いま、見ておきたいウェブサイト

第53回The Internet Explorer 6 Countdown、UNIQLINK、NIKE - RUN Fwd:

大量の花粉襲来で、天気が良ければイライラし、崩れればニコニコしている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

IE6に、さよならを

The Internet Explorer 6 Countdown

Microsoftが開発したブラウザ「Internet Explorer 6(以後IE6⁠⁠」の使用停止とアップグレードを呼び掛けるウェブサイト『The Internet Explorer 6 Countdown』です。

図1 IE6のブラウザシェアを1%以下にすることを目的とした『The Internet Explorer 6 Countdown』
図1 IE6のブラウザシェアを1%以下にすることを目的とした『The Internet Explorer 6 Countdown』

MicrosoftのInternet Explorerマーケティング・ディレクターであるRoger Capriotti氏は、この『The Internet Explorer 6 Countdown』開設の目的は、⁠IE6の世界でのウェブブラウザシェアを1%以下にすること(シェアが1%以下ならウェブ開発者がサポートを考慮しなくて済む可能性が高まるという理由⁠⁠」であるとBlogで述べています。

図2 世界43か国のIE6のシェアが画面に表示される
図2 世界43か国のIE6のシェアが画面に表示される

ウェブサイトでは、アメリカの調査会社Net Applicationsの最新データに基づいて、世界43か国と世界全体でのIE6のシェアが毎月更新され、掲載されます。現在、ウェブサイトでは2011年2月のデータが表示されており、世界でのIE6のシェアは12.0%で、日本でも10.3%のシェアがあることがわかります。

図3 目的達成のためのさまざまな方法も説明している
図3 目的達成のためのさまざまな方法も説明している

この取り組みを知らせるバナーやTwitterへのツイート、友人にIE6を使わせないようにする方法や、企業ユーザーが最新のブラウザへとアップグレードさせた事例紹介へのリンクなども用意されています。

ようやく動き始めたMicrosoft

Microsoftから、Internet Explorer 7、Internet Explorer 8という後継のブラウザが発表されているにもかかわらず、2001年8月から提供されたIE6を、現在も利用している企業は少なくありません。とはいえ、現在では互換性やセキュリティの問題も多く、Microsoft自身もIE6を腐った牛乳などと表現し、最新のブラウザへのアップグレードを強く勧めています。また、日本でも内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)が、各府省庁に対して「IE6からIE8への移行を推奨する」指示を行っています。

ウェブサイトの制作側では、レイアウトやAjaxを使った機能、CSSの表現などで他のブラウザと同様の実装を行う場合、大幅な手間とコストを発生させることから、以前からさまざまなIE6の撲滅運動企業による反IE6キャンペーンや、ウェブデザイン会社によるIE6の葬儀など)が行われています。ウェブサービスの大手も、昨年からIE6のサポートを終了する方向へと向かっており、Google(Google DocsとGoogle SitesのIE6に対するサポートを廃止)やYouTube、日本でもYahoo! Japanがサポートを昨年末に終了したことが話題となりました。

IE6誕生から約10年が経過した現在、Google Chrome、Firefox、Safariなどのウェブブラウザが次々と登場して、圧倒的だったInternet Explorerのシェアも、今や60%を割込み、さらに減少しつつあります。以前は新しいバージョンに更新するかは、PCを管理している人が決めることと述べていたMicrosoft自身が、遅きに失する感じがあるものの、⁠世界のIE6のブラウザシェアを1%以下にする」という明確な目標をもって活動を始めたことには、さまざまな意味が含まれていると思います。今後、このウェブサイトがどのような影響を与えるのか、非常に興味深いところです。

使っている私が、答えます

UNIQLINK

UNIQLOの商品に対する質問に、実際のユーザーの回答が得られるという、ユーザー参加型のQ&Aサイト『UNIQLINK』です。

図4 商品を使用しているユーザーが質問に回答する『UNIQLINK』
図4 商品を使用しているユーザーが質問に回答する『UNIQLINK』

UNIQLOの各商品について聞きたい事がある場合、ユーザーはウェブサイトから質問を投稿します。その質問について、実際に商品を購入したユーザーが回答し、その結果が次々とウェブサイトに3D表現で表示されていきます。

図5 商品に対する回答が、次々と表示される
図5 商品に対する回答が、次々と表示される

ウェブサイトに掲載されていく意見は、実際に購入して使っているユーザーからの返答のため、購入を検討している人にとって、非常に有用な情報となります。現在は「STYLE UP INNER」⁠Wireless Bra」の2商品が対象となっています。

