WEB DESIGN WORKSHOP「正しいウェブデザイン」

第20回Sales Contents「セールスコンテンツ」

大半のWebコンテンツは何らかの商品を売るために存在する。しかし、商品に関するコンテンツの多くは Webの膨大な情報量に埋もれてしまい、集客した消費者の購買動機付け、購買への誘導へとつながっていないのが現状だ。

見込み客を到達させ、確実な購買動機付けを行い、販売チャネルへと誘導する。商品を売り付けるのではなく、自然と消費者に欲しいと思ってもらい、買ってもらう。そんなセールスコンテンツの作り方を説明しよう。

セールスコンテンツに必要な要素

セールスコンテンツに必要な要素は4つある。潜在顧客を継続的に集客するコンテンツ、集客したユーザーに購買動機付けを行うコンテンツ、離脱を防止するコンテンツ、そして、確実に販売チャネルへと誘導するコンテンツだ。これらのコンテンツがすべて機能し、連動したときに初めてセールスが成立する。

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セールスコンテンツを企画する際、対象となる商品のニーズ、USP/スペシャリティ、提供できる実用的なノウハウ、消費者に対する提案/オファー、そしてその効果の証明(テスティモニアルやケーススタディなど)を明文化する必要がある。また、セールスコンテンツはブランドのミッション(理念)に沿っている必要もある。これらの要素をマトリクス化し、関連性を重視しながら情報を埋めていく事で、理想的なコンテンツの内容が見えてくる。

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ニーズや実用的なノウハウから継続的な集客を行うコンテンツ

どんな商品も何かの問題を解決する。消費者は明確な理由がなければ購入はしないものだ。その商品が消費者の抱えるどのような問題を解決するのか? まずはキーワードをリストアップしてみよう。例えばスキンケアの化粧品などは簡単だ。しわ、シミ、肌のハリなど、消費者が容姿に対して抱える問題は常に多く検索されている。もし具体的なニーズに答える事が出来なければ、購買のシチュエーションを考えてみれば良い。ギフトなどには向いているなど、明確なニーズが無くてもその商品を求めている潜在顧客は存在するはずだ。そのキーワードを見つけて、マッチするコンテンツを作れば良い。もしも全くニーズが見出せず、検索から誰からも求められていない商品であれば、Webには向いていない。その場合、費用対効果は低いが、広告を通じて新たな需要を生み出す必要がある。

消費者のニーズを見つけたら、その消費者が求める情報を提供しよう。できるだけ実用的な情報が好ましい。メイクであればメイク方法、ファッションであればスタイリングなど、消費者がすぐに活用できる情報を提供する。例えばダノンでは腸内環境を改善するヨーグルトを販売している。このサイトでは20ページにも及ぶ「便秘」に対する基礎知識を提供している。もちろん、マッサージや運動などの商品を必要としていない改善方法も掲載することで、結果的に多くの便秘に悩むユーザーの集客に成功している。

ダノンの場合は薬事法の規制により、これらのコンテンツに商品の表示は出来ないが、可能な場合は積極的に商品との関連性を表現するべきだ。検索ニーズにマッチするコンテンツを作成したら、被リンクを獲得するなどし、検索上位を狙う。これで(またはこれの積み重ねで)検索エンジンからの継続的に潜在顧客の集客が可能となる。

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購買動機付けを行うコンテンツ

販売を実現するためには集客したユーザーにまず商品を理解してもらう必要がある。単に商品の特徴だけではなく、競合に対するポジショニング、扱いかた、メリット、付加価値、そして価値の証明を伝える。集客した潜在顧客はすでに商品にマッチしたニーズを持っている。しかし、その中でもより多くの人数に購買動機を持ってもらうためにはこのようなコンテンツを通じ、ユーザーが「買わない」理由をひとつずつ潰していく必要がある。

買わない理由①:「他の商品でも良い」

まずはUSPを明確にしよう。USP(ユニークセリングプロポジション)とはその商品が持つ独自の売りであり、競合商品に対するポジショニングを明確にする。個性(スペシャリティ)や、独自の売りが無ければ消費者は類似する商品と比較をし、より安い選択を行ってしまう。競合へのブランドスイッチや、コモディティ化による価格競争を避けるためにUSPは必要である。USPは潜在顧客に対し、唯一のソリューションとして商品を紹介できるため、強力な購買動機付けが実現できる。競合を全て排除するために商品のUSPを見つけよう。USPを見つけるためには以下のような質問をしてみると良い。

  • 商品が明らかに競合と異なる要素は何か?
  • 購入者のメリットになり、感謝し、褒める点は何か?
  • 競合が目を付けていない独自の取り組みはあるか?
  • 他の商品ではなく、なぜこの商品を選ぶべきなのか?
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買わない理由②:「今、買わなくても良い」

