圏外からのWeb未来観測

第1回頓智・CEO 井口尊仁

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【写真提供:頓智・】

「哲人CEO」―エキゾチックな風貌でモバイルインターネットの未来像を語る頓智・⁠トンチドット)の井口尊仁CEOに、そんな印象を受けました。しかし、その原点には意外に泥臭い話が…。

(撮影:平野正樹)

Macを没収されたCOBOLプログラマ時代

中島:セカイカメラは、2009 Crunchies Awards[1]に選出されるなど、海外からも高く評価されているユニークなプロダクトだと思いますが、日本で突然変異的にこういうものが飛び出してきたことに驚きました。そこでまず、井口さんの個人史というか、これまでどんな分野で活躍されていたのかについて、お聞きしたいのですが。

井口:最初はCOBOL で金融系オンラインシステムの開発をしていました。

中島:そうなんですか、それは意外ですね。

井口:私はコードを書くことが大好きですぐに書いてしまうんですが、そこは1月計算であまり早めに終わると困る世界でした。2時間の仕事を2ヶ月の仕事にして、2ヶ月分のお金をもらえるようにしないといけない。

中島:ああ、そういう雰囲気はよくわかります。

頓智・CEOの井口尊仁 氏
頓智・CEOの井口尊仁 氏

井口:プログラムを書いちゃいけないことがつらくなってきたんで、Macを買って、寮で夜通し自分のプログラムを書いてました。HyperCard[2]とか大好きで、気付いたら、ずっと何か発明してるんですね。P2Pのアバターチャットとか、俳句ジェネレータとか、いろんなものを書いてました。ところが、寮にいる時間は本来プライベートな時間だと思うんですが、それが見つかって会社に怒られてしまいました。違うプリンシプルに則っているコードの体系とかシステムの体系にいるってことが、集団組織としては許容できないわけです。それで結局、⁠革命思想にとらわれているコミュニスト(共産主義者⁠⁠」ってことにされてしまい、会社から一式剥奪されてしまいました。

中島:Macを取り上げられちゃんたんですか。

井口:ええ。

中島:個人の持ち物を取り上げるっていうのは滅茶苦茶だと思うんですが、その文化的ギャップみたいなものはよくわかるような気がします。私もCOBOL プログラマで大手ベンダー寄りの世界にいました、というか今でもそういう部分もあるので。

井口:クリエィティブであることが許されない世界で、これは大きな挫折でした。

中島:なるほど。

井口:その次は、とにかくクリエイティブでいても怒られない社会に身を投じようと思って、マルチメディアとかゲームとかHyperCardとかそういうことができる会社を選びました。そこでは、デジタルコミックのプラットフォームを作って世界的に展開しようと思ってやってたんですけど、途中で中断になってしまいました。最終的には会社の予算が尽きちゃったわけですよ。そこは、ソフトウェアにおけるクリエイティビティの重要性をよく理解していて、クリエイティブなアイデアやプランに対してちゃんとお金を出すところでした。中身とか採算に関してはどうのこうの細かくチェックしないんですよ。その結果傾いたのかもしれないんですけど。

中島:うん、そこが難しいところですね。

セカイカメラは頓智・が開発したiPhone用AR(Augmented Reality)アプリケーション。カメラで写す目の前の光景に、ユーザが投稿した「エアタグ」が重なって表示される(写真提供:頓智・)
セカイカメラは頓智・が開発したiPhone用AR(Augmented Reality)アプリケーション。カメラで写す目の前の光景に、ユーザが投稿した「エアタグ」が重なって表示される(写真提供:頓智・)

ブログ的システムを独自開発したが早過ぎて理解されない

井口:それで、お金を引き寄せて人を集めて、それをどう世の中に伝えてくかってことを含めてエンジニアリングなんだと思うようになって、そこからは、自分にとってごく自然なこととして、起業して自分の会社をやるという方向にいきました。頓智・の前に、デジタオっていう会社を約10年やってたんですけど、1998年創業で、2001年の段階でブログとソーシャルネットと広告のオークションマーケットのシステムを完成させて、しかもモバイルでも動いていた。

