アンケートご協力のお願いgihyo.jpでは,2010年度に向けて豪華プレゼントが当たる読者属性アンケートを実施しております。ご協力ください。

gihyo.jp » WEB+DESIGN STAGE » 連載 » WSEA(Web Site Expert Academia) » 第5回 Webデザインにも「心地良い裏切り」を―non-intentional communication design―(その1)

WSEA(Web Site Expert Academia)

第5回 Webデザインにも「心地良い裏切り」を―non-intentional communication design―(その1)

前号から始まった「Web Site Expert Academia」。2回目の今回は,武蔵野美術大学デザイン情報学科教授の今泉洋氏を対談相手に,ネットサービスのデザインの話から中間ドキュメントの話へと盛り上がりました。

左:関心空間代表取締役 前田邦宏氏。
右:武蔵野美術大学デザイン情報学科教授 今泉洋氏。

左:関心空間代表取締役 前田邦宏氏。右:武蔵野美術大学デザイン情報学科教授 今泉洋氏。

世の中,何がずっと続いていくのか

前田:

僕は一時期法政大でWebデザインを教えていたのですが(※1),今あるWebデザインの技術でなく,10年後も通用するだろうと思える仕事の仕方やモノの見方というものを中心に授業内容を構成しました。なるべくWebの業界だけでなく,他の世界に行っても通用する企画や発想のスキルを向上させようとしていたのですが,今泉先生は「Web」を学生向けにどう教えられているのでしょうか?

今泉:

難しいですよね。Webってものすごい可能性があるんだろうけど,どういうふうに関わるかっていうのが。今の話,Webという前に,教えるということを考えなきゃいけないと思うんです。まず,世の中,何がずっと続いていくのだろう,どういうふうに関係を作っていくべきなんだろうということがベースにある。

うちの学科は1年生のときに「課題発見」という演習をやるんです。新入生を全部集めて,5人一組で会社を作っちゃう。そして,とにかく世の中を見て,問題を見つけて来い,見つけてそれを改善する提案をしなさい,ということをやらせるのね。高校生のときまでは先生が問題を生徒に与えているんだけど,大学に入ったらもうお前らは生徒じゃなくて学生なんだぞ,と。自分で問題を見つけない限り,美大生になった意味がない。とくにデザイナーなんかそうで,他人が作った問題を解いている限りタグ打ち職人で終わっちゃう。クリエイターとして自分でコンテンツを作って成功していくというのは,要は自分で問題を見つけてそれに対するソリューションをデザインすることなんだから,それをテーマにしてグループでやりなさい,っていう授業なんです。うちでは,そういう関係づくりの技能の1つとしてWebを扱っているということになるのかな。

前田:

僕は15年くらい前に,QuickTime 1.0β(※2)とかを見て「ああ,CD-ROMっていう媒体があるんだ」ということで興奮してこの業界に足を踏み入れたんだけれども,いつのまにかCD-ROMが媒体でもなんでもなくて,雑誌の付録みたいなものになってしまって…消えてしまったわけじゃないけど,自分のやった仕事が世の中に残っていない,悔しい感じがあるんですよね。

Webも,10年くらい前に作ったサイトはほとんど消えてなくなっちゃっているんですよね。だから,自分達の仕事が世の中に残って普遍的になることに強い欲求があります。今やっている仕事が,たとえば小さな子どもたちにも説明できて,その子どもが大きくなってもまだあるような…そういう仕事や業界にしたい気持ちがあります。

そういう意味で僕はつながりを作るとか,つながりをデザインをするとかということに長い時間を費やしているので,その仕事のプロになる,もしくはプロを生み出す仕事にも携わりたいなと。それをたまたまこちらの編集長に言ったら,そういうつながりのアカデミズムみたいな対談っておもしろいよねって言って始まったのがこの連載なんです。だから毎回つながりがテーマで,それの授業をいろんな先生とやるっていうコンセプトなんです。

※1
前田氏は2004~2006年まで工学部システムデザイン学科で非常勤講師を行っていた。
※2
Appleの開発した,PCで動画や音声を扱うためのソフトウェア。

情報をプレゼントする

前田:

さっそくなんですけど,昨日今日の話でなくて,20年前,10年前,5年前の自分の中で,そこだけはあまり変わらず今もこだわっている,というような自分だけの普遍的なつながりって何ですか?

今泉:

僕の場合,人とのつながり方でいうと,できれば皆にサービスしたいなっていう気持ち,「心地よい裏切り」的なつながり方ですかね。期待されたとおりのことをやったら誰も振り返ってくれないですけど,「まさかそんなこと…」とか「ちょっと意外だな」という感じの関係がいいですね。でも,それは気持ちの悪いものではなくて,心地の良い発見みたいなもので,そういうものを人にあげることができたら,すごく良いなって思いますね。子どものときに自分でプレゼント作って,あげたらすごく喜ばれたというのがあって,それをずっと続けている感じですかね。話としてかっこ良すぎますか(笑)。

前田:

そもそも今泉先生との出会いは,以前『関心空間』を授業で使ってくれていると聞いて,どんな授業かと思って僕が大学にお伺いしたんですよね。5~6人を集めて,その人がどういうことをされたら喜ぶかを確かめるインタビューをして,それが確認できたら,『関心空間』の中からいろんなキーワードを見つけてきて,編集してA4サイズ2枚くらいのペーパーにする。そして,その情報を提供したらそれで喜んだかどうか確認してくださいっていうワークショップをやられていて,これはすごく『関心空間』の真髄をつかんだ授業だと感銘を受けました。

