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第35回You Choose 2010 - Political Toolkit by YouTube、 yubichiz(ゆびちず)、PostEgram

4年に一度の祭典であるサッカーのワールドカップが開幕し、眠気との闘いに全力で立ち向かっている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

さらに進む、インターネットの活用

You Choose 2010 - Political Toolkit by YouTube

Googleが公開した選挙キャンペーン用のツールキット「You Choose 2010 - Political Toolkit by YouTube」のウェブサイトです。

図1 YouTubeを選挙活動に活用するためのツールキット
図1 YouTubeを選挙活動に活用するためのツールキット

アメリカで2010年11月に行われる中間選挙向けに提供されたこのツールは、⁠Politician Channel」⁠候補者のYouTubeチャンネルを作り動画を公開できる⁠⁠、⁠Moderator」⁠有権者からのコメントや質問によるオンラインディスカッションが可能⁠⁠、⁠Insight」⁠公開された動画についてのアクセス解析ツール)の3つを無料で提供しています。

さらに有料サービスとして、プロモーションビデオを検索結果に表示する機能や、動画上から寄付や候補者のウェブサイトへと誘導する機能などを提供するなど、2008年の大統領選挙以降、インターネットの活用が進むアメリカの選挙活動の一端が伺えます。

選挙活動で若者を動かせるか

日本では、候補者が有権者へとメッセージを伝える手段として、街頭や選挙カーを利用した演説が主流ですが、それだけで候補者の思いすべてを有権者に伝えることはできません。特に高齢者と比較すると若者の投票率が圧倒的に低い日本明るい選挙推進委員会のサイト「年齢別投票率の推移」を参照してください)では、投票率の伸びしろのある若者をターゲットにした活動をより活発化させる必要があるでしょう。

2010年5月のイギリス総選挙について、イギリスの調査会社YouGovが行った調査では、インターネットでの選挙活動が若者に対して効果的であるという結果(⁠⁠投票に政治的内容のオンラインキャンペーンが影響したか」の問いに、調査対象の有権者約2,300人のうち10人に4人以上が「ある程度」影響があったと回答。特に18歳から24歳の若い世代では約30%に影響があった)も出てきており、候補者のインターネットの活用が、若者の票を掘り起こす方法の一つであることは間違いないでしょう。

すでに日本でも、インターネットでの選挙活動を有効に活用するためのサービスを提供する企業が登場しています。インターネット上での選挙活動の善し悪しが、将来、候補者に大きな影響を与える可能性は否定できません。インターネットを上手に活用し、選挙活動をより有利に展開する候補者が日本に登場するのも、そう遠い話ではないのかもしれません。

“最適化”が生む気持ちよさ

「yubichiz」(ゆびちず)(※iPad以外では利用不可)

Yahoo! JAPANの実験的なサービスを提供するYahoo!ラボから生まれた、iPad専用の地図ウェブアプリケーション「yubichiz(ゆびちず⁠⁠」です。

図2 iPad専用として開発された「yubichiz(ゆびちず⁠⁠」
図2 iPad専用として開発された「yubichiz(ゆびちず)」

「yubichiz」は、iPadの持つ大きな画面とマルチタッチスクリーンで使うために、機能やデザインを新たに設計し直しているため、iPadの特長である指を使った操作(ドラッグによるスクロール、ピンチイン・ピンチアウトによる地図の拡大縮小など)で、地図を自由に操作できます。

動画1 動画では「yubichiz」の機能とその操作方法が紹介されている

また、文字入力なしで画面内のショップなどを検索できる「ジャンル検索」や、地図上のテキストをタップすることで詳細情報が入手できる「テキストタップ」の機能も良くできています。中でも地図の道路上を指でなぞり、線を描くことで道沿いの店舗の検索や距離の測定ができる「道沿い検索」は、iPadの操作方法とマッチしており、非常に使いやすいものとなっています。

より良いユーザーの満足を目指して

先日発売されたばかりのiPad専用に開発されたウェブサービスはまだ数が少なく、現状ではPC用のウェブサービスをそのまま利用すること多いです。しかし、そのどれもがiPad上のスムーズな操作と満足感を約束してくれるわけではありません。

筆者も日ごろ利用しているいくつかのウェブサービスをiPad上で試してみましたが、PCのブラウザ上で「マウスとキーボードを使う」という操作では感じたことのない、iPadの特徴である「指で直接触る」という⁠感覚⁠になじまないものが多数存在しました。

図3 PC版の「Yahoo!地図」もiPadで利用できるが、指で操作しにくい部分も多い
図3 PC版の「Yahoo!地図」もiPadで利用できるが、指で操作しにくい部分も多い

「指と地図がダイレクトにつながる気持ちの良い操作感」が開発コンセプトの「yubichiz」のように、ユーザーにより満足できる体験を提供できるよう、新たな操作感を持つデバイスに最適化されたウェブサービスがこれから次々と登場してくるでしょう。そこから今までの⁠PCによる体験⁠という枠を飛び出し、ユーザーにこれからの⁠感動と満足⁠を与えるものが生まれることを今後期待したいと思います。

誰もがコミュニケーションできる仕組み

PostEgram Connects Familes On and Offline

家でインターネットへの接続を行わない65才以上の大人、アクセス制限の厳しい海外の兵役に就いている人々の為に設計されたウェブサービス『PostEgram』です。

図4 
図4 

『PostEgram』はFacebookのアプリケーションを使って、手紙を送る相手と誰のニュースと写真を載せるかを指定するだけで、自動的に雑誌形式の手紙を作成して、相手に配達してくれるサービスです。

図5 どのような手紙が相手に送られるのかは、サンプルで確認できる
図5 どのような手紙が相手に送られるのかは、サンプルで確認できる

手紙の配達回数(月に1~4回、料金は3.75~4.99USドル)も選択でき、実際にどのような手紙が配達されるかは、ウェブサイトに用意されたサンプルで確認できます。

コミュニケーションの輪を広げる

SNSやBlog、Twitterなど、インターネットを通じたコミュニケーションは、もはや日々の生活に欠かせないものとなりつつあります。その反面、誰もがこうしたコミュニケーションを活用できているわけではありません。

動画2 ⁠PostEgram』の仕組みを説明した動画も用意されている

『PostEgram』にはサービスの内容を説明した動画も用意されており、⁠離れて暮らしている家族の近況を高齢者に知らせる」という例を取り上げています。最近話題となったiPadを高齢者が上手に使いこなしている例などもありますが、パソコンなどの情報機器に関する知識や操作方法など、コミュニケーションに必要なスキルの習得は容易ではありません。

そう考えると、⁠手紙⁠という誰もが利用できるツールを使うことで、情報機器を「使える人」「使えない人」がコミュニケーションすることを実現したこのサービスは、とても面白いと思います。今後、インターネットを使ったコミュニケーションの輪から外れている人たちを、もう一度コミュニケーションの場へと引き込み、より深いコミュニケーションを促進する事例が増えてくるのかもしれません。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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