いま、見ておきたいウェブサイト

第138回日産:#猫バンバンプロジェクト、NHK VR NEWS、Amazon Lumberyard

厳しい寒さも次第に緩み、いよいよ心地よく落ち着いた日中が過ごせるかと思っていたところ、毎年恒例のムズムズ・ズルズルの魔の手が忍び寄る気配を感じ始めた今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

ドライバーも、猫も安心できる社会への第一歩

日産:#猫バンバンプロジェクト 猫も人も安心して過ごせる社会のために。

日産自動車による特設サイト「日産:#猫バンバンプロジェクト 猫も人も安心して過ごせる社会のために。」です。

図1 日産自動車による「猫バンバン」というアクションを普及させるための特設サイト
図1 日産自動車による「猫バンバン」というアクションを普及させるための特設サイト

タイトルにもある「猫バンバン」とは、ドライバーが乗車前にボンネットを軽く叩き、車体を揺らす動作のことです。冬になると、ネコが寒さをしのぐために、自動車のボンネット内やタイヤの隙間などに入り込むため、そのままエンジンをかけて思わぬ事故が多発します。この「猫バンバン」を行うことで、自動車に入り込んでしまったネコを自動車の外に逃がし、事故が起きるのを未然に防ごうというプロジェクトです。

図2 特設サイトでは、ロゴやステッカーのデータも提供されている
図2 特設サイトでは、ロゴやステッカーのデータも提供されている

ウェブサイトでは、⁠のるまえに#猫バンバン」と書かれたマグネットステッカーの配布(現在は終了)や、ロゴ・ステッカーデータも提供されるなど、⁠猫バンバン」というアクションを広める活動を行っています。また、日産自動車の公式TwitterやFacebookといった公式SNSでも、この運動を広める情報発信が行われています。

情報拡散のためのパッケージ作りの重要性

「猫バンバン」という言葉は、以前から様々な団体が使用していました。例えば、JAF(日本自動車連盟)の公式Twitterでは、今から3年前の2013年11月1日に「猫バンバン」を取り上げており、現在までに15,000を超えるリツイートがされています。

これ以外にも、動物病院や猫関連のボランティア団体などが、⁠猫バンバン」という言葉を使用してきました。とはいえ、こうしたSNSやウェブサイトなどの活動を通じて、今回「猫バンバン」を初めて知ったという方も多いのではないでしょうか。

現在、さまざまな情報を拡散するにあたっては、ウェブサイトやSNSを利用することが必要不可欠です。今回、日産自動車は「猫バンバン」という言葉とアクションを知ってもらうため、SNSやウェブサイトというインターネット上の活動だけでなく、実際に活動を行ってもらうドライバーにステッカーを配布したり、印刷可能なステッカーのデータを提供しました。こうした、より多くのドライバーや周囲の人に知ってもらうためのパッケージづくりに注力したことが、プロジェクト成功の原因となっています。

プロジェクトに賛同した方々が撮影した動画を利用して制作された動画

最近では、このプロジェクトに賛同した方々が撮影した動画を使った、プロジェクトの説明動画も公開されました。再生回数もすでに80万回を超え、さらなる広がりを見せています。日産自動車は、今後もウェブサイトや公式SNSから、ドライバーに「猫バンバン」を促すメッセージを継続的に発信していくとのこと。⁠猫バンバン」が、誰もが知っている、あたりまえのアクションとなることを期待しています。

VRが変える、情報の姿

NHK VR NEWS|NHKオンライン

「VR(Virtual Reality:ヴァーチャル・リアリティ⁠⁠」の技術を使って、さまざまなテーマの情報を伝えるNHKオンラインの特設サイト『NHK VR NEWS』です。

図3 ⁠VR」の技術を使っている、NHKオンラインの『NHK VR NEWS』
図3 「VR」の技術を使っている、NHKオンラインの『NHK VR NEWS』

ウェブサイト上に漂う幅広いジャンルの記事を選択すると、360度パノラマ撮影によって制作された動画を使ったコンテンツが再生されます。360度パノラマ撮影された動画は、マウスや画面内のインターフェースを利用して、さまざまな角度から閲覧できます。

図4 様々なテーマの記事を選択すると、360度のパノラマ撮影がされた動画を使ったコンテンツが再生される
図4 様々なテーマの記事を選択すると、360度のパノラマ撮影がされた動画を使ったコンテンツが再生される

