Webデザイナーなら知っておくべき サーバ知識相談室

第4回 ドメインってなに? Whoisで個人情報が丸見え? ドメインの仕組みを学んでトラブルを回避しよう

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WhoisにはクライアントとWeb制作会社,どちらの情報を入れるべき?

Whoisの役割について,かなり分かってきましたね。ではここで質問です。クライアントのWebサイトで使うドメインを,Web制作会社が代わりに購入したようなときは,WhoisにはクライアントとWeb制作会社,どちらの情報を入力するべきでしょうか?

Webサイトの制作や運用を任されているのだから,Web制作会社にしていいのかなと思うかもしれませんが,基本的にはクライアントの情報を記載すべきです。

ただ,Whois情報は,トラブルがあったときの連絡先として公開されているものなので,実際何かトラブルがあればそこに連絡がきます。またトラブルの際だけでなく,SSL証明書の購入時や,ドメインの移管時においても,⁠Whois情報に書いてあるメールアドレス」に対して諸々の確認メールが届きます。そのため,⁠運用も含めてすべて任されているので,クライアントに技術的な問い合わせや,確認連絡が来ても困る……」という場合には,社名や担当者名,住所などはクライアントの情報にしておいて,メールアドレスだけはクライアントとWeb制作会社の双方が含まれるメーリングリストにしておくのが良いでしょう。

また,Whois情報は先ほど言ったように誰でも調べられるため,特にWeb制作会社が請け負っていることを公にしてはいけないケースで,うっかりWhoisがWeb制作会社の情報になっていると,見る人が見れば「このWeb制作会社が関わってるんだ」と分かってしまうことにも注意が必要です。

ドメインを買えたら,Webサイトはそれだけで見られる?

では再び,IMJ銀行の広報担当者の話に戻りましょう。ドメインは買ったし,Whois情報も登録したし,これでドメインに関してやることはすべて完了!と広報担当者はウキウキです。Webサーバには,事前にサイトのコンテンツをアップしてありますので,満を持してブラウザでhttp://imjbank.co.jp/を開いてみると,なんと次の画面が表示されてしまいました。

IMJ銀行のサイトを見ようとしたら見られなかった

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ドメインは購入できたし,Webサーバにコンテンツもおいてあるのに,どうしてまだWebサイトが見られないのでしょうか。なぜかと言うと,今ドメインとサーバは次の図のような状態だからです。

ドメインとWebサーバが繋がっていない

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ドメインとWebサーバは用意したけど,それぞれ存在しているだけで,その間に繋がりがありません。そこで,これを繋げる必要があります。

この繋げる作業を,よくドメインとWebサーバと紐づけるのように表現しますが,imjbank.co.jpというドメインと,Webサーバの「何を」繋げばいいのでしょうか? それを知るためには,IPアドレスのことを知っておく必要があります。

サーバにはそれぞれIPアドレスがある

サーバにはそれぞれIPアドレスがあります。このIPアドレスは電話番号のように,必ず一意になっています。つまり,同じ電話番号が同時に2つ存在しないように,同じIPアドレスも同時に2つは存在しません。imjbank.co.jpというドメインと紐づけなければいけないのは,このIPアドレスです。

ちなみにIPアドレスにはグローバルIPアドレスローカルIPアドレスの2種類がありますが,これは普通の電話番号(外線番号)と,社内の内線番号のようなものだと思ってください。

内線番号だけ教えられても,社外から電話はかけられないので,単に「IPアドレス」と言ったときは「グローバルIPアドレス」のことを指していることが多いです。公開するWebサイトのドメインと紐づけなければいけないのも,もちろんこの「グローバルIPアドレス」です。

ここでgihyo.jpを例にしてIPアドレスを理解してみましょう。gihyo.jpのサイトが存在しているWebサーバのIPアドレスは「49.212.34.191」です。すでにgihyo.jpというドメインと「49.212.34.191」というIPアドレスが紐づいているため,http://gihyo.jp/を開くとgihyo.jpのサイトが表示されます。