中島:2001年にですか。それは凄いですね。

井口:ところが、それは早過ぎたんですね。理解されないというより馬鹿にされるという感じでたいへんでした。そのころはブログっていう言葉もなかったし、個人の日記をビジネスの対象にしようっていうのは相当クレイジーだったんですよ。プレゼンテーションをしても、⁠言ってることがまったくわからない。個人が個人のコンテンツをジェネレートする社会にどんな未来があるのか。そんなものは2ちゃんねるの便所の落書きと変わらない」―Web 2.0の到来を誰も予想できない。認められないっていうか、馬鹿にされてました。早過ぎるんですよ。セカイカメラももしかすると(笑⁠⁠。

中島:それはたいへんだったと思いますが、ちょっと耳が痛い話です。というのは、私はそのころ、そういうアイデアを却下する側に回ったという苦い経験があります。あるプロジェクトを継続するか中断するかという状態で、部下がブログのようなアイデアを出してきたんですね。それに対して「おまえ何を考えてるんだ、個人の日記が―」とまさに同じことを言って却下してしまいました。

井口:そういう変化は突然変異で発生するもので、計画的にはできない部分がありますからね。

透明な革命が起こっている

井口:私は実は「アンカテ」のファンなんです。今日の対談も楽しみにしていました。

中島:それはありがとうございます。

井口:「Web の革命は複利でやってくる」注3というようなフレーズが印象に残っているのですが、おっしゃるように、今は革命が透明化してると思うんです。Googleが何かをやると、地球のどこかで何万人という人が職を失う。そういう暴力的革命が世界中で起こっているのにもかかわらず、実際に人が死んだり倒れたりということはあまりない。そして、そういう現象がカオティックに(数学的なモデル化ができない複雑な連鎖の中で)起こるから、北米で起こったことが北米でなくまったく違うところに波及する。ドミノの倒れ方が見えない。そこで起こっている創造的破壊というべき変革が透明化しちゃてる。不可視になっていて、あまりにも凄い速度でしかも物理的現象を伴わない形で進行しているんで、革命的状況が見えない。これはどう伝えたらいいんですかね。我々の仕事の中では、そういう「透明な革命としてのインターネット」っていうような話を、インベスターやパートナーに説明して理解してもらう必要があります。これはなかなかたいへんです。それは我々だけの問題じゃないと思うんですよ。日本の企業も政府も、今進行している不可視の革命に、あまりにも無防備無関心で、非常に危機感を感じます。

中島:それはまったく同感です。

井口氏と聞き手である中島(essa)のツーショット
井口氏と聞き手である中島(essa)のツーショット

ある日「降ってきた」セカイカメラのビジョン

中島:そもそもセカイカメラを作ろうとか会社を興そうというきっかけは何だったんでしょうか。

井口:今やってることは僕にとっては呼吸することみたいに自然なことで、自然なことだけにかえって説明が難しいことなんです。ちょっと長い話になりますけど、いいでしょうか。

中島:もちろん、そこはじっくりお聞きしたいです。

井口:僕は哲学が大好きでかつプログラミングが大好きなんです。人文科学が統合的に人間の創造性を喚起すべきだし、それがどんどん歴史を作っていくべきなんだと痛感します。コードを書くことと哲学を学ぶ、哲学的思念を広げることが同一義だった、プログラムのコードを通じて世界を表現することと、哲学者が世界を書物のように語る、その行為は表裏一体、同一の行為だと思っていました。哲学者のライプニッツが、⁠世界は記述し得るし演算し得る」と言っていますが、書かれてそこに焼きつけられた言葉で世界を語るって、もうその時点で死んでるわけじゃないですか。ロジックっていうのはいくらでもシミュレーション、再組み換えできるし、シムシティみたいにあるゆるものは常に動いて、変転しています。それを書き残してプリントした段階でそれはもう死んじゃっている。ハイパーテキスト、ダイナミックなテキストの世界こそが、人間の思念や思考において、より自然だし当たり前なんだ。そんなことをずっと考えていたのが、あるとき、突然スパークしたんですね。ある日、バイクで気分転換に走ってくるかと思って寮のドアを開けたときにですね、頭の中でスイッチがカチッと入った。本当にカチッと音がしたような気がするんですけど、世界中がすべてコードで書き得るってことに気づいたわけですよ。瞬間的になんか悟ったようなそういう経験があって。セカイカメラって、見たまんまで、かざしたときに、この人はどういう人なのか、この会社はどういう会社なのか、この商品はどういう商品なのか、この店がどういう店だっていうことがパっと見てわかる。それはもともと自分の哲学体験っていうか、プログラムコードで世界はすべて書き得るという直感に非常に正直に結び付いてまして、というと変ですかね。