つまり我々は無報酬で人につながりを与えることを好んで行うんですよ,「ありがとう」って笑顔が返ってくることを期待して。これはお金が返ってくることとは全然別質なんです。情報をプレゼントする行為を良しとする世界なんです。このことを「クチコミ情報を投稿したらポイントが返ってくるサービス」と言ったらなんか重要なことが欠けてしまう気がするのです。これはすごく言葉にしにくい。

今泉:

贈与の話ですよね。

前田:

たとえば,ソーシャルウェアのひとつで『gifttagging.com』というサービスがあって,なんとなくそういう予兆を感じるんですよ。物をあげるプロセスの前後に発生する気持ちや動機をシェアするサービスというか…購買の背景にあるデータのやり取りを視覚化するビジネスみたいなもの。

たとえば,『関心空間』でも「クリスマスに何をあげますか?」というような企画をやっていて,その喜ばせ方のうまい人っているんですよね。「相手の欲しいものはわかっているんだけれども,想像の範囲を超えて,意外さも演出したい」というような技術があって。そういう技術を持った人が『関心空間』にはすごく多いなと。そういうユーザの能力を活かしたサービスが他にもあるんじゃないかとは思っています。

(つづく)

著者プロフィール

今泉洋(いまいずみひろし)

1951年生まれ。武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科教授。武蔵野美術大学在学中よりライターとして音楽評論,ラジオ番組構成などを手がける。'80年に(株)アスキーの駐在員として渡米し,新しいメディアビジネスを調査。帰国後,新雑誌企画,ネットワーク番組制作などを経てコンサルタントとして独立。'99年の学科創設時より現職。


前田邦宏(まえだくにひろ)

株式会社関心空間 代表取締役。1967年兵庫県宝塚生まれ。1990年より公共機関や企業向けデジタルコンテンツの企画制作ディレクションに従事。1998年ユニークアイディ設立(現:株式会社関心空間)。2001年クチコミ情報コミュニティサイト「関心空間」を発表。同年に関心空間エンジンを利用したASP事業を,また2005年よりメディア事業を開始。

受賞歴:
2002年10月「関心空間」にてグッドデザイン賞新領域デザイン部門入賞。
2005年9月日本広告主協会WebクリエーションアウォードWeb人賞受賞。

コメント

コメントの記入

パスサポ

多数の情報処理技術者試験対策書籍の発行実績を誇る技術評論社がお届けする,資格試験合格サイト「めざせ! 情報処理試験 パスサポ」が開設されました。

ピックアップ

サクセスストーリーに続く,快適サーバー運用管理のヒント!

データの増大,煩雑な管理,システムダウン,セキュリティなど,迫りくる課題からシステム管理者の負担を軽くするポイントを解説します。

gihyo.jp インフラエンジニア情報局

ネットワークやITにかかわるあらゆる業種で必要とされるインフラエンジニアに向けた技術情報や心構え,その魅力について多角的に紹介。

テストエンジニア ステーション

いま,ITに関わるあらゆる開発業務で注目されつつあるテスト系エンジニアをターゲットにしたコンテンツサイトを展開します。

一行クイックアンケート

gihyo.jpで取り上げてほしいネタは?

※検索はページ右上の検索ボックスをご利用ください。

その他の連載

読むウェブ ~本とインタラクション

ディスプレイで読む活字とそのインタラクション(interaction:相互作用)について,最新Webを紹介しながら読み解いていく。

いま,見ておきたいウェブサイト

この連載では,国内外の最新のウェブサイトを隔週更新で取り上げ,これら最新サイトの特徴や素晴らしい部分を,さまざまな角度から解説していきます。

Windows phoneアプリケーション開発入門

Windows Marcketplace for Mobileがサービス開始され,作成したアプリケーションを個人でも世界をターゲットに公開できる環境が整ってきました。これを機にWindows phoneアプリケーションの開発をしてみませんか?

ここは知っておくべき!Windows Server 2008技術TIPS

5年ぶりのサーバOSとなったWindows Server 2008が出荷されて早2年。2009年にはR2が出荷され,再び注目を集めています。発売前から実施したトレーニングによって感じた,インフラエンジニアの方々に知っておいていただきたい機能を中心にご紹介します。

キーパーソンが見るWeb業界

本連載はWeb Site Expert/gihyo.jpとの連動企画です。阿部淳也, 長谷川敦士, 森田雄のお三方による,Web業界をテーマにした座談会です。

きたみりゅうじの聞かせて珍プレー

ソフトウェア開発の現場で体験したトホホな失敗,思わずうなる珍プレーをきたみりゅうじ氏が四コママンガで紹介。みなさんからの投稿もお待ちしてます!

ActionScript 3.0で始めるオブジェクト指向スクリプティング

野中文雄氏が,簡単なスクリプトは書いたことがあるという初級者を対象に,ActionScript 3.0の基本からクラス定義までを解説します。

まだ間に合う「ITパスポート」受験対策 原山先生の短期合格塾

この連載では,4月18日のITパスポート試験の受験に向けて,短い期間で効率良く受験対策を行う方法や,確実に得点するための裏ワザなどを伝授していきます。

連載一覧

gihyo.jp

  • DEVELOPER STAGE
  • ADMINISTRATOR STAGE
  • WEB+DESIGN STAGE
  • LIFESTYLE STAGE
  • SCIENCE STAGE
  • NEWS & REPORT

書籍案内

  • 新刊書籍
  • 書籍ジャンル一覧
  • 書籍シリーズ一覧
  • 新刊ピックアップ
  • ロングセラー
  • 電脳会議

定期刊行物一覧

  • Software Design
  • WEB+DB PRESS
  • Web Site Expert
  • 組込みプレス