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【実践編】第1回 AUGMENTED CITY

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空間へのストーリー付け

前田:

都市というのは自己拡張能力を人から引き出す強さがありますよね。東京,NY,ロンドン…,自分にはもっと可能性があるのではという気持ちにさせるような,場の力があると思います。

こういう,人にやる気を与える場,人を活き活きさせるような場を作るにはどうしたら良いと思いますか?大学もそういった場の1つだと思いますが。

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武山:

大学で言うと,より自由度を与えて伸ばしてやるというのが,教育の世界では重要になってきていますね。今いろいろな教育改革が行われていて,この場所も,そういう新しい教育の場を探そうというプロジェクトの一環で作られたものです。物理的な空間も含めて,教育の在り方というものを学生たちと一緒に変えていかないといけないということは実感していますね。

前田:

実際,この空間がベースとして1つあるわけですよね。Web上でそういう場を作ることは試されていますか。

武山:

SecondLife的なものを作ろうという動きがありますが,あれだけでは難しいかなと。自分の研究テーマに戻ってしまいますが,やはり人とリアルな街を連携していくようなやり方で進めていきたいですね。私自身,街歩きをするんですが,そのときにWebにアクセスしてそこに書き込んだりといった循環過程のスタイルには試行的に取り組んでいます。

前田:

コンピュータの側面から街の活性化をしてほしいと言われたときに,もともと歴史が深いとか,いろんな要素がその街にあるのなら,そのバックグラウンドをうまく引き出して組み合わせたら成功しそうですよね。でももし,要素が何もないといったときにはどうしますか。

武山:

そこで今注目しているのが先ほど話題に出した架空のストーリーの世界なんです。物理的なストックのないところには,ドラマ的なストーリを人工的に含ませたら,地域おこしみたいなものができるんじゃないかと。たとえば,何の変哲もないこの1本の木がストーリを持っている…というように。まだ構想の段階ですけどね。

前田:

おもしろいですね。

武山:

物理的な空間にバーチャルの世界をうまく結び付ける方法があるんじゃないかと思うんですよね。こういうのは人口の減っている地域でぜひやってみたい。実際に携帯の国盗り合戦ゲーム※注6で,その駅に行くと何ポイントという形で観光を進めている仕組みがありまして。その線をもう少し詰めていくと地方都市にも人の集まる仕掛けができてくるんじゃないですかね。

前田:

さっきの子どものコンバージョンではないですが,ここから先はこのシマだ,みたいな。

武山:

そうそう。そういう,何もないガラクタを,豊かな想像で宝に変えるという発想ですよね。ストーリさえうまく付けてやれば大人でもできるわけですよ。でも大人は頭が固くなっていますから,そこにうまくWebやモバイル器具を使ってやると,眠っていた想像力が喚起できるんじゃないかと。

前田:

日立の⁠この木なんの木⁠の木じゃないですけど,サービスを始める際に何か象徴的なものを一緒に作るとか。この前,長野に行ってきたんですが,ちょうど風林火山がブームになっているということで,去年までまったく誰も見向きもしなかった場所にすごい人が。

武山:

メディアで取り上げられると盛り上がるというのはありますよね,メディア自体がストーリーを付けていると思いますが。単発で終わってしまうものではなく,もう少し継続的にバーションアップしてストーリを展開して伸ばしてやると良いんじゃないですかね。

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※注6)
『ケータイ国盗り合戦』⁠携帯電話のGPS機能を利用したバーチャル国盗りゲーム。

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著者プロフィール

前田邦宏(まえだくにひろ)

株式会社関心空間 代表取締役。1967年兵庫県宝塚生まれ。1990年より公共機関や企業向けデジタルコンテンツの企画制作ディレクションに従事。1998年ユニークアイディ設立(現:株式会社関心空間)。2001年クチコミ情報コミュニティサイト「関心空間」を発表。同年に関心空間エンジンを利用したASP事業を,また2005年よりメディア事業を開始。

受賞歴:
2002年10月「関心空間」にてグッドデザイン賞新領域デザイン部門入賞。
2005年9月日本広告主協会WebクリエーションアウォードWeb人賞受賞。

武山政直(たけやままさなお)

慶應義塾大学経済学部准教授

都市生活に浸透する様々な情報メディアの可能性について,消費者行動調査や空間分析,メディアデザインの観点から境界横断的な研究を行っている。慶應義塾大学経済学部卒業後,米カリフォルニア大に留学しPh.D.取得。

慶應義塾大学環境情報学部助手,武蔵工業大学環境情報学部助教授を経て現職に。

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