いま、見ておきたいウェブサイト

第118回FACT 15TH ANNIVERSARY WEB SITE、10 Things、Hanyu Falls Twice, but Still Wins Gold

感動を与えられたソチオリンピックの期間が終了し、⁠次はブラジルでのワールドカップだな」とワクワクし始めた今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

映像とリンクする、大胆な演出

FACT 15TH ANNIVERSARY WEB SITE

「FACT」の結成15周年を記念した特設サイト、⁠FACT 15TH ANNIVERSARY WEB SITE』です。

図1 結成15周年を記念した「FACT」の特設サイト、⁠FACT 15TH ANNIVERSARY WEB SITE』
図1 結成15周年を記念した「FACT」の特設サイト、『FACT 15TH ANNIVERSARY WEB SITE』

画面中央に用意された「THE WEB MUSIC VIDEO "DISCLOSURE"」を再生すると、やがて、映像内の照明の明滅と背景がリンクし、大胆に視点が変わり始めて…迫力ある音楽とともに展開される演出のうまさに、気が付けば最後まで映像に引き込まれてしまうという、非常に素晴らしいウェブサイトです。

図2 大胆な視覚効果と演出が素晴らしく、映像に集中してしまう
図2 大胆な視覚効果と演出が素晴らしく、映像に集中してしまう

音楽と出会う"機会を増やす"ということ

恥ずかしながら、筆者は今回のウェブサイトを見ることで、⁠FACT」の名前と楽曲を初めて知りました。最近は、こうしたプロモーション系のウェブサイトやYouTubeのような動画サイト、Amazon.comなどのECサイトのレコメンドなどから、新たなアーティストや楽曲を知ることが非常に多くなっています。

また最近の例では、コーヒーショップを訪れた際に、たまたまラジオから流れていた曲に興味を持ち、その後、ラジオ局の番組ウェブサイトを検索して訪れるという流れを経て、アーティストと楽曲名を知ることとなりました。こうした自身の現状を考えると、以前のようにテレビ番組やCMからだけでなく、それ以外の手段でユーザーが新しく音楽と接する機会を増やしていかなければ、アーティストや楽曲を知ってもらえないのではと感じています。

今回の『FACT 15TH ANNIVERSARY WEB SITE』は、PCサイトを中心としたプロモーションとなっていますが、音楽に接する機会をより多く作るには、特に個人単位での普及が広がっているモバイル端末への対応が必要不可欠になっていくでしょう。こうした流れの中で、現在のアーティストのプロモーション方法がどう変わるのか、またモバイル環境でどんなプロモーションが行われるのかを楽しみにしていきたいと思います。

一週間に10個だけで十分

10 Things - Email Every Friday

クリイティエージェンシーのYour Majestyによる、厳選された話題をメール経由で配信するサービス、⁠10 Things - Email Every Friday』です。

図3 Your Majestyによる情報配信サービス、⁠10things』
図3 Your Majestyによる情報配信サービス、『10things』
credit:Your Majesty Co.

"10 Things"という名の通り、毎週金曜日にYour Majestyの中で話題となったコンテンツを10個、メールで送信してくれるというサービスです。届けられたメールには、その週に話題となったさまざまなジャンルのコンテンツが並び、メールの最後には、著名人の名言が添えられています。

図4 メールには、その週に話題となったコンテンツが10個並ぶ
図4 メールには、その週に話題となったコンテンツが10個並ぶ

情報を遮断する難しさ

日々、大量に発信されている情報から、自分に必要な情報を探し出すのには、とにかく時間が必要です。こうした時間を短縮するため、自分が求める情報を自動的に提供してくれるウェブサービスが増えてきました。こうしたサービスを利用すれば、欲しかった情報が手に入りやすくなるだけでなく、情報を探す時間も大幅に短縮できるというわけです。

とはいえ、利用によって「情報入手に関する問題がすべてが解決する」というわけではありません。継続的に送られてくる記事のすべてに目を通せるのか。また、得た情報の消費だけで精一杯となり、考えをまとめたり、アイデアを生み出したりといったステップまで到達できず、情報収集から始まる本来の目的が達成できないことも増えています。

こうした中で、⁠一週間に10記事だけをレコメンドする」という、情報量を制限(凝縮)した『10things』の方法は非常におもしろいと思います。日本では"断捨離"がブームとなりましたが、大量の情報から自分の求める情報を探しだすのではなく、まず必要のない情報を生活から潔く遮断するという情報収集の方法が、今後、注目を集めるかもしれません。

スローモーションを超えた、わかりやすさ

Hanyu Falls Twice, but Still Wins Gold - NYTimes.com

The New York Timesによる、ソチオリンピックのフィギュアスケート男子フリーの演技を解説した『Hanyu Falls Twice, but Still Wins Gold』です。

図5 フィギュアスケート男子フリーの演技を解説した『Hanyu Falls Twice, but Still Wins Gold』
図5 フィギュアスケート男子フリーの演技を解説した『Hanyu Falls Twice, but Still Wins Gold』

ウェブサイトでは、一定方向から撮影された画像を順番に並べながら、フィギュアスケート男子フリーの演技の得点ポイントとなるジャンプ部分が解説されています。ジャンプの飛び始めから着地までの選手の動きがよくわかるため、スローモーションを多用した映像を使っても、なかなか理解することが難しいジャンプの技術がよくわかる内容となっています。

素晴らしさを伝える、"視点"の重要性

"4年に一度の大会"ということや、大会出場までの選手の軌跡を継続して取材していることも多いため、マスコミなどに登場するオリンピック関連のコンテンツは、競技よりも人間としての部分に重きをおいたものになりがちです。

図6 The New York Timesの特設ページ『Sochi 2014: Interactive Stories』
図6 The New York Timesの特設ページ『Sochi 2014: Interactive Stories』

The New York Timesでは、今回のソチオリンピック開催に合わせ、インタラクティブな特設ページSochi 2014: Interactive Storiesを公開しています。

図7 競技やスポーツの高度な技術にフォーカスしたコンテンツが並ぶ(画像:スノーボードなどの高度な回転技を紹介する『Tricks⁠⁠)
図7 競技やスポーツの高度な技術にフォーカスしたコンテンツが並ぶ(画像:スノーボードなどの高度な回転技を紹介する『Tricks』)

紹介した『Hanyu Falls Twice, but Still Wins Gold』以外にも、さまざまな視点からオリンピックの各競技を捉えたコンテンツが並んでいますが、そのほとんどは、競技の内容やアスリートの持つ高度な技術にフォーカスしたものです。こうしたコンテンツは、どんなスポーツでも視点を変えれば、スポーツ自体の素晴らしさ、そして、競技を行うアスリートの凄さを、十分に伝えられることを示しています。

人間を中心に据えた"感動的なオリンピックのストーリー"も悪いものではありませんが、純粋にスポーツやアスリートの凄さが伝えられるこうしたコンテンツも同じように登場することで、より深いスポーツへの理解と興味が進むことを期待したいと思います。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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