WEB DESIGN WORKSHOP「正しいウェブデザイン」
第21回 PR through the web「Webを通じたPR」
PRと言えばメディア露出を獲得するための活動のように受け取られているように思えます。パブリシティの引換えに純広告の購入や接待を行い,広告媒体とのリレーションを維持することもPRの仕事の一部かもしれません。しかし,PRはPress RelationsではなくPublic Relationsの略。話題やニュースを作り,消費者同士の情報発信(交換)を通じてブランドを創ること。そんなプロデュース的な仕事こそがPRです。
消費者という第三者からの客観的(かつ自主的)な情報発信がキーであるPRにとって,消費者自身が情報発信力を持つWebは最も重要なメディアと言えるでしょう。大量の消費者とのダイレクトな接触や細かいセグメントに応じて個別に行えるアプローチもWebを通じたe-CRMが可能にします。リーチという面ではまだまだ企業の広告・広報戦略のなかで軽視されるWebですが,その特性を十分に活かすことができればPRこそが最も早くWebを中心にシフトするべき活動なのかもしれません。
消費者のインターネット利用は毎年増加傾向にあり,メディアとしての接触時間もテレビに次いで2位になりました。各世代で総接触時間の25%をも占め,ブログやSNS,メール,検索など,様々な情報との接点を生み出しました。
消費者は未だテレビを通じて情報を認知する事は多いですが,詳細な情報や「流行」の実感は確実にインターネットから得られています。マスメディアの時代には特権であった「情報発信」が積極的に消費者間で行われるようになり,PRの重要性が大きく増しました。
消費者が発信する情報は,ブログ記事やブックマーク,映像,画像,TwitterやSNSのリアルタイムなつぶやき,コメント,商品レビュー,メールなど,様々な形でWeb上に存在します。ブログ記事だけで月間205億ページ,SNSでは439憶という膨大な情報量が毎月消費されています(総務省,「ブログ・SNSの経済効果に関する調査研究」より)。
この情報は従来のメディアと違い,内容次第で引用・転載され,自己増殖的に広がっていきます。その多くの情報は不特定多数から閲覧が可能で,継続的に掲載され続けます。Webは様々な種類の情報がとても広がりやすく,PRにとって理想的な媒体なのです。
Web上でターゲットに影響力を持つ第三者に自主的な情報発信を行わせるバズマーケティング。その仕組みは正にPRと同じです。どちらも話題性のある情報をインフルエンサーやメディアに発信し,接触した消費者のクチコミを発生させます。
Webの場合,従来のPRと違う点は発生したクチコミはブログ記事や書き込みなど,不特定多数を相手にし,半永久的に存在し続けるユーザージェネレーテッドコンテンツという形を取るということ。そして,ほとんどの場合短い説明文,またはタイトルだけの状態で広まるということ。WebでのPRは大きな自己増殖的なバズを生むためにWebの特性を十分に理解し,コンテンツをプロデュース・制作する必要があります。
PRに適したWebコンテンツ
まず,最も重要な要素は話題性です。今,人が興味を持ち,話題にしたい内容が含まれていなければ情報は広がりません。情報自体のニュース性,そしてタイミング。PRを行う際はコンテンツにこの2つが揃っている必要があります。
最近試みたPR施策で比較的成功したのがロエベというラグジュアリーブランドの展示会です。シーズン毎に行われるコレクションの発表にはニュース性があまりありません。そこで,話題のセカイカメラをリリースされる前に展示に使わせてもらう事にしました。ブティック内に投稿された公式のエアタグを3台のiPhoneで見るというとてもコンパクトな内容でしたが,セカイカメラの話題性とリリース前という絶好のタイミングが重なり,大きな話題となりました。
- 【ロエベ/セカイカメラ】スキームを通じたPR
- URL:http://ogino.ficc.jp/archives/2009/09/pr.html
Web PRを広げるためのポイント
リサーチ
ロエベ/セカイカメラの事例のように“旬な要素”を取り入れる事が,毎回できるとは限りません。Web PRを専門に行う会社ではアンケートなどを通じた調査結果を掲載することで情報の引用を促します。例えば,これからクリスマスシーズンに突入しますが「○○をクリスマスプレゼントに貰ったら嬉しいですか?」というようなアンケートを行い,アンケート結果をトピックに含める事で商品によってはかなりPRに適した記事を作ることが可能です。
引用
次に重要な要素はLinkability(リンカビリティ:リンクされる可能性)です。せっかくのコンテンツが外部からリンクされても,紹介されなければ情報は広がりません。参照される事を考えた上でトピックに独自のURLを与えてレイアウトを最適化します。ユーザージェネレーテッドコンテンツを参照元として,辿り着いたページに必要な情報が全てまとまっている必要があります。
ユーザーに引用を促すためには以下のような施策が有効です。
- ソーシャルメディアに対応する(Twitterやdel.icio.us等へリンクするボタンの設置)
- メールでトピック内容を送信する機能を設置する
- 動画プレーヤーに<embed>タグを設定する
- 画像素材や文章の転載,引用が可能な事を明記する
タイトル
最も重要な要素はタイトルです。Webでリンクは主にタイトルと短いコメント,またはタイトルのみで共有・閲覧されます。タイトルだけで興味を引くことができなければ,せっかく広まった情報が見られず,自己増殖的な広がりは期待できません。一文を見ただけで必ずその先を見てみたくなるようなタイトルをつけるように心がけましょう。
マスメディアの影響力の減少によって,Webを通じたPRはますます企業のマーケティングで重要な要素になっていきます。様々な広告活動から最大限の効果を得るためにもPRをWebへとシフトさせる事が迫られています。ブランディングや販売,顧客管理など,様々な活動が今後もWebへとシフトしていきますが,まずは一番Webとの親和性の高いPRから始めるべきだと思います。
次回は,Webブランディングに必要なコンテンツについて説明します。
WEB DESIGN WORKSHOP「正しいウェブデザイン」
- 第21回 PR through the web「Webを通じたPR」
- 第20回 Sales Contents「セールスコンテンツ」
- 第19回 Synchronizing with Points of Sales「実店舗との連動」
- 弟18回 Usability: Matching User Needs and Business Needs「ユーザビリティ:ビジネスニーズとユーザーニーズのマッチング」
- 第17回 Mail Marketing「メールマーケティング」
- 第16回 Buzz Marketing through CRM「CRMを通じたバズ・マーケティング」
- 第15回 Choosing the right Web Designer, Web Director「正しいWEBデザイナー,WEBディレクターの選び方」
- 第14回 Social Web Applications「コンテンツのソーシャル化」
- 第13回 CAMPAIGN PLANNING「キャンペーンプランニング」
- 第12回 User Segmentation and Direct Approach「ユーザーのセグメンテーションとダイレクトアプローチ」
- 2011年10月第3週号 1位は,いますぐ使えるCSS3テクニック集,気になるネタは,アップル,Siriの日本語版を2012年に提供開始する予定
- 2011年10月第2週号 1位は,テクスチャをWebデザインに使う理由と方法,気になるネタは,新「iPod nano」発売—時計機能「クロックフェイス」が魅力
- 第67回 みんなのビジネスオンライン,Kerning.js,The 9/11 Tapes
- 2011年10月第1週号 1位は,レスポンシブWebデザインのショーケース,気になるネタは,アマゾン,タブレット「Kindle Fire」を発表
- 2011年9月第4週号 1位は,仕事に役立つjQueryプラグインの実装方法,気になるネタは,Facebook,タイムラインを発表

