポイントの1つになっています。広告宣伝の見方とプロダクトデザインの見方,それぞれの持ち味を組み合わせて,新しいサイトを築いてこれたのかと思います。それに,グループのカルチャーとして,トップダウンで「これを全部やりなさい」という雰囲気ではなく,すべきことや,やったほうがいいことを自発的に考えさせてもらえたことにより,さらに前に進みやすくもありました。

結果として,クリエイティブやマーケティング的な視点と,ユーザビリティ的な視点が融合した当社独自のWebサイトが実現できたと思います。

まとめ

三菱電機のコーポレートサイトは,本誌でも注目事例として#20にて取材をさせていただきました。今回はとくに大企業では避けて通れない横断的な事業部間へのアプローチ,多様なターゲットユーザへの取り組みについてお話しいただきました。

阿部,森田,長谷川の三氏も述べているように,結果を残せているのは「継続」があったからこそです。Webのように進化の流れが速い業界において,継続的に新しい取り組みを行うのはとても難しいことです。しかし,粕谷氏が取り組んだような地道な動きというのが実を結ぶというのを,ぜひ本誌をお読みいただいている企業担当者の方にも参考にしていただきたいです。

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三菱電機株式会社

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1921年1月創業。連結従業員数約10万人を擁する総合電機メーカ。技術,サービス,創造力の向上を図り,活力とゆとりある社会の実現に貢献することを企業理念とし,重電システム,産業メカトロニクス,情報通信システム,電子デバイス,家庭電器など,その事業分野は多岐にわたる。

事業情報サイト URL:http://www.MitsubishiElectric.co.jp/index_b.html
会社情報サイト URL:http://www.MitsubishiElectric.co.jp/index_c.html

株式会社ワンパク

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リクルート「スゴイ地図」⁠L25.jp」⁠R25.jp」⁠日本マクドナルド「メガマックショウ」などを手がけてきた中心メンバーがスピンアウトし, 2008年1月に新たに立ち上げたWeb制作をメインとしたクリエイティブプロダクション。HOTなアイディアとHOTな技術をベースにHOTなマインドを持ったHOTなメンバーでHOTなものづくりを行い,クライアントやエンドユーザの心をHOTにするため日々奮闘中。

株式会社ビジネス・アーキテクツ

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顧客企業の事業を支援するコミュニケーション戦略を提案・実施する国内最大規模のWebデザイン企業。顧客企業の経営課題を的確に捉え最新の情報技術を活用し,デザインという切り口から多面的なサービスを提供することにより,大企業の新事業立ち上げや事業の再編・再構築を支援。制作したWebサイトを通じて国内外のアワードを多数受賞している。

株式会社コンセント

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「Web時代の設計事務所」として2002年設立。ビジュアルコミュニケーション,情報アーキテクチャ(IA)⁠テクノロジーを融合して,おもにWebや情報プロダクトを活用した問題解決を行っている。大規模コーポレートサイトの構築,サービスサイトの最適化,インタラクティブコンテンツの企画・制作,運用によるサイトの効果向上,Webサイトやサービスでのユーザ経験のデザイン,情報プロダクトのコンセプトモデルの企画など,活動は多方面にわたる。コンセントブログにて活動実績など情報発信中。

人間中心設計推進機構(HCD-Net)

特定非営利団体 人間中心設計推進機構(略称HCD-Net)は,2005年に設立された,人間中心設計(Human Centered Deisng)を広く広めることを目的としたNPO。HCD-Netでは,ペルソナ法,ペーパープロトタイピング,情報システムのためのユーザリサーチ手法などのチュートリアルやワークショップを開催しており,HCDの普及につとめている。