企業ユーザのためのクラウド導入の手引き(IaaS編)

Chapter10:CDN(Contents Delivery Network)

CDN(Contents Delivery Network)とは、簡単に言うと、主に画像や動画などのサイズが大きいコンテンツを、世界各地のISPに置いた配信専用サーバ(エッジサーバ)にコピーしておくことで、どこからのアクセスに対しても、わざわざ配信元のサーバまで取りに行くことなく、最寄りのISPのサーバからそのコンテンツを素早く配信できるようにする仕組みのことです。ネットワーク全体を1つの資源と考える、ということからすると、CDNもクラウドサービスの一種と言えます。

CDNのイメージとしては、1店舗しかない名店の人気商品を入手するために、今まではわざわざ店頭まで出向くしか購入手段が無かったのが、全国展開しているスーパーと取引するようになったことにより、商品がどこでも簡単に手に入るようになるようなものです。

CDNを構築するためには、世界各地にサーバを配置し、それぞれをネットワークでつないで、インターネット全体で利用できるように管理・運営する必要があるため、大規模な投資と高度な技術が必要で、その結果、利用料金もかなりの高額となる場合が少なくありません。従って、これまでCDNを利用できるのは、一部の企業だけに留まっていました。

しかし、最近いくつかのIaaSにおいて、CDNをオプション提供するところが現れてきました。IaaSとCDNを組み合わせてWebサイトを構築することによって、これまで説明してきたIaaSの利点に加え、以下のようなCDNの利点も享受することができます。

Webコンテンツのレスポンス向上

画像や動画などの大きなコンテンツは、アクセス元からのネットワーク的な距離により、アクセス時間が大きく異なります。サイトへのアクセス遅延によるレスポンス低下は、顧客の離反など、ビジネスチャンスを失うことにもなりかねません。CDNに画像など重いコンテンツを任せることで、コンテンツへのアクセス遅延を防ぎ、サイトのレスポンスを向上させることが可能になります。

とくに最近では、ネットショップにおいては画像表示の速度が売り上げに影響するともいわれていますので、CDNを利用してコンテンツのアクセス速度を向上させることは非常に重要です。

Webサイトの可用性向上

近年のインターネットでは、ボットネットなどによる攻撃が日常茶飯事に行われています。どんなWebサイトもいつどういう理由で攻撃ターゲットにされてしまうともわかりません。一般的なサイトでは、このような攻撃を防ぐことは困難ですが、CDNを利用すると、攻撃は攻撃元最寄りのエッジサーバで受け止めてくれるため、サイト自体が直接攻撃を受けることはほとんどなくなります。

したがって、サイト管理者は防御に追われることもなく、顧客へ迷惑をかけたり、ビジネスチャンスを逸する危険も減少します。

実際のCDNの利用法は、提供されるサービスによってさまざまですが、IaaSとCDNを組み合わせることで、Webコンテンツのレスポンス向上やWebサイトの可用性向上につながることは確かです。

いつでもだれからでも快適にアクセスでき、Webサイトが快適に表示される環境づくりも、今後のWebサイト構築では欠かせないものになっていくのではないでしょうか。

なお、実際のCDNの利用方法に関しては今まで説明したようなことがどのCDNでも必ず出来るわけではありませんので、契約前に良く確認したほうが良いでしょう。

図1 CDNでのIaaSのメリット
図1 CDNでのIaaSのメリット

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