中島:それは現在のセカイカメラというより、専用デバイスになった究極のセカイカメラをイメージするとわかりますね。モックアップを作られたという話を読んだんですが、見せていただけないでしょうか。

井口:ああ、それはこれです(写真参照⁠⁠。これで人にタギングしたりとか、物体にタギングしたりとか、建物にタギングしたりとか、すごく自然でしょ。有機ELは基本的に発光体が透明なんですよね。今のセカイカメラはカメラでキャプチャしたものをビデオにアウトプットしてるわけです。これは無駄でしょ。だって見えてるものを出すって変じゃないですか。電力の無駄使いで意味がない。

セカイカメラ専用機のモックアップ
セカイカメラ専用機のモックアップ

中島:すばらしいですね。これ見たかったんですよ。記事で読んで、今日行ったら絶対見せてもらおうと思ってて。

ミュージックデバイスのモックアップ
ミュージックデバイスのモックアップ

井口:あとこれは、モックアップを作ったときの切れ端で作ったんですが、音楽データをエアタグで配信しておくと、空間の中に音楽を置いておける。それをピックアップして、このデバイスにコピーすれば、空間から音楽をデリバリーしてデバイスで聴くことができる。空間そのものがデリバリーのチャンネルになります。スターバックスでコーヒーを飲んでて、ふとシャーロック・ホームズを読みたいなと思ったときに、そこにバーチャルな書棚があれば、そこでホームズを読むこともできるじゃないですか。それはインターネットを通じてホームズを買うっていうのとは違う体験なんです。ARAugmented RealityってUI として有望で、自然にマッシュアップできるわけですよ。そこに紐づいている情報をただ見ることで、マッシュアップできる。僕等の場合は特にゲーム性とか、ソーシャルゲーム的な特性を通じて、人がその空間を楽しむ。それから、その中にボット的な仮想生命体を導入して現実空間にもっとこう、ライブ感っていうか、そこに息づいてるっていう感じをもっと与えたい。透明なデバイスでかざしたとき、そこにあるものが持っているURI をすべてタップ可能にするわけです。僕はそれをクリッカブルワールドっていう言い方をしてるんですけども。

中島:クリッカブルワールド! それがセカイカメラの原点であると同時に未来像なんですね。

モックアップを眼の前にかざす井口氏
モックアップを眼の前にかざす井口氏

井口:新しいビジョンを提示して、新しい製品を作るべきだってことを言い続ける。そのことだけを自分のミッションにしようと今は思っています。10年自分で会社をやっていて思ったことなんですけれども、僕自身器用貧乏なところがあって、まあプログラムも書けますし会計的なことも、税務の申請なんかも、やろうと思えばできるんですけど、それはうまくないし時間もかかるんですよね。やっぱり得意なことに特化したほうがいい。それを、頓智・をはじめるときにはっきり自覚しました。

