WEB DESIGN WORKSHOP「正しいウェブデザイン」

第9回Blog Promotions「ブログプロモーション」

Sifry's AlertsのState of the Blogosphereによると2007年4月の時点でブログの数は7000万件、うち37%(25,900,000件)は日本語である。この言語比率とBlogosphere(ブログ界の)成長率(一日:12万件)が維持されているとすると、現在の日本語でのブログの数は4000万件を超えることになる。まさに「国民的」とも言えるこの動向は「一個人のブログ」という驚異的な規模のメディアと、それを媒体として活用する様々なビジネスモデルを生みだした。

中でも金銭的報酬をブロガーに支払い、サービスや製品のモニター記事などを書かせるブログプロモーションの業種は急激な成長を遂げている。これはブログがプロモーションに適した、たくさんのメリットを持った魅力的な媒体であることが理由である。

  • 掲載費用が安価な媒体である
  • ジャンルを通じターゲティングがしやすい媒体である
  • エンドユーザーとの距離が近い媒体である
  • 従来の広告よりユーザーがコンバージョンしやすいクチコミ力の強い媒体である

また、あくまで副産物ではあるが、媒体がブログ記事であるためWebサイトへの被リンク数を増やし、SEO効果も生む。記事が古くなってもユーザーニーズを反映したキーワードが書かれていれば、プロモーション期間後もブログ記事は効果的なランディングページとして機能するのだ。

ブログプロモーションの種類と活用方法

金銭報酬がブロガーに支払われる以上、ブログプロモーションは「広告」ではあるが、情報の提供は企業ではなくブロガー本人の言葉で行われるため、その性質は雑誌やニュースなどによるペイドパブリシティ(記事広告)に似ている。

ブログプロモーションもペイドパブリシティも口コミである事をユーザーに認識させ、広告情報に対する警戒を軽減することが目的であるため、種類によって最適な広告色の少ない書き方を誘発することが重要である。

ブログプロモーションは記事を書くブロガーのインフルエンス(影響力)によって3種類に分類され、活用方法も変わる。

インフルエンサーブロガーブログの執筆者自身の知名度により大量のトラフィックを確保しているブロガー。ブログ自体の内容や情報よりも、タレントとしての芸能活動などがブログの影響力を左右する。
パワーブロガー特定のターゲットに対し特定の分野の専門知識を記事として提供し、その内容によって大きなトラフィックを確保しているブロガー。強い発言力を持った「個人」であるため、企業に対しパワーブロガーは有効的な媒体であると共に「脅威」的な存在にもなりうる。
一般ブロガー個人的な「日記」を公開しているブロガー。中にはターゲティングされた記事を通じてトラフィックを確保している一般ブロガーもいる。

インフルエンサーブロガーの活用方法

主にモデルやタレントであるインフルエンサーブロガーは一般人の認知度が高いだけではなく、特定の層にファンがいることが多い。どのようなユーザーがそのブログを見ているかによって、キャスティングを行うべきである。また、そのようなインフルエンサーは他媒体ですでに競合などと契約を行っている可能性もあるため、事前に詳しいリサーチが必要である。

インフルエンサーブロガーは最も影響力の強いウェブ上の媒体であるとともに、公の人物であるために「やらせ」に見えてしまうリスクが高い。回避するためにはインフルエンサーに必ず宣伝するサービスや製品を自身で体験し、自身の言葉で嘘のない記事を書く必要がある。その中で正直に人に勧められる点や、競合製品・サービスとの差別要因だけにフォーカスして記事を書けば、⁠やらせ」にはならない。

インフルエンサーブロガーによって効果的な記事が書かれれば、そのブログからウェブサイトへ大量のユーザーがランディング(到達)する。その後、しっかりとコンバージョンを行うために到達先にはターゲットユーザーに向けたインセンティブが明確に表示されている必要がある。

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パワーブロガーの活用方法

「影響力を持つ個人」であるパワーブロガーは企業にとって「雑誌編集長」に近い存在だと言えよう。金銭的な報酬だけでなく、その影響力を認めるなどの精神的な報酬を与えることが長期的な関係の構築につながる。パワーブロガーをそのブログの特性によりキャスティングし、限定した価値ある情報を流す。その際に直に話し合い、向こうのインプットを受け入れる事も大変重要である。イベントやギフト(モニター企画)等連動することでプロモーションに効果的な記事を生成する。

また、彼らは多くの場合、⁠一個人」であるため、インフルエンサーよりも「やらせ」として見えるリスクが比較的少ない。パワーブロガーに何かの記事を書いてもらう際は、ブロガーに限定したキャンペーン企画などを用意し、参加してもらう事で他のブロガーが参加するサイクルを生むことができる。

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一般ブロガーの活用方法

一般ブロガーの「個人的な日記」は最も安価なウェブ媒体の一つであるが、その活用方法はいくつかあり、厳しいコントロールが必要である。大体の一般ブロガーは少額の金銭収入を目当てにブログプロモーションサービスに登録をしているため、自身に関連性の無い記事を収入だけのために執筆する可能性が高い。一般ブロガーの読者は周辺の知人等であることが多く、ブロガーのセグメント化を行わなければ口コミ効果は期待できない。そのため、大量の口コミ記事を生成させ、ランディングを期待する場合は記事のタイトルやテキストがユーザーのニーズを反映したものにするべきだ。大量の一般ブロガーの記事と結びつけるサイトがユーザーニーズに応える情報コンテンツであれば、検索からランディング到達後のコンバージョンが期待できる。

また、一般ブロガーは比較的影響力が弱いため、製品・サービスを勧めるだけでなく、サイト上で提供されているインセンティブについて書かせることで、読者をWebサイトへ導きやすくする必要がある。

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ブログプロモーションを成功させるために

ブログプロモーションは一時的に記事を生成させることで、プロモーション後も一般ブロガーが話題としてどれだけブログに取り上げるかがポイントである。一時的な話題ではなく、話題の連鎖を生む起爆剤や促進方法として活用する事が重要である。それにはブログプロモーションと連動するWebページに以下の要素を組み込むことが重要である。

ブロガーが参加できる仕組み

ブログパーツの貼り付けや、診断結果・採点の貼り付け、トラックバック等、ブログに貼り付けることでブロガーが自己表現できる仕組みを用意する。また、ブログプロモーションとは別にプレゼント企画などに対しブログ記事のコンテストなどを実施することで、更なる一般ブロガーの記事書き込みを誘発する。

インセンティブの提供と継続
ブログから得たトラフィックのほとんどはパッシブなものであるため、これらのユーザーをコンバージョンに導くためにインセンティブの提供が必要である。また、過去の記事から検索を通じてランディングを継続的に期待する場合は同じURLでのインセンティブ提供の継続も必要である。

リリースの提供

ブロガーが記事を書きやすいよう、また、記事内容に含めたいテキストを含められるよう、コピーペースト(転載)できる素材やコードを提供する。

ターゲットに対する演出
ターゲットユーザーを想定し、コンテンツに対し、自身のブログに載せることによりエンターテインメント性やファッション性などを表現できる演出を行う。どのようなターゲットユーザー層がブログの自己表現を通じて満足感を得ているかを認識する必要がある。

ブログプロモーションは組み方によって大きな集客効果を発揮する。また口コミ効果も大きいため、製品・サービスのブランディングメッセージを広めるには効果的である。

次回はリアルとの連動とユーザー離脱のケアについて説明する。

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