2016年は「VR元年」となるか

2016年は、⁠VR元年」などと呼ばれています。⁠Oculus Rift」⁠PlayStation VR」⁠HTC Vive」といった、消費者向けのVRデバイスが次々と販売されることで、VR向けのコンテンツ拡大も見込まれています。すでに海外では、Discovery ChannelによるDiscovery VR⁠、ABC(American Broadcasting Company)によるABC News VRが始まるなど、VRコンテンツの制作も活発になっています。

図5 積極的にVRコンテンツを利用している『ABC News VR』
図5 積極的にVRコンテンツを利用している『ABC News VR』

2月21日にスペイン・バルセロナで開催されたSamsung Electronicsのイベント「Galaxy Unpacked 2016」に登壇したFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOがFacebookに投稿した写真は、VRコンテンツが普及した未来が来ることを予感させるものでした。

図6 Samsungの「Gear VR」を装着した観客のそばを歩いてステージへと向かうFacebookのマーク・ザッカーバーグCEO
図6 Samsungの「Gear VR」を装着した観客のそばを歩いてステージへと向かうFacebookのマーク・ザッカーバーグCEO

ヘッドマウントディスプレイを着用した観衆が、誰ひとりとしてザッカーバーグ氏に気がついていないこの写真は、一見、ゾッとしてしまうような違和感を感じます。ですが、VRが一般的に普及すれば、こうした光景も私たちにとって⁠見慣れた日常⁠に変わるかもしれません。そのスタートとなる、今年のVRに関連する動きに注目です。

ゲーム制作の環境、無料で提供します

Amazon Lumberyard - Free AAA Game Engine

Amazonが発表した、クロスプラットフォーム3Dゲームエンジン「Amazon Lumberyard」のウェブサイトです。

図7 Amazonによる無料の3Dゲームエンジン「Amazon Lumberyard」のウェブサイト
図7 Amazonによる無料の3Dゲームエンジン「Amazon Lumberyard」のウェブサイト

ドイツのCrytek社が開発した「CryEngine」をベースとしたこのゲームエンジンは、高品質の3Dゲーム開発を対象としたマルチプラットフォーム対応エンジンであるにもかかわらず、無料で提供されます。Amazonは、数年前からゲーム制作会社「Double Helix Games」やゲーム映像配信サービス「Twitch」を買収するなど、ゲーム業界に積極的な投資を行い、その影響力を強めてきました。今回、さらにゲームエンジンである「Amazon Lumberyard」が、そのラインナップに加わったことになります。

変貌しつつある、Amazonの姿

無料で提供されているゲームエンジンには、UnityUnreal Engineなど、ゲーム業界で多くの支持を得ているものがすでに存在しています。こうした後発組にとっては非常に厳しい環境の中、Amazonは、なぜゲームエンジンを無償で提供してきたのでしょうか。

Amazonが提供する「Amazon Lumberyard」は、自社で提供しているクラウドコンピューティングサービス「Amazon Web Services」との連携が非常に強力です。今回、⁠Twitch」関連の機能だけでなく、⁠Amazon Lumberyard」専用の「Amazon GameLift」⁠マルチプレイヤーゲームの管理サービス)と呼ばれる「Amazon Web Services」の新サービスも発表してきました。

「Amazon Lumberyard」が対応しているサーバやデータベースは、基本的に「Amazon Web Services」です。現在のゲーム開発においては、こうしたバックエンド側のインフラは必要不可欠であるため、無料のゲームエンジンを使ってもらいながら、⁠Amazon Web Services」の販売を増やそうというAmazonの狙いが見えてきます。

Amazonといえば、⁠Amazon.com」における ⁠EC事業」が有名です。Amazon.comがアメリカ証券取引委員会に提出した2015年の年次報告書では、2015年の「Amazon.com」の全世界での売上額は、1,070億600万ドルですが、営業利益率は2.1%と、薄利多売の事業です。一方、⁠Amazon Web Services事業」の売上高は78億8000万ドルで、前年度の69.7%増、さらに営業利益率は2015年第4四半期には28.6%という、非常に高い数値を達成しています。

図8 高い営業利益率を誇る、Amazonの「Amazon Web Services」
図8 高い営業利益率を誇る、Amazonの「Amazon Web Services」

もちろん、⁠Amazon Web Services事業」の営業利益率が高いとはいえ、世界的な規模で運営されている「EC事業」の収益額と比べれば、まだまだ非常に小さい事業(約7%程度)です。しかし、売上額の伸びや営業利益率の高さを考えると、今後、Amazonの屋台骨を支える中心事業へと育つ可能性は否定できません。

音声認識やドローンを使った配送など、現在も新たな技術・分野に積極的に投資を進めているAmazonですが、⁠EC事業の会社」と言われなくなる日も、そう遠くはないかもしれません。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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