中島:なるほど。お話を聞いていて、長い間の紆余曲折がそこに集約されているように感じます。

フランスで評価されたのはオルタナティブであること

中島:ところで、海外での反応はどうですか。

井口:国ごとに特色があります。アメリカでは、まったく情報のない空っぽの入れ物を作っても意味がないじゃないか、という否定的な反応がある一方で、なんか凄い金のにおいがするね、みたいなところもあって、とにかくエコノミーの観点からリアリスティック、プラクティカル(現実的)に見ますね。それと対照的なのがフランスで、パリの元老院を会場としたイベントでプレゼンテーションさせてもらったのですが、かなり評判が良かったです。セカイカメラってCGMConsumer Generated Mediaだから、いろんな人がいろんなことを空間にレイヤのように書き込んでいくじゃないですか。そのときに何が重要かってオルタナティブ[4]なんですよね。特に、オルタナティブが現実空間にどんどん紐づけられるっていうその発想は非常に高く評価したい、と言ってくださるんですよね。それは非常に本質を突いた発言で、オルタナティブを許容するアーキテクチャを褒めてくれる。

中島:アメリカは経済から、フランスは哲学からという違いはあるけど、どちらも我々が生きているこの社会と技術をつなげて考えるんですね。やっぱり、そこは日本と違うような気がします。

井口:我々が受賞したCrunchiesというのも、ノミネートされている企業がマイケル・アーリントン[5]色なんですよね。まあそれは、どんなアワードでもそうかもしれないけど。同じ西海岸の中に、マイケル・アーリントンが何万人もいるわけではなくて、いろんなパースペクティブの人がひしめきあってるわけですよね。

中島:ブログを書いて反応を見たりしてて思うんですが、正解を性急に知りたがる人って多いような気がします。GoogleならGoogleをどう見るのが正解か、Appleをどう見るのが正解か、正解以外は読みたくない。

井口:それはよくわかります。アレント読めって言いたいですよね(笑⁠⁠。

中島:政治哲学者のハンナ・アレント[6]ですね。私はアレントの『人間の条件』注7はブログ論だと思ってます。難しい本なんだけど、そう読むと妙にスッキリ読めちゃいます。

井口:あーなるほどね。

中島:すべての人は対等で、相互作用の中でその人が誰であるかを明らかにするという、アレント独特の「活動(アクション⁠⁠」という用語がありますが、あれなんか、リンクとトラックバックのことを言ってると思うと、難しい文章がスラスラ頭に入ってくる。

井口:アレントの師匠のハイデッカー[8]は、人間関係ってリラティブ(相互的)で、お互いの相互利用のネットワークの相関図でしか社会は提示し得ない、ということを言っていて、これはまさにマッシュアップですよ。お互いがリラティブに協調して動くっていう、社会論っていうか人間存在の基盤としてマッシュアップ。

中島:哲学者って難しいことを考えてたんじゃなくて、シンプルなことを考えていたけど、それを語る言葉がなかったから難しい本になっちゃったんじゃないか。彼らの哲学の用語を、今あるテクノロジで実現したもの、トラックバックとかマッシュアップとかセカイカメラに置き換えていったら、すごくわかりやすい簡単な文章になるのかもしれませんね。

井口:そうですよね、本当にそう思いますよ。

全方位困ることから生まれるクリエイティビティ

中島:それで、フランスで哲学的な観点から評価されるのも、井口さんが自分に「降ってきた」アイデアを長い時間かけて大事に育てたことが重要なポイントだと思います。本来、それは誰にでもあるものだと思うのですが、そういうことが許容されない日本の風土の中で、どうやってそういうものを育てたのか、何かヒントがあれば。

井口:頓智・ってもともと悩んで考えた会社名なんですが、もともとの言葉の意味は「急場の機転」なんですよ。すごく窮して困った場面で繰り出す、非常に機知に富んだアイデアのことです。これってものすごく困らないと発動しない。困るってすごく重要です。実際、セカイカメラやってると常に難題があるわけですよ。高速に立ち上げ、ジオロケーションからデータを取りつつ、それをソーシャルグラフにつなげていく、クラウドなスケールするしくみって、どう考えても無理難題だらけなんですよね。今のテクノロジで挑戦するのはクレイジーと言ってもいいくらい。でもね、それがそもそもラッキーなわけですよ。非常にありがたい状況なんですよね。みなさんはどうなんでしょう。あまり困ってないのかな。