ドメインとWebサーバのIPアドレスが繋がっている

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ドメインではなく,http://49.212.34.191/のように直接WebサーバのIPアドレスを指定しても,まったく同じgihyo.jpのサイトが表示されます。

IPアドレスでもドメインでも同じサイトが見られる

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サイトを表示するには,imjbank.co.jpというドメインと,サーバのIPアドレスを紐づければよいことが分かりました。ではドメインとサーバのIPアドレスを紐づけるには,どこで何をしたらいいのでしょう?

名前と電話番号を電話帳の関係は,ドメインとIPアドレスとDNSの関係

さてここで突然ですが,皆さんは新しく知り合った人に電話番号を教えてもらったら,まず何をしますか? 電話帳に登録するという人が多いのではないでしょうか。ここにドメインとサーバのIPアドレスを紐づけるには何をしたらいいのかのヒントがあります。

名前

電話番号

電話帳

ドメイン

IPアドレス

DNSサーバ

実は上の表のとおり,名前と電話番号と電話帳の関係は,ドメインとIPアドレスとDNSサーバの関係によく似ています。電話帳に「名前と電話番号の組み合わせ」が登録されていれば,電話帳から相手の名前を選んで電話をかけることができますよね。それと同じで,DNSサーバに「ドメインとIPアドレスの組み合わせ」が登録されていれば,ブラウザでドメインを入れただけでサイトが表示できるのです。

つまり,ドメインとサーバのIPアドレスを紐づけるには,DNSサーバに「ドメインとIPアドレスの組み合わせ」を登録すればいいのです。というところで,先ほどのエラー画面のメッセージをもう一度よく読んでみましょう。

「imjbank.co.jpのサーバが見つかりませんでした」というメッセージが表示される

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この画面は,DNSサーバに「ドメインとIPアドレスの組み合わせ」が登録されていないのに,imjbank.co.jpのサイトを見ようとしたため,サーバにたどり着けず,ブラウザが「imjbank.co.jpのサーバを見つけられなかったよ」と言っているのです。iPhoneの電話帳にAさんを登録していないのに,Siriに向かって「Aさんに電話」と話しかけて,⁠Aさんは連絡先に見当たりません」と答えられたようなものです。

というわけで,IMJ銀行の広報担当者の次のタスクは,DNSサーバに「ドメインとIPアドレスの組み合わせ」を登録することです。でも,そもそもDNSサーバってなに? どこにあるの?「登録」って具体的に何をしたらいいの? と,まだ問題が残っています。

そのあたりのDNSサーバにまつわるIMJ銀行広報担当者の奮闘は,次回詳しく解説します。

ドメインの有効期限が切れるとどうなるの?

最後に,ドメインの管理におけるトラブルを一つ紹介しておきます。

ドメインは基本的に1年契約なので,有効期限が近くなるとドメインを購入したお店から「もうすぐ期限が切れますよ,更新してください」とメールで連絡があります。しかし,ドメインを購入したサイト制作会社の担当者が,その時点で退職していたらどうなるでしょうか。

メールは担当者に届きません。そして誰も期限に気づかないまま,ある日ドメインの有効期限が切れてしまいます。ドメインの期限が切れると,その日からそのドメインのWebサイトは表示されなくなりますし,メールも受信できなくなってしまいます。お名前.comでドメインを購入していた場合,有効期限が切れたその日から,本来のWebサイトの替わりにお名前.comの広告ページが表示されます

期限が切れてから約2週間ほどの猶予期間があるため,その間に買い戻す手続きをすれば,サイトを元に戻すことは可能です。ですが,その期間を過ぎてしまうと,もうドメインは簡単に買い戻せません。ドロップキャッチといって,更新をし忘れて取り落としたそのドメインを,さっと拾って,広告だらけのアダルトサイトにしてしまったり,あるいは何十万円という法外な値段で「売ってあげようか?」と交渉してきたりすることを生業とする業者がいるからです。過去に誰かが使っていた実績のあるドメインは,一度も使われていないまっさらなドメインよりも集客力があるため,その価値を狙ってこうしたドロップキャッチが行われるのです。

