いま、見ておきたいウェブサイト

第79回Perfume official global website、TheCodePlayer、Project Re: Brief by Google

次第に強まってくる日差しと、桜の開花予想にワクワクしている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

世界に向けた、ポリゴンダンス

Perfume official global website

今年に入って海外進出を視野に入れた活動をスタートさせた、女性3人組テクノポップユニットPerfumeのグローバルサイト『Perfume official global website』です。

図1 Perfumeのグローバルサイト『Perfume official global website』
図1 Perfumeのグローバルサイト『Perfume official global website』
credit:Rhizomatiks

ウェブサイトでは、画面右上にある2種類(⁠⁠SOUND REACT」⁠MAX POLYGON⁠⁠)のつまみを変化させてモデルの形状を変化させたり、マウスのスクロールホイールを使ったズームイン/ズームアウトを行ったりしながら、オリジナルサウンドに合わせて踊るポリゴンモデルのダンスを楽しめます。

図2 オリジナルサウンドに合わせ、ポリゴンモデルが生々しくダンスする
図2 オリジナルサウンドに合わせ、ポリゴンモデルが生々しくダンスする

データのオープン化は、創作活動を変えるか

この『Perfume official global website』でも使用されている、Perfumeのメンバーのダンスを記録した、約1分間のモーションキャプチャデータとサウンドが、2012年3月30日にダウンロード可能となりました。この試みは『Perfume official global website』のプロジェクト第一弾として行われたもので、モーションキャプチャデータは、Perfume global site project #001を通じて、GitHub経由で配布されます。

図3 モーションキャプチャデータが提供される『Perfume global site project #001』
図3 モーションキャプチャデータが提供される『Perfume global site project #001』

自由に利用できる形で、こうしたデータが提供されることは非常に珍しいことです。数年前、Googleとコラボレーションして、イギリスのロックバンドRadioheadが、PVに使われた3Dのマッピングデータとツールのソースコードを公開した"House of Cards"の事例がありますが、その後、こうしたデータをオープン化する動きは、あまり聞こえてきません。

図4 Twitterでのハッシュタグ(#prfm_global_site)の検索結果
図4 Twitterでのハッシュタグ(#prfm_global_site)の検索結果

今回、非常に人気の高いアーティストのデータであることや、使用制限が緩いこともあり、Twitterのハッシュタグ(#prfm_global_site)検索で多くの作品を閲覧できるなど、この試みが非常に多くの人の"創作意欲を刺激した"ことがよくわかります。こうしたデータのオープン化で、多種多様の創作が繰り返され、より広いコンテンツの拡散を狙う試みが増えていくのかどうか、注目したいと思います。

完成までの流れ、全部見せます

TheCodePlayer

コードが記述される様子を見ながら、HTML5、CSS3、JavaScriptなどの技術が学べるウェブサイト、⁠TheCodePlayer』です。

図5 さまざまなフロントエンド技術が学べる『TheCodePlayer』
図5 さまざまなフロントエンド技術が学べる『TheCodePlayer』
credit:Ruby On Tails

学びたいレッスンを選択後、⁠Play Walkthrough」をクリックすると、画面の左側で自動的にコードの記述が始まります。画面の右側では、実際にどのような結果になるのかが、コードの記述が進行するとともに、変化しながら表示されていきます。

図6 画面を左右に分割して、レッスンが行われる
図6 画面を左右に分割して、レッスンが行われる

コードとその結果が1ページで確認できたり、HTML上のコメントを利用して内容を説明したり、コード完成までの再生スピードを変更できたりと、さまざまな工夫が感じられる、非常に面白いウェブサイトです。

ユーザーを引き込む"人間臭さ"

『TheCodePlayer』のレッスン内では、コードの打ち間違いや修正が発生したり、コードの記述速度がまちまちだったりと、人間がその場で考えながらコードを打っているような表現が、そのまま使われています。

チュートリアルサイトでは、動画などのレッスン内容がきっちり編集されている場合が多いのですが、時としてその間違いのなさが、単調で面白みのない雰囲気を生み出し、学習する者を退屈させる場合もあります。

『TheCodePlayer』では、人間がその場でコードを打ち込んでいるような臨場感と、⁠そういうことも起こるよね」という共感を創り出すために、本来、修正すべき部分を残したレッスン内容の編集を行っています。