中島:そういう全方位から困る状況に陥る前にうまく逃げちゃう人が多いんじゃないですかね。全部ガードして特定のここだけ困るっていう状況を作って、それを「困る」と呼んでる人が多いような感じ。

井口:我々はいつも全方位困っています。100個の問題に対して別々に100個考えるのでは追いつかなくて、すごくいい一個の回答ですべての問題が解消するような、そういうエレガントな解答を出さないと自分たちがすごく困るという状況の中にいます。TechCrunch50[9]への最初のチャレンジのときもそうでしたし、製品発表に行くときでもそうでしたし、今でもまさにそういう状態なんですけど、ちょっとごめん待ってみたいなことがまずだいたいできない。その場で解決するしかないんですよね。エアタグというアイデアは、ベーシックなところではすごくシンプルなもので、緯度経度をURLとみなしてそこにWebのインフォメーション、URI をあてはめようというそれだけなんですよ。そういうのがいいと思うんですよ。Twitterのタイムラインなんてまさにそうですよね。表計算もそうですよね。あれはすごい発明だと思うんですけど。HyperCardもそうですよね。あれなんかも非常にシンプルで、カードをつないでクリックすれば飛ぶ。それでMYST[10]とかいろんなアプリケーションが出ていて。そういうことをしたいと思っています。そういう意味で、クリエイティブに困るのはすごくいいことなんですよ。

中島:それとそういうときに、降ってくるビジョンとかアイデアは、個人のものじゃなくて世界のコモンズ(共有地)だと思うんです。

井口:ああなるほど、いいことをおっしゃいますね。

中島:みんな自分の頭の中に降ってきたものをもっと大事にしてほしいなと思います。自分の頭の中にあるもの、自分の頭の中に降ってきたものは使っちゃいけないんだと限定しちゃってる人が多い。そういうものを無視して、すでにある道を行かなきゃいけないと。だから、つまらない狭いところでつぶしあいになってしまう。

井口:先日、息子が中学校に入るので説明会を聞きにいったら、携帯や電子辞書は原則持ち込み不可、つまり、iPhoneもiPadも学校に持っていけないんですよ。中学校、高校って一番脳が柔軟で発達段階にある連中がiPhoneとiPadに触れられないっていうのは、それはほんとうに困ったもんだなと思ったんでけどね。

中島:それは問題ですね。でも、井口さんのような少年がいたら、そういう子は必ず、抜け出す道を見つけてしまうような気もしますが。

井口:ハハハ、まあね。転んで血みどろにもなりつつね。止められないから。

中島:ある部分はほっときゃいいや、ということは言えるけど、日本の国力とかGDPとか、平均値の話をした場合には、確かに非常に深刻な問題ですね。

井口:やっぱり、個人の個別の努力ということ以外に、インフラ全体、プラットフォーム全体がいい方向に向かっていかないと。たとえば、1日24時間Webプログラミングしていい環境と、寝る前の数時間だけ個人の努力でなんとか触れるのとでは圧倒的に違うじゃないですか。それと、なんかやろうっていったときに絶対にお金がかかるしチームも必要だから、そこに対してお金を投下する側の判断能力とかも含めて考えると、社会全体のプラットフォーム性が高くないと困りますね。

インタビューを終えて

記事中に出てくる「モックアップ」はただの透明なプラスティックなのですが、それを井口さんが手に持つと、魔法のように、そこに確かにエアタグがあって空間から音楽やファイルを取り出せるような感覚を持ちました。それは私だけでなく、その場にいる全員が感じたことでした。そこまでビジョンを結晶化させるのはたいへんなことですから、私とはスタート地点が違うのだろうと思ったらそうでもなくて、むしろ泥臭い苦労話がいろいろ出てきたことに驚きました。Webの世界は動きが速く情報の流通も速いので、逆に自分の原点とか「降ってきたもの」を大事にするのが必要なのだと思いました。

頓智・のオフィス風景
頓智・のオフィス風景

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