いま、見ておきたいウェブサイト

第117回Music Timeline、Build with Chrome、Jelly

インフルエンザ、ノロウィルス、そして花粉と、忙しい毎日の中で"見えない何か"を常に意識せざるを得ない今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

音楽ジャンルの"栄枯盛衰"

Music Timeline

Googleの研究部門「Google Research」によって公開された、音楽年表『Music Timeline』です。

図1 ⁠Google Play Music」のデータを元に作られた『Music Timeline』
図1 「Google Play Music」のデータを元に作られた『Music Timeline』

Googleのデジタルコンテンツ配信サービスである「Google Play Music」のユーザーライブラリに保存された、1950年以降の楽曲データを元に、音楽ジャンルの移り変わりを年代ごとの面グラフで表しています。積み重なったデータ層の厚さは、その年代における音楽ジャンルの人気に対応しており、⁠Jazz」⁠Pop」⁠Rock」⁠Hip-Hop」といった音楽が、1950年以降の各年代でどのくらいの影響を持っていたかが良くわかります。

図2 各ジャンルの代表的なアーティストの情報も確認できる
図2 各ジャンルの代表的なアーティストの情報も確認できる

各ジャンルのデータ層をクリックすると、さらに細分化されたサブジャンルと代表的なアーティストのデータが表示されます。⁠Google Play Music」が提供されている地域では、表示されているアルバムのジャケットをクリックすると、そのアルバムの販売ページへと移動します(日本国内では非対応⁠⁠。

データの可視化には、D3.jsClosure Toolsが使用されており、使用されるデータはその年のアルバム発売数で正規化してあります。

大規模サービスのデータが生み出すもの

『Music Timeline』は、⁠Google Play Music」のユーザーライブラリを利用して作られたコンテンツです。公開が可能なサービスのデータを利用するだけで、非常に興味深いコンテンツをユーザーに提供できることを証明した事例でしょう。

2014年1月現在、⁠Google Play Music」は、世界22カ国で提供されています。こうした大規模なサービスを運営することで得られるデータを活用できれば、サービス自体の向上だけでなく、企業やサービス、ユーザーのこれからを、より明確に予測できる可能性も高くなります。

当然、今回の『Music Timeline』には関係のない、⁠Google Play Music」の非公開データも大量に存在しているはずです。そうしたデータには、サービスを運営している企業だけが知り得る、さまざまな課題や問題を解決するヒントが眠っていることでしょう。もしかすると、今後生み出される新しいウェブサービスのアイデアは、こうした大量のデータのなかから生まれてくるのかもしれません。

新しく生まれ変わったLEGOの世界

Build with Chrome

リニューアルされ、全世界のGoogle Mapへと対応した『Build with Chrome』です。

図3 機能を追加してリニューアルされた『Build with Chrome』
図3 機能を追加してリニューアルされた『Build with Chrome』
credit:North Kingdom

ウェブサイトでは、好きな色とさまざまな形のブロックを自由に選んで配置しながら、レゴブロックで作品が作れます。制作した作品は、GoogleMap上に自由に配置し、公開できます(作品の公開にはGoogle+アカウントが必要⁠⁠。

図4 初めて体験するユーザーでも楽しめるコンテンツも用意された
図4 初めて体験するユーザーでも楽しめるコンテンツも用意された

また、レゴブロックを使った高度な作品の作り方が順を追って学べる「Build Academy」も用意されており、レゴブロックを初めて体験するユーザーにも楽しめる内容となっています。

『Build with Chrome』の概要を説明した動画

予告通り実現されたリニューアル

筆者はこのウェブサイトにアクセスした時、⁠どこかで見たような…」と感じたのですが、⁠Build with Chrome』は、この連載でも2012年に紹介した事例のリニューアル版です。以前はGoogle Australia / New Zealandによる「LEGO®ブロック」50周年記念の実験的ウェブサイトでした。

図5 以前の紹介時には、あくまで"実験的"なコンテンツだった『Build with Chrome』
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今回は、全世界のGoogle Mapに対応するだけでなく、2014年2月に公開の映画THE LEGO® MOVIEに登場するキャラクターや建物を使ったチュートリアルや、WebGLをサポートするタブレットやスマートフォンで遊べるなど、ユーザーが非常に参加しやすい機能が追加されています。

『Build with Chrome』の全世界版への対応は、以前から発表されてはいましたが、こうして実際に再構築される例はそう多くありません。商品などのプロモーションで利用されるウェブサイトも多く、その性格上、どうしても短期間の運用となる例が多いのが現実ですが、じっくりと考えられ、丁寧かつ継続的なアップデートを繰り返しながら、熟成されていくウェブサイトの事例が増えていくことを期待したいと思います。

"画像"は、一見にしかず

Jelly

Twitterの共同創業者であるBiz Stoneなどが立ち上げたことで注目されている、画像を利用する新しいSNSサービス「Jelly」です。

図6 画像を使ったSNSサービス「Jelly」
図6 画像を使ったSNSサービス「Jelly」

Jelly Fish(くらげ)が由来であるというこのサービスは、スマートフォンのカメラで撮影した画像(または、Googleの画像検索で選択した画像)と短い文章を投稿することで、ソーシャルネットワークを利用して、友人に質問ができるというモバイルアプリです。質問するだけでなく、自らが相手の質問に答えることもでき、相手が回答に満足すれば「ありがとうカード」が送られてきます。

『Jelly』のサービス内容を説明したプロモーション動画

Introducing Jelly from Jelly Industries, Inc. on Vimeo.

満足できる"制限つき"のコミュニケーション

もはや誰もが使っているモバイル端末を中心に、気軽にコミュニケーションができるサービスが人気です。そうしたサービスの代表格は、何と言っても「Twitter」でしょう。"140文字という文字の制限"が、逆に手軽なコミュニケーションを促進して、高い人気を誇っています。

図7 大流行しているモバイルアプリの「Vine」⁠上)「Snapchat」⁠下)
図7 大流行しているモバイルアプリの「Vine」(上)や「Snapchat」(下)

こうした中で、昨年からVineSnapchatなどのモバイルアプリが人気を集めています。Twitterと同様、どちらのサービスも"一度しか閲覧できない画像"、"最長で6秒という再生時間"という制限がありながら、親しい人たちとのコミュニケーションが楽しめるのが特徴です。特に「Snapchat」「アメリカの10代ではFacebookの人気を超えている」とも言われています。

「jelly」も、"回答しない(できない)質問が閲覧できなくなる"という制限がありますが、インターネットを通じて、見知らぬ人からの回答を待つのではなく、実際にユーザーに関係のある知り合いからの回答を重視しています。こうした方法であれば、より親身で、詳細かつ有用な情報が得られる可能性も非常に高くなります。

その広大さから、以前は"サーフィンする"と例えられたインターネット。自由度の高さもインターネットの大きな魅力ですが、より満足できるコミュニケーションをユーザーが求める中で、こうした親しい人たちだけを囲む手軽なサービスが人気を集めているのは、非常に興味深い流れだと思います。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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