こうした"人間臭さ"をさりげなく加え、ユーザーを注目させ、コンテンツの持つ世界観に引き込ませようとするアイデアが秀逸なこのウェブサイト。⁠洗練されたウェブサイトが最善の結果を生む」わけではないことを証明するこうした事例を体験するたびに、改めて、ウェブサイトの奥深さを感じます。

最新テクノロジーで、広告をリメイク

Home | Project Re: Brief by Google

図7 4つのブランドの広告キャンペーンをリメイクする『Project Re: Brief 』
図7 4つのブランドの広告キャンペーンをリメイクする『Project Re: Brief 』

1960年代から70年代にかけて展開された、アメリカを代表する広告キャンペーンを新たにリメイクするというGoogleの実験的プロジェクト、⁠Project Re: Brief』です。

図8 最新のテクノロジーで、過去のキャンペーンをリメイクしていく
図8 最新のテクノロジーで、過去のキャンペーンをリメイクしていく

Googleが、清涼飲料水のCoca-Cola、自動車のVolvo、制酸鎮痛剤のAlka-Seltzer、レンタカーのAvisというグローバルブランドと提携して、それぞれのブランドが過去に展開した有名なキャンペーン(Coca-Colaの「Hilltop⁠⁠、Volvoの「Drive it like you hate it⁠⁠、Alka-Seltzerの「I can't believe I ate the whole thing⁠⁠、Avisの「We try harder」の4つ)を、最新のテクノロジーを活用して一新させるというものです。

図9 制作されたコンテンツやコンセプト、完成までの映像も提供されている
図9 制作されたコンテンツやコンセプト、完成までの映像も提供されている

現在は、Coca-Colaの「Hilltop」とVolvoの「Drive it like you hate it」の2つの事例が公開されています。ウェブサイトでは、それぞれの事例について、過去のキャンペーン広告とそのコンセプト、リメイクされた広告のコンセプトと完成までのドキュメンタリー映像、使用された技術とその仕組みが紹介されています。

本物のコンセプトと、創造性の伝承

1971年に放送された、Coca-Colaの「Hilltop」

Coca-Colaの事例では、"人々をつなぐ"というコンセプトから「I'd like to buy the world a Coke.(世界中の人々にコーラをおごりたい⁠⁠」というコーラスを生み出した「Hilltop」を元に、インターネットを通じて、実際に世界中の人々にコーラをおごるという、新しい仕組みを作り出しています。

図10 新しい広告の仕組みを説明した図(⁠⁠誰かにコーラを送る」というバナーをクリックすると、世界中に設置された自動販売機を通じて、誰かにコーラが1本プレゼントされる。コーラをプレゼントされた人は、自動販売機から送り主にメッセージや動画を送ることができ、メッセージはGoogle Translateによって、自動的に翻訳される)
図10 新しい広告の仕組みを説明した図(「誰かにコーラを送る」というバナーをクリックすると、世界中に設置された自動販売機を通じて、誰かにコーラが1本プレゼントされる。コーラをプレゼントされた人は、自動販売機から送り主にメッセージや動画を送ることができ、メッセージはGoogle Translateによって、自動的に翻訳される)
Coca-Colaの「Hilltop」がリメイクされるまでを追ったドキュメンタリー映像

ドキュメンタリー映像では、⁠検索とメールぐらいしかやらない」と語っていた、元アートディレクターのHarvey Gaborが、Googleの若い社員と討論を重ねながら、現代のテクノロジーとアイデアを結びつけ、再度、コカコーラに対してオリエンテーションをする姿が描かれます。すでに一線から退いているHarvey Gaborが、現代のテクノロジーを理解していく姿には熱いものを感じます。

それ以上に、過去に生み出したコンセプトが、現代でも通用する"本当に優れたもの=本物"であることを証明したこと、また、現代のテクノロジーでコンセプトを新しく形にしていく作業によって、クリエイティビティの伝承が行われることを考えると、非常に素晴らしい、意味のあるプロジェクトであると思います。温故知新とでもいうべき、新たなコンテンツがどう生み出されるのか、今後公開される2つの事例を楽しみにしたいと思います。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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