今、買わなくても良いという事は結局「この先も買わなくてよい」と言うことと同じである。どのような販売も消費者の経済的な支出を伴うため、このハードルはクリアしなければならない。自身のニーズにマッチした商品が他では手に入らない独自の売りを持っている事を理解したとしても、消費者が「お金を出す」という行動にはさらなる後押しが必要である。その商品を購入する事の更なるメリットを理解してもらおう。

販売の付加価値を伝える提案はセールスプロモーションの基本である。限定された特典などを伝えることで、消費者に「今、買わなければいけない」理由を与える。限定商品や割引、プレゼント、無料サービスなどの付加価値は購買を最適化する際に非常に効果がある。ある程度の販促予算があれば、このような金銭的な付加価値を作り、潜在顧客に伝えるべきだろう。しかし、本来の商品の特性を活かし、費用を掛けずに精神的な付加価値を伝える事もできる。商品の購入によって顧客がどのようなメリットを得ることができるか。そして、できるだけ早くそのメリットを体感してもらうように提案するのである。商品だけでなく、できるだけ多くの具体的な「体験」を提案する事で、潜在顧客に意識を「購入後」に向けることが可能になる。

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買わない理由③:「信用できない」

店頭などでは実際に購入する製品を試すことが出来る。トライアルやサンプリングは実際の使用感を通じて潜在顧客の信用を勝ち取り、販売へとつなげることが可能だ。しかし、Webサイトから「試す」事が出来る商品はデジタルコンテンツやアプリケーション、Webサービス等に限られている。

Webを通じて、潜在顧客の信用を勝ち取る方法は二つある。一つはこちらから商品に対する「自信」を示す事である。返品や返金を可能にする事で、消費者の投資リスクを無くす。商品の評価を消費者自身に委ね、効果に対して責任を取ることにより信頼を勝ち取るというものだ。応募者全員に無料サンプルを提供することも同じような効果がある。二つ目は既にその商品を購入し、満足した顧客の体験(テスティモニアル)を伝えることである。例えそのユーザーたちを知らなくても、大多数の他人がその商品に満足したという事実があれば、潜在顧客の信頼は勝ち取ることができる。

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リマインダでユーザーの離脱を防止するコンテンツ

オンラインで購入が行えない場合、Webサイトから販売までには更なるハードルが存在する。ここでもうひとつ、最も大きな「買わない理由」を潰さなければいけない。消費者が「買わない」最も大きな理由はその商品を「忘れる」ことである。

買わない理由④:「忘れた」

あなたは日々のタスクをどのように管理しているだろうか? 大体の人は何か日常的にみる習慣のある場所にタスクを書き留めているはずだ。⁠筆者はWebメールにTodoを表示している⁠⁠。書き留めなければ、誰もが大事なことさえ忘れてしまうのであれば、リマインダ無しに商品を買うことを覚えていてもらうことは大変難しい。しかし、Webにはリマインダとして機能するツールがいくつも存在する。ページの情報をメールで送る、印刷する、ブックマークする、メールマガジンへ登録するなど考えられるだろう。利用する手法はユーザーの慣れや状況によって異なるため、可能な限り複数のリマインダを提供する。

ティファニーの商品ページ例えばこのページにはそのページのブックマーク、印刷や、メール送信機能が付いている。高額な商品であるため、購入の決断がすぐに行いにくいためだろう。もちろんブックマーク、印刷やURLのメールはツール無しでも行うことができるが、その選択肢をユーザーに提示する事で「覚えている」というユーザーの過信から起きる離脱を防止する事ができる。

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確実に販売チャネルへと誘導するコンテンツ

買わない理由⑤:「買いに行く場所がわからない」

ものすごく初歩的な事であるが、商品が何処で売っているか分からなければ、消費者は買うことができない。しかし多くのWebサイトでは商品の購入場所を消費者に伝えていない。スーパー、ドラッグストア、コンビニ、百貨店、又は直営店なのか? 消費者にとっては目的を持って足を運ぶのか、何かの序に購入できるのかという大きな違いがある。購入できる場所を具体的に伝えることで、潜在顧客は初めて購入の予定を立てることができる。

購入できる店舗が直営店であるか、協力を得ることができる店舗であれば、より効率的に誘導することができる。買わない理由②:「今、買わなくても良い」で説明したオファーとも関係するが、店舗のみで手に入る特典を提供すれば良い。その引換券をモバイルのクーポンにすることで、リマインダとしても機能する。

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無事、購買動機を持った潜在顧客を販売チャネルへと誘導する事ができればセールスコンテンツの任務は達成する。各ステップをしっかり行うことで限りある集客からの購買を最適化することができるのだ。

次回は、PR効果を最適化するWebコンテンツについて説明する。

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