そのためドメインを購入する際には,レジストラやリセラに登録するメールアドレスは,複数名に届くメーリングリストにしておくなどの対策をしておきましょう。

またサービスが終了し,サイトをクローズした後のドメインの扱いについても,よく考えておく必要があります。不要になったドメインは更新せずに手放しても構いませんが,そのドメインをドロップキャッチ業者が購入するとどうなるかについて理解していないと,後になってトラブルになる場合があります。⁠サイトクローズ後にどんなサイトが表示されても問題ないか?」⁠関連サイト上にあったクローズしたサイトへのリンクはすべて消してあるか?」などを,事前に確認しておきましょう。

さて,今回は「ドメインが生まれてから手元に届くまで」を,一通り追ってきましたが,ドメインに対する理解は深まりましたか?

エピローグ:ドメインを買ってWhois情報を登録してみよう

Webデザイナー「なるほどね,ドメインってこんな仕組みで売られてたんだ」

エンジニア「そうなのよ。じゃあ早速,お名前.comで買ってみようか。ドメイン名は何にするか決めたの?」

Webデザイナー「designer.comがいいなー!」

エンジニア「そんなのcomに限らず,どのTLDでも残ってないと思うよ」

Webデザイナー「あっ,ほんとだ! comもnetもinfoもbizもjpも全部×になってる」

エンジニア「2,3文字とか1単語のドメインは激戦区だからねぇ。新しいTLDが出るタイミングなら買えるかもしれない。今ちょうどworksとかexpertとかのTLDが一般登録開始になったところだし」

Webデザイナー「それか日本語ドメインで,漢字のフルネーム.jpとかもありだなぁ」

エンジニア「でも海外からアクセスしにくいし,国内ですらURLとして認識されにくいよ。名前が売りたいなら,名前をローマ字にしたものの方がいいんじゃないかな」

Webデザイナー「あ,ねえ,○○.comってドメインにしたとしてさ,portfolio.○○.comとかblog.○○.comとかを作るたびにお金かかるの?」

エンジニア「左側に文字を足していくのはサブドメインって言うんだけど,最初の○○.comを買って自分のものにしたら,△△.○○.comを増やすのにお金はかからないよ。増やしたい放題」

Webデザイナー「そういうもんなんだ」

エンジニア「そういうもんです。で,ドメイン名,何にするの?」

Webデザイナー「悩む……」

エンジニア「⁠⁠しかし形から入るタイプなのかな……。ポートフォリオの中身を考えてからのほうがいいと思うんだけど⁠⁠」

こうしてWebデザイナーの悩みが,また一つ解決されたのでした。

次回のお悩みは?

Webデザイナー「ドメイン買ったのに,ポートフォリオサイトが見られない! 何したらいいの?」

次回のサーバ知識相談室は,ドメインとサーバを繋ぐ「DNSサーバ」についてご紹介します。そもそもDNSってなに? DNSサーバはどこにあるの? ⁠ドメインとIPアドレスの組み合わせを登録」って具体的に何をしたらいいの? 疑問の尽きない「DNSサーバ」について学んで,⁠ドメインとDNS」でつまづかないWebデザイナーになりましょう。

著者プロフィール

堀越良子(ほりこしよしこ)

株式会社アイ・エム・ジェイのインフラエンジニア。ウェブインテグレーションの下支えとなるサーバホスティングサービスの構築と運用を担当している。

モバイルサイトのエンジニア,SIerとソーシャルゲームの広報を経て,2013年より現職。「分からない気持ち」に寄り添える技術者になれるように日々奮闘中。