WEB DESIGN WORKSHOP「正しいウェブデザイン」

第19回Synchronizing with Points of Sales「実店舗との連動」

実店舗の売り上げの向上はWEBサイトに大きく求められる要素である。とは言ってもECとの連動ほど簡単にはいかない。WEBサイトへの集客が正しくできていれば、必要なタスクは店舗への誘導と、リピート購入促進の2つであり、最終的なゴールはWEBと実店舗の双方から集客を行い、リピート購入のサイクルを作る事だ。今回はWEBと店舗を連動させ、顧客化のプロセスについて説明する。

WEBから店舗へ

まずはWEBサイトから集客したユーザーを店舗へと誘導してみよう。これには店舗情報はもちろん、来店メリットを理解させる必要がある。対面販売が可能な直営店である場合は比較的簡単だ。割引や限定商品等のモバイルクーポンを配信し、来店のインセンティブとすればいい。

また、店舗でしか手に入らないデジタルインセンティブ(待受け、アプリ、MP3、映像コンテンツ等‥)もブランド次第では効果があるだろう。その場合は店舗にFELICA端末などを用意し、来店してくれた方だけに特別なデジタルインセンティブを提供する。

最近ではデジタルサイネージとFELICAを組み合わせた什器などもある。来店した客に対して再度強力なインセンティブのコミュニケーションが可能となる。

ランコム
ランコムのサイトでは定期的に商品サンプルクーポンを配信し、売り場へ集客を行っている。

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誘導先が量販店である場合、クーポンに対するオペレーションの確保やFELICA端末の導入などが困難となる。

特定のチェーンなどと連携して誘導に必要な要素を確保する事も考えられる。インセンティブの魅力しだいで集客は期待できるが、対面販売でないが故にコンバージョンがあまり期待できない。

最も効果が期待できるのはインスタントウィンのクローズド懸賞である。購入製品のパッケージなどに個別のQRコードやシリアルナンバーを印刷し、購入者だけが応募できるキャンペーンを実施する。筆者の経験からこの場合、インセンティブが魅力的である必要はそこまで無い(もちろんインセンティブが魅力的である事に超したことは無いが、可能であれば大量当選を可能とする賞品が好ましい⁠⁠。

ユーザーを巻き込むためのインヴォルブメントデバイスとしてのゲームなどが楽しければ大半の消費者は参加してくれる。また、ほとんどの参加者はモバイル経由となるだろうが、取りこぼしのないためにPCからの参加も可能にしておくべきだ。

ダノン
ダノンビオのパッケージに印刷されたQRコードとシリアルナンバーからメールマガジンへの登録を促進。

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これらの来店・購入メリットをWEBやメールで告知する事で来店へとつなげる。シンプルな考え方だが、WEBがターゲットユーザーの集客を行っていれば来店は十分に期待できる。クーポンでWEBから店舗へとユーザーを誘導する場合はモバイル経由で転送可能にしておくべきだろう。新規顧客の個人情報を取得するチャンスは来店時にもあるので、より多くの来店者の確保を優先すべきだ。

店舗からWEBへ

デジタルインセンティブやクローズド懸賞など、店舗側で来店メリットを提供する場合は登録を必須とする必要がある。店舗への来店の7割はリピートにつながらないため、この時点での個人情報の取得が最後のチャンスになる可能性が高いのだ。初回の客からはできるだけ多くの登録を獲得し、コンタクトをとれるようにするべきである。

購買のサイクル化

重要なのはWEBサイトと店舗の双方から顧客となりうる新規ユーザーの個人情報を獲得する事である。その1割だけでもリピート購入につなげることができれば、売上は確実に向上する。集客した顧客をリピート購入のサイクルに入ってもらうためにはこの様な実店舗との連動とピンポイントなメールでのコンタクトが必要だ。

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リピート購入を促すメール

毎日買う日用品から車まで、消費される期間、買い換える期間は様々だ。そのためアプローチするべきタイミングも異なる。重要なポイントは、どの期間を過ぎるとリピート購入者が減るかを調べることだ。客のリピート率が最も極端に低下するポイントを見つけ、その前にメールを送ろう。そのようなポイントは何回かあるはずだ。食品などの日用品であれば一週間、一か月、三か月といった時期が該当するかもしれない。

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売上のデータなどから的確な送信のタイミングを見つけることができたら、どのようなメールを送るべきなのか? これは通常の定期配信のメルマガとは違い、顧客との接触回数によって送信内容を変えるステップメールであるということを認識しよう。どの段階で何を知らせればより関心を持ち、覚え、広めるか。これを理解する必要がある。

最初のメールは自己紹介のようなものを用意するべきである。いくら有名なブランドであろうと、一般消費者はそのブランドの裏にある理念や情熱を知らない。ルイ・ヴィトンのバッグやモノグラムは誰もが知っているであろうがミッション・ステートメント(伝統と革新)を言える人は少ない。他のブランドはより一層知られていないだろう。ちなみにダノンは「食品を通じて栄養と健康を届ける」会社である。どちらのブランドも提供する商品がこのミッションに沿っていることが分かる。ブランドのミッションを伝えることにより商品に対する正しい視点や理解、信頼を得ることができる。故に最初のメールはブランドの自己紹介であるべきだ。企業としてどのような商品を提供し、どのように社会貢献を目指しているか。これがブランドと顧客との最初の接点となる。

2回目のメールではブランドへの信頼を更に高めるために消費者のテスティモニアルや、ブランドのスポークスパーソンについての情報を送る。消費者の声というリアルな情報や、知っている人物の情報を送ることでブランドをより身近に感じてもらう事が目的だ。

3回目のメールではデジタルインセンティブを贈ろう。待受けや壁紙等で良いが、ポイントは使用してもらう事で広告効果を狙うというより、相手に「贈り物をもらった」という意識を持たせることだ。一切製品情報などを含まず、ターゲットが本当に「使用したい」と思うものを用意するべきだ。

このような仕組みは継続的なキャンペーンの実施と、CRMツールである程度自動化が可能である。実店舗で「売る」事を目的にしたWEBサイトを作る場合は、この顧客化のプロセスを意識した作りにしてほしい。

次回は魅力的な商品コンテンツの作り方について説明する。

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