Webデザイン業界の三位一体モデル

第5回クルーソー 相川知輝(後編) ブログパーツ、Twitter、Ustreamを取り入れた企業サイトの仕掛け

5回目は、クルーソー 相川知輝さんにお話を伺った。今回はその後編です。

コアなファンにきちんと情報提供ができれば、そこからこんなに広まる

新野:

担当された一連のMAZDAのプロジェクトについて聞かせてください。

相川:

まず、マツダさんとのお付き合いなんですけれど、2006年にカットオーバーした全面リニューアルプロジェクトから関らせて頂いています。その時はプロデューサーとしてお仕事をさせて頂いていたのですが、リニューアル前の分析フェーズで色々な弱い部分が見えてきていて、まずはサイトの「基盤整備」をする、ことがリニューアルの目的の一つでした。

リニューアルで概ね目的は達成できたと考えており、2007年度はもっとユーザーさんとコミュニケーションをとろう、という方向性を探っていまして、その一環として、様々なプロジェクトを担当させて頂きました。

新野:

なるほど。そういう経緯があったのですね。

相川:

その一つとして、まずはロータリーエンジン40周年記念サイトの構築をお手伝いして、ロータリーエンジンのブログパーツを作りました。

ブログパーツ上で、ロータリーエンジンに対してのみんなの想いやコメントを読み書きできるというものです。そういうのってありそうで、無かったんですよね。

新野:

数字的にも、効果は高かったんですか?

相川:

ええ、公開直後は特に大きな告知はしてないにも関わらず、かなりのアクセスがありました。2007年の5月に公開したのですが、今でもまだアクセスは結構あります。

実は、このブログパーツ企画は提案のときにチーム内でも反対意見もあったんですよ。というのも、従来の広告って企業からメッセージを発信して、消費者はそれを受け取るっていう図式だったでしょう。

だから、一般のひとからコメントをもらってそれを出すなんてことは広告とは言えないのではないかと。

新野:

ああ、内部的にそういう話になることってありますよね。従来の広告のスタイルの型には無かったんでしょうね。

相川:

でも、ぼくは40周年という記念のときに、みんなで想いを語ってもらうことは問題ないと思ったんです。

ロータリーエンジンが好きな人たちが、盛り上がっているという状況をつくりだせれば、あまりファンじゃなかった人たちにもその熱意が伝わるんじゃないかと。

結果としては新車導入時のアクセス数にひけを取らないくらいの数字も出ていますし、企業ウェブ・グランプリのマーケティング、キャンペーン&インタラクション部門賞も頂くことができ、いい結果が残せたと言えると思います。

新野さん
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新野:

ロータリーエンジンというものが培ってきた、ブランドの資産をうまく活かした取り組みですね。ユーザーが欲しがっていたんでしょうね。ロータリーエンジンを話題に盛り上がれる場所を。

新野:

最近話題のストリーミングサービス、USTREAM を使った取り組みもされていましたよね。

相川:

東京モーターショーのライブ中継東京オートサロンの中継など、これまで3回やりました。やるたびに、クオリティも上がってきて反響もなかなかですよ。予想以上に数字も順調です。

新野:

Appleのスティーブジョブズのスピーチなども、ライブではないですが、スピーチ終了後にすぐにムービーが公開されて、ファンの間であっというまに広まったりしますし、日本でもソフトバンクモバイルの孫社長の新製品発表とかもライブ中継したりしてますよね。

ライブならではの価値とか、見たくなる需要って結構ありそうですね。

相川:

この企画も、まずはコアなファンをターゲットにしていて、その人たちが盛り上がってくれるようなことをやりたいというのも一つの理由なんです。

それが広がるきっかけになってくれればいいなと。

実際に、当初予定していなかった追加の放送を、当日の番組内で「今日の夕方に、もう一回放送します。」とアナウンスをしたら、それを見ていてくれたユーザーさんたちがmixiなどで広めてくれて、夕方の回も結構な数が集まったということがありました。

コアなファンの方々にきちんと情報提供ができれば、そこからこんなに広まるんだ、と驚きました。

新野:

どちらも、取り組みとしても新しくて、結果の数字も出ているというのがすごいですね。

Twitterもいち早く取り入れてましたよね。

相川:

先ほどのブログパーツに寄せられたコメントをTwitterでも公開しようという企画です。

Twitterに関して は、取り組みの目新しさから記事として取り上げてもらったメディアが結構あったので、PR効果としては高かったですね。

新野:

なるほど。Twitterユーザーは、まだWebのリテラシーの高い人たちが中心ですから、そういう人たちへMAZDAは面白いことを取り組む企業だと知ってもらう効果もあったでしょうね。

新野:

今日伺ったお話を振り返ると、ずっと新しいことに興味をもっていち早く取り組まれてきたように思いますが、今後取り組んで行きたいことなどを聞かせてください。

相川:

そうですねー、新しいモノがでてきたら乗っかろうという性格なので、既に思っていることがあったらプロジェクトとして仕込み中でしょうから、いまは言えないでしょうね(笑⁠⁠。

新サービスとかそういうのとは別のことでいうと、僕自身どういう役割を果たして行こうかっていうことは、ちょっと悩んでいた時期がありました。

いろんな役割をこなしてきたけれど、果たして自分は何者なのかと。

最近おぼろげながら、見えてきたのはプロジェクトガバナンス的な視点で立ち回ることができるかということです。広い領域で仕事をしているからこそ、色々なプロジェクトをまわせると思っていますし、実はそれこそが代理店に求められている機能なのだな、と思い始めています。

僕がそこの役割を果たしていないとしたら、代理店を通さずに制作会社さんに直発注したほうがいいですから。 そこの問題意識を持ちながら、自分に発注頂ける理由、というのを忘れずに取り組んでいきたいなと思っています。

新野:

以前、この企画でNEC宣伝部の吉見さんのお話を伺った時は、同じようなことを「代理店が広告主のパートナーとして全体をコーディネートする」っていうような言い方をされていましたね。

僕も同じような所を目指していて、仕事のスタイルの違いはあれど、相川さんの考えにはすごく共感を持てます。

先日、広告に携わるブロガーが100人くらい集まる機会がありましたよね。相川さんも参加されていましたが。

相川:

ええ、すごい人数でしたよね。

新野:

数年前だったら、広告系のブログなんて数えるほどだったのに、いまでは僕らの世代よりも若い人たちもどんどん入ってきてますから。

あの会合でも、広告という枠組みがWebの登場によって刺激的に変わってきているという時代の勢いみたいなのを感じました。自分たちの役割はまだ手探りな部分はありますが、私たちがそのスタンダードを手探りながらも作っていけるといいですよね。会社は違えど、同じ業界の同士として僕もがんばりますよ。

今日は、企業サイトの現場の生の声が聞けて刺激的でした。

ありがとうございました。

左:相川さん、右:新野さん
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