図6 質問に関する回答を、まとめて閲覧できる
図6 質問に関する回答を、まとめて閲覧できる

ウェブサイトや店頭などで、商品の外観などは確認できますが、⁠実際に着てみてどうなのか」という評価の部分は確認できません。そうした購入前の不安感や疑問点を解消でき、そのまま購入も可能となっている仕組みがとても素晴らしいウェブサイトです。

個性的な変化を続けるQ&Aサイト

最近では、ある事件で「Yahoo!知恵袋」が注目されましたが、日本には2000年頃から、多くのQ&Aサイト(⁠⁠OKWave」⁠教えて!goo」⁠人力検索はてな」など)が誕生しています。

図7 回答の質の高さが特徴のQ&Aサイト『Quora』
図7 回答の質の高さが特徴のQ&Aサイト『Quora』

最近誕生した海外のQ&Aサイトで、注目を集めているのはQuoraでしょう。専門分野の知識を持った人々が"実名で参加"しているため、回答の質と信頼性が非常に高いのが特徴です。すでに多額の運営資金を調達するなど、今後さらに拡大しそうな勢いを持っています。

日本でも"回答の精度の高さ"を目指したUNCERQareal⁠、"Twitterと連動して素早く回答が得られる"Q&AなうのようなQ&Aサイトが始まっています。個性的なQ&Aサイトが広く普及することで、何が生まれてくるのか。筆者自身も自分の情報収集や検索がどう変化していくのかを含めて、注目していきたいと思っています。

たすきをつなぐ、見えないチカラ

NIKE - RUN Fwd:

NIKEが2011年1月4日から2月28日まで開催した、オンライン上における世界規模の駅伝レース「NIKE - RUN Fwd:」のウェブサイトです。

図8 NIKEによるオンライン上の駅伝レース『NIKE - RUN Fwd:』
図8 NIKEによるオンライン上の駅伝レース『NIKE - RUN Fwd:』
credits:Wieden+Kennedy TokyoRoot CommunicationsDELTRO INC.

"THE GLOBAL EKIDEN RELAY"という副題が記されたこのウェブサイトでは、ユーザーがiPhoneアプリ「Nike+ GPS」⁠または「Nike+」搭載プロダクト)を使用して、まず3km以上を走って、メールで次の走者を指名します。指名された走者は72時間以内に3km以上走り、48時間以内に次の走者を指名します…これを繰り返しながら、最終日までに、何人のランナーにたすきをつなぐことができるのかを競いました。

図9 各走者によってつながれたがルートが、地図上に描かれる
図9 各走者によってつながれたがルートが、地図上に描かれる

レースへの参加を呼びかけるためにTwitter、Facebook、mixiなどのSNSとの連携が用意されたほか、Google Mapを使用した地図上に走者が走ったルートが描かれるなど、駅伝の"たすきをつなぐ"という行為を意識した仕組みと表現が素晴らしいウェブサイトです。

『NIKE - RUN Fwd:』の仕組みを説明したチュートリアルムービー

走者を"駅伝ランナー"にさせる仕組み

「Nike+」ランナーのペースや走行距離などのデータを管理できるウェブサービスなどを利用することで、自分の走りに関するデータを簡単に管理できるようになってきました。とはいえ、ひとりで"走る"という行為を日々繰り返していくことは、なかなか大変なことではないでしょうか。

このため『NIKE - RUN Fwd:』では、モチベーションを維持させるために、駅伝ランナーと同じ気持ちにさせるさまざまな仕組みが用意されています。メールで走者を依頼された場合、走るか断るかは自らの意思で決めることとなり、依頼を受けた場合は「必ず走りきらなければ」という責任感が生まれます。また、送信される走者の依頼メールには、今までの経緯を表現した映像へのリンクが添付されており、これを見ることで「たすきを途切れさせてはいけない」という心理が働き、走ることへのモチベーションがより高まります。

さらに提供しているiPhoneアプリ「Nike+ GPS」では、走者が走り始めたことを自動でFacebookに通知します。それを知った誰かが「Like」ボタンを押せば、走者に励ましの歓声が聞こえるようになっており、チーム全体で走者のモチベーションを向上させる機能も用意されています。

「他人の期待に応え、つながった思いを胸に走り、次につないでいく」という、駅伝ランナーを疑似体験させる仕掛けが良く考えられているこのウェブサイト。NIKEは以前から"駅伝の持つ魅力"を伝えるためのプロモーションを多数行っていますが、⁠NIKE - RUN Fwd:』は、その同じ文脈を持ったプロモーションを積み重ねることから誕生した、集大成とも言うべき、素晴らしい事例ではないかと思います。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