いま,見ておきたいウェブサイト

第83回 blacknegative,Robert Moog's 78th Birthday(Google Doogle),TYPECACHE.COM

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日ごとに上昇する気温に,夏ではなくジメジメとした梅雨を想像してしまう今日このごろ,皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた,素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

技術を忘れる美しさ

blacknegative

ディレクター,ウェブデザイナー/デベロッパー,モーションデザイナー,サウンドデザイナーなどで構成された,フランスのクリエイティブ・プロダクション「blacknegative」のウェブサイトです。

図1 クリエイティブ・プロダクション「blacknegative」のウェブサイト

図1 クリエイティブ・プロダクション「blacknegative」のウェブサイト

credits:blacknegative,Dilshan ArukattiSylvain Tran

「blacknegative」の制作したコンテンツが,最新情報などを交えながら,紹介されていくウェブサイトです。ユーザーが左右へのドラッグ動作を行うことで,次々と場面が切り替わっていきます。

図2 ドラッグすることで,次々と場面が切り替わっていく

図2 ドラッグすることで,次々と場面が切り替わっていく

映像を使った背景や斜めに切られたひし形のグリッド,奥行きを感じる表現など,統一感のある美意識を感じられるウェブサイトです。

表現の拡張は何が生み出すのか

初めてこのウェブサイトを訪れた時には,ウェブサイト全体の表現方法に驚きを感じながらも,個人的には「何を使って制作されているのか」という,技術的な面からの視点を自分の中に持つことはありませんでした。

図3 HTML5周辺の技術が発展することで,生み出される表現もある

図3 HTML5周辺の技術が発展することで,生み出される表現もある

Flashが使われたウェブサイトでは,新たな技術の追加がウェブサイトの新たな表現を生み出すという,"技術による表現の拡張"が際立っていました。現在,こうした表現の拡張は,特にHTML5の周辺技術で顕著です。

『blacknegative』の表現は,数年前のFlashで可能なレベルに追いついたに過ぎません。しかし,ウェブサイトの完成度を見てみれば,もはや使用されている技術やそのレベルの高さだけで,ウェブサイトの良し悪しが決まる時代ではないことを,誰もがより明確に感じるのではないでしょうか。

現代によみがえる,伝説の名機

Robert Moog's 78th Birthday(Google Doogle)

「Moog Synthesizer(モーグ・シンセサイザー)⁠の開発者として有名な,アメリカの電子工学博士Robert Moogの生誕78周年を記念したGoogle Doogle『Robert Moog's 78th Birthday』です。

図4 Robert Moogの生誕78周年で公開された『Robert Moog's 78th Birthday』

図4 Robert Moogの生誕78周年で公開された『Robert Moog's 78th Birthday』

Moog博士が制作した歴史的な名機「Mini Moog」そっくりのシンセサイザーは,マウスだけでなく,キーボードを利用して演奏できます。本格的なシンセサイザーとしての機能も備えており,ミキサー,オシレーター,フィルター,エンベロープの各セクションのつまみを動かして音色も変えられます。

図5 ⁠Robert Moog's 78th Birthday』は,現在もGoogle Doogleのアーカイブページで楽しめる

図5 『Robert Moog's 78th Birthday』は,現在もGoogle Doogleのアーカイブページで楽しめる

最大同時発音数が1であるシンセサイザーの機能を補うため,右側には多重録音が可能な,4トラックのテープレコーダーが用意されています。録音したデータはGoogle+やURLを利用して共有できます。

自然に広がるコンテンツの条件

『Robert Moog's 78th Birthday』は,触って楽しむだけでなく,"道具(ツール)"として余すところなく利用することで,ユーザー自身が新たな楽しみ方を発見したり,新たなコンテンツを産み出したりすることを可能にしています。

『Robert Moog's 78th Birthday』を楽しむユーザー動画のひとつ,⁠Google Moogでドラクエの序曲弾いてみた」⁠

公開された直後から,楽曲の演奏や使い方の説明などを行った動画が,YouTubeに次々とアップロードされています。単なる"ロゴ"ではなく,道具としての機能も含め,細部までしっかりと考えて制作されていることが,こうしたコンテンツからの広がりを生んでいると思います。

個人や企業によるソーシャルメディアの利用拡大によって,制作側でも"コンテンツを拡散するためのしくみ作り"により重点が置かれる時代となっていますが,制作するコンテンツ自体が"広がりを持つ価値あるもの"なのか,よく考える必要があるのではないかと改めて感じた事例でもありました。

著者プロフィール

Lançamento(ランサメント)

国内外のウェブサイトを日々紹介する Blog『Lançamento』を運営する,自称“フリーランスという名の無職”。目指すは“エクスペリエンスデザイナー”(O'REILLY『Web情報アーキテクチャ』11ページ参照)。2008年の“ジェフの奇跡的な残留”を目の前で見たサッカー好き。

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