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「成功するWebサイト戦略手法 "ゲームニクス/ゲーミフィケーション"」イベントレポート(後編)

前編に引き続き、2012年3月17日(土)に開催された、成功するWebサイト戦略手法"ゲームニクス/ゲーミフィケーション"のイベントレポートをお届けします。

久保田氏セッション概要

NHK出版の久保田大海氏が登壇し、ソーシャルメディアとゲーミフィケーションの関係性や、ゲーミフィケーションが実際のWeb制作へ与える影響などについて実例を交えながら解説しました。まず、同氏はゲーミフィケーションの概要について説明しました。米国の市場予測によると、⁠ゲーミフィケーション市場は2011年の1億ドルから、2016年には28億ドルにまで成長するだろう」とのことです。

次に同氏は、Webにとってのゲーミフィケーションは以下の2つの考え方があると示しました。

  • (1)Web上でゲームコンテンツを作る
  • (2)Webにゲームの要素を入れる

まず、⁠1)について実例を示しながら解説しました。例えば、無印良品が展開するMUJI LIFEというソーシャルゲームでは、⁠MUJI COIN」という仮想通貨を使ってユーザーとの関係を強化する試みがなされています。プレイヤーはTwitterやFacebookなどのアカウントでログインすることができ、自分の棚にアイテムを増やしていきます。自分の棚には1日6回、無印良品から段ボールが届き、手に入れたアイテムを並べ、自分らしい棚を作っていくというゲームです。TwitterやFacebookなどで交流を発生させ、継続的にゲームに参加する動機づけを行っているのです。

次に、⁠2)のWebにゲームの要素を入れるためのアプローチには、以下の2通りの考え方があると同氏は指摘しました。

  • 「プラットフォームの利用」⁠パッケージ利用)
  • 「フレームワークに基づく開発手法」⁠スクラッチ開発)

上記の2については、社外向けのオープンWebを例に同氏は解説しました。Webにゲームの要素を入れるためには下図のように、サービス提供者である企業と、Webを閲覧する顧客との間に、新たに「ゲーム層」ともいうべきレイヤーを設けることで関係強化を構築する必要があります。

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まず、⁠プラットフォームの利用」について同氏は解説。米国には、以下の「5大プラットフォーム」と呼ばれるサービスがあり、同氏は代表的なプラットフォームの「Bunchball」を例に、⁠アクセス数30%UP」⁠物販47%UP」⁠再訪率47%UP」など具体的数値を引きながらサービスの特徴について解説しました。

  • Bunchball(バンチボール)
  • Badgeville(バッジヴィル)
  • Big Door(ビッグドア)
  • Gigya(ギギャ)
  • Crowdtwist(クラウドツイスト)

これらプラットフォームサービスの特徴は、限られた予算の中でユーザーの行動を解析しながら、サイトを合理的にチューニングしていくことができる点です。

次に、⁠フレームワーク」についての解説です。⁠フレームワーク」は、商品、流通、価格、プロモーションなどの各カテゴリーでゲーミフィケーションを設計し、スクラッチでサイトを構築していく手法です。ここでは、⁠sneakpeeq」⁠スニークピーク)という米国のECサイトの実例が挙げられました。同サイトは、Facebookへのログイン、コンテンツのシェアなど、何かのアクションを起こすごとにご褒美がもらえる仕掛けが随所に散りばめられており、⁠フィードバック」という点が強く意識されています。

フィードバックが繰り返され、プレイ履歴や獲得したものが可視化されると、どんどん継続的にアクションを起こす動機づけになります。また、レベルアップすることで達成感が与えられ、次もクリアしたいという欲求を生んでいきます。さらに、ゴールを明確にして動機づけし、競争や協力を喚起することができます。

こうしたフレームワークは、様々なソーシャルサービスの領域に適用されており、様々なゲーミフィケーションのテクニックについて紹介がありました。

最後に、同氏はセッションの締めくくりとして香港の実業家Michael Wu(マイケル・ウー)の言葉を引用しました。すなわち、⁠ゲーミフィケーションは行動を促進するものではなく、強化するもの」ということです。ゲーミフィケーションの本質は、ユーザーのアクティブ率を上げ、長期的にユーザー行動の変化を促していく点にあることに言及してセッションは終了しました。

櫻井氏セッション概要

最後のセッションとして、Metamosphere Inc.の櫻井優樹氏が登壇しました。同氏は、ゲームニクスやゲーミフィケーションをWebに取り入れ、思わず周りに伝播させたくなるコンテンツ、何度もリピートしたくなるコンテンツの実例として、実際に同氏が制作した以下の広告プロモーション事例を紹介しました。

  • (1)マイミクGP(2009年)
  • (2)ラブドラ(2010年)
  • (3)GLOBE BANK(2009年)

(1)⁠マイミクGP」は、2009年にスバルのOUTBACKという車の新車発表にあわせたプロモーションで、mixiを使ったプロモーションです。プレイヤーのソーシャルグラフ(マイミクの関係)を一本の糸に見立て、友達から友達を一本の線で結び、一番長くなったチームが優勝するというゲームです。

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同氏は、動画を使ったデモで内容を紹介しました。レベルに応じたバッジの付与、表彰、トレーディングやギフト交換、競争などによりプレイヤーの動機づけと交流を喚起した結果、参加者数は35万人、アクセス数は140万PVに上ったということです。

(2)⁠ラブドラ」は、同じスバルの案件でこちらもmixiを使ったプロモーションです。再訪を促す「やりこみ要素」を追求したコンテンツで、⁠レガシーB4」という車のターゲットである20代~30代の男性を対象とした、⁠女性との仮想デート」をテーマにした恋愛シミュレーションゲームです。

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女性と車中で起こるシナリオ500本、総シーン1,000にのぼるデートを3日間のロケ、スタジオで撮影し、⁠ラブプラス」「ときめきメモリアル」のように、シーン別に女の子と仲良くなってドライブに誘っていくゲームの概要を、同氏はデモ動画を交えて解説しました。

こちらは、参加者数61,516人、サイト滞在時間16分18秒という再訪性の高いコンテンツとなりました。

(3)⁠GLOBE BANK」は、コニカミノルタのCSR活動の一環で、プレイヤーに環境問題をより身近に感じてもらうよう、単なるワンクリック募金ではなく、問題を知ってもらった上で募金に参加してもらう仕掛けがなされています。

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ソリティアやオセロのように、球体のアイコンを移動し、消していくルールで、球体のアイコン一つ一つは、地球の環境問題に見立てられています。ゲームの中で地球の環境問題を解消していく過程で、プレイ時間と同じ時間で進行する地球の問題がプレイヤーに示され、同時にワンクリック募金への導線が表示される仕組みです。この行動喚起するコンテンツは、約500万円の募金を集めました。

最後に、同氏はまとめとして、長期のWebプロモーションやサービスは、ライフログなどを使用した面白いコミュニケーションがとれる可能性があると言及しました。ゲーミフィケーションのポイントとして、⁠ターゲットにあったゲーム力学の考察」⁠レンジ分け」⁠絶妙なハードル」⁠ユーザー同士が育てていけるプラットフォーム」といった4点を挙げ、セッションを終了させました。

本イベントを電子書籍化したものが5月中に発売されます。講演で実際に利用したスライドを元に、各スピーカーが書き下ろした内容になるようです。時間の都合でイベントでは説明できなかった部分なども電子書籍用に補完され、随時アップデートされていく形となるので、イベントに参加した人も、できなかった人も、セッション内容に興味がある人はチェックしてみてはいかがでしょうか。

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