いま,見ておきたいウェブサイト

第160回 Nike Adventure Club,GitHub Sponsors,Runaway Train 25

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いつもの通り道に咲く金木犀の匂いと,朝晩の冷え込みに,秋の到来を感じている今日このごろ,皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた,素晴らしいウェブサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

お好きなNikeのシューズを,好きなだけ

Nike Adventure Club

世界的なスポーツ関連用品メーカーであるNikeが開始した,子ども向けシューズの定期購入サービス「Nike Adventure Club」のウェブサイトです。

図1 Nikeの子ども向けシューズの定期購入サービス「Nike Adventure Club」のウェブサイト

図1 Nikeの子ども向けシューズの定期購入サービス「Nike Adventure Club」のウェブサイト

「Nike Adventure Club」は,靴のサイズが10cmから24cmまでの子供たち,または2歳から10歳までの子供たちに対するサービスで,支払う月額料金に応じて,NikeとConverseのシューズを自由に選んで購入できる仕組みです。料金体系は月額20ドル(90日ごとに1足⁠⁠,月額30ドル(60日ごとに1足⁠⁠,毎月50ドル(毎月1足)の3種類が用意され,選べる靴のタイプも100種類以上用意されています。

また,購入した靴に親が子どもと遊べるゲームなどを紹介する「アクティビティーガイド」が付属されたり,履かなくなった靴を返送するとリサイクルに回されたりする工夫もされています。

子供の靴は,成長に合わせて,次から次へと買い替えが必要です。⁠靴購入のコストを抑えたい」と思う親にとっては,かなり魅力的なサービスと言えるでしょう。また,サービスを提供するNikeにとっても,子供の時から自社の靴に馴染んでもらうことで,将来の顧客となるための接触を増やせるメリットもあります。

事実,Nikeの子供靴の売上は,2018年に11%も成長しています。2017年からテストしてきた「Easy Kicks」と呼ばれる同様のプログラムでは1万人の会員を獲得しており,今回「Nike Adventure Club」へとサービスを統合することで,さらなる子供靴の売上強化を図っています。

サブスクリプションサービスの目指すもの

ソフトウェアやサービスを中心に行われていたサブスクリプションモデルですが,最近では,もともとデジタルではないサービスをサブスクリプション化する事例が増えており,さまざまな業界に広がりを見せています。

世界最大の一般消費財メーカーであるP&Gが始めた,洗濯のサブスクリプションサービスTide Cleanersもその一例です。⁠Tide Cleaners」は,ユーザーがアプリから料金を支払って,洗濯物を指定された店舗やロッカーなどに収納します。回収された洗濯物の洗濯が完了すればアプリに通知が届き,ユーザーは洗濯された服を受け取るという仕組みです。

「Tide Cleaners」のサービス内容を紹介した動画

こうしたサブスクリプションサービスの成功は,⁠いかに顧客を維持できるか⁠にかかっています。企業側は,自社サービスのデジタル化だけでなく,ユーザーのデータ獲得を進めることで,さまざまなオプションや個人データに応じた施策(頻繁にユーザーが利用するサービスの割引など)を行い,ユーザーとの結びつきを深めることで,持続的な顧客の維持を図ろ うとしています。

サブスクリプションサービスの支払い対象も,商品の購入からサービスの利用,物品の消費へと拡大し続けています。進化と変化を続けるサブスクリプションサービスですが,サービスを接点としたユーザーと企業の関係性についても,興味深く見守っていきたいと思います。

力を尽くす者たちに,経済的支援を

GitHub Sponsors · GitHub

オープンソースソフトウェアの作成に携わる開発者を支援できる「GitHub」の新機能,⁠GitHub Sponsors」のウェブサイトです。

図2 オープンソースの開発者に寄付できる「GitHub」の新機能,⁠GitHub Sponsors」のウェブサイト

図2 オープンソースの開発者に寄付できる「GitHub」の新機能,「GitHub Sponsors」のウェブサイト

「GitHub Sponsors」は,⁠GitHub」内からオープンソースの開発者に寄付できる機能です。開発者のプロフィールにある「Sponsor」ボタンから,毎月定期的に寄付する金額を設定できます。寄付を行った支援者には,金額に応じて,開発者からのさまざまなサービスが提供される仕組みです。

図3 毎月寄付する金額を選べる「GitHub Sponsors⁠⁠。支援者には金額に応じて開発者からのサービスが提供される

図3 毎月寄付する金額を選べる「GitHub Sponsors」。支援者には金額に応じて開発者からのサービスが提供される

まだベータ版ということで,一部の開発者にのみ機能が開放されていますが,開始から1年間は,寄付金の支払手数料が無料で,寄付された金額すべてが開発者へと渡されます。

開発者への“明確な報酬”とは何か

開発者にとって,励ましや感謝のコメントが継続的な開発の力となる場合もあるでしょう。ただし個人的には,開発の継続には,開発に対する⁠明確な報酬が得られること⁠が非常に重要だと考えます。

“明確な報酬⁠をどのような形で開発者に届けるのか。過去にもさまざまな方法が試行錯誤されてきました。近年では,継続的に料金を支払うメンバーとなることで特典を得られるといった「メンバーシップ制度」を導入することで,様々なクリエイターが安定的な収入を得るケースも増えてきました。

図4 ⁠Patreon」のウェブサイト。クリエイターへの継続的な支援を行うことで,クリエイターの安定的な活動を支えている

図4 「Patreon」のウェブサイト。クリエイターへの継続的な支援を行うことで,クリエイターの安定的な活動を支えている

「メンバーシップ制度」を導入している代表的サービスの一つが「Patreon」です。⁠GitHub Sponsors」の仕組みと似ていますが,月額の支援によって,クリエイターの収入安定と計画的なビジネスの運営が可能になるというメリットが生まれています。

さらに,導入は容易なものの不安定な広告収入とは異なり,継続的で予測できる収入源が確保できることから,クリエイターが創作活動に安心して打ち込める環境づくりにも一役買っています。

何もないところから,突然,便利なものが生まれてくることはありません。必ず,開発者の存在があり,さらに時間とモノ(開発環境や機材)と人の動きがあることが前提です。⁠明確な報酬⁠という新しい支援の登場によって,開発者が継続的な活動を行うため環境が整い,新たなビジネスだけでなく,さらなるイノベーションへと可能性が広がることを期待したいと思います。

著者プロフィール

Lançamento(ランサメント)

国内外のウェブサイトを日々紹介する Blog『Lançamento』を運営する,自称“フリーランスという名の無職”。目指すは“エクスペリエンスデザイナー”(O'REILLY『Web情報アーキテクチャ』11ページ参照)。2008年の“ジェフの奇跡的な残留”を目の前で見たサッカー好き。