新春特別企画

2010年のソーシャルWeb(前編)

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PCや携帯電話を超えるソーシャルWebの拡大

昨年までのソーシャルWebの主戦場は,SNSやブログ,Twitterといったサービスであり,それらはPCもしくは携帯電話から利用することがほとんどでした。しかし,今年は非常に速いスピードで,他のデバイスにおいてもソーシャルWebの範疇に入ってくると予想できます。

SNSでの利用者の平均滞在時間は,ソーシャルアプリケーションの登場に伴って,非常に伸びています。利用者は一つの場所でより多くの情報を閲覧できることを望むため,様々な情報を集約する場所(アグリゲーター)としてSNSを位置づけることは非常に自然です。既にTwitterといったストリームをSNSに取り込むことが多くのSNSで行われていますが,今年はさらにその流れが加速するでしょう。

スマートフォンのソーシャル化

まず真っ先に挙げられることとして,iPhoneやAndroidといったスマートフォンについて,ソーシャル性がかなり流れ込んでくることが考えられます。既にいくつかのSNSからスマートフォン向けのアプリケーションがリリースされていて,対象のSNSからの情報をスマートフォン上でチェックすることができます。もちろん従来の携帯電話でもSNSからの情報を得ることは可能でしたが,画面サイズの大きさやその操作性を生かすことができるため,画像などのマルチメディア情報などは,やはりスマートフォンでの閲覧が便利になります。

しかし,今年はその流れが逆になるでしょう。つまり,SNSの情報を見るだけでなく,iPhoneやAndroid上で行ったことが,SNSに送られることになります。スマートフォン上のアプリケーションとSNSが連携し,SNS上の人格としてスマートフォンからアクセスが行われます。これは技術的には既にOAuthによって実現可能なレベルに達していますので,各SNSがこの戦略を取るかどうか,その判断のみとなります。

従来のPDAでは,あくまで利用者自身の作業効率向上という目的が強く,携帯電話よりも多くの情報を一度に処理可能とするもの,という性質でした。しかし,スマートフォン上のアプリケーションがSNSと連携することで,SNSのアグリゲーターとしての魅力はより強くなります。スマートフォンは利用者の最も身近にあるものですので,知り合いとのコミュニケーションという点でも非常に重要なデバイスです。このデバイスを見逃すことはないでしょう。

既にSNS上で人気があるソーシャルアプリケーションと,スマートフォン上でのアプリケーションとの連携も,盛んになる年になると考えられます。

コンシューマ向けデバイスのソーシャル化

SNS上でのバイラル性がプラットフォーム化により広く開放されたことで,ネットに接続されている全てのものに関して,SNSとの連携が現実のものとなりました。もちろん,前述のスマートフォンは誰しも考えつく連携ですが,今年はある意味スマートフォンよりもコンシューマに近くアクティブ率が高いデバイスとの連携が始まる年となるでしょう。

そのデバイスとは,WiiやNintendo DS,Play Station,Xboxなどのゲーム機です。もちろん,これらのゲーム機に搭載されているWebブラウザでSNSを利用できるという狭い意味ではありません。もっと本格的な,深い連携が始まるはずです。その連携方法は2つ考えられます。一つは,ゲームからの情報をSNSに取り込むための連携,もう一つは,ゲームにてソーシャルグラフを利用するための連携です。

スマートフォンでのアプリケーションと同様に,ゲーム上でユーザが遊んだ結果を次々とSNS上に取り込んでいくことによって,ゲームの楽しさがSNSのバイラル性によって広まっていきます。また,取り込まれた情報はアクティビティフィードとしてSNS上でコンテンツとなり,そこからコミュニケーションが生まれます。ゲーム機上でこのようなことを独自に実装し広めていくことは比較的難しく,SNSをうまく利用することが成功の近道です。スマートフォンと同じく,OAuthによって技術的な面はクリアされていますので,今年はSNSとゲーム機との連携が,かなりのスピードで進んでいくことが予想されます。

SNSのプラットフォーム化に伴い,ソーシャルアプリケーションというジャンルが今年はソーシャルWebにて主役になりますが,その余波はゲーム機にも及ぶと考えられます。PCにてオンラインゲームがヒットし,今ではゲーム機もインターネットに接続してオンラインゲームを楽しむことができるようになっています。そこでは,ゲーム上で他のユーザを見つけ,協力して冒険を楽しんだりしています。しかし,あくまで見ず知らずの人であり,ゲームを超えた何かが起きることは基本的にありません。しかし,SNSに蓄積されたソーシャルグラフをそこに持ち込むことによって,ゲーム上だけでなく,SNSやリアルな生活においても,他のユーザと影響し合うことが可能になります。

上記のようなゲーム機におけるソーシャル化は,今年は実験的にかなりの試みが行われると予想できます。最初はTwitterと,その後本格的に主要SNSへ連携が広がっていくでしょう。その結果,ソーシャルWebが一部のネットユーザだけでなく,一般の消費者へ認知されていく年になるでしょう。

(明日公開の後編へ続く)

著者プロフィール

田中洋一郎(たなかよういちろう)

株式会社ミクシィ所属。Google API Expert (OpenSocial)。Mash up Award 3rd 3部門同時受賞。書籍「OpenSocial入門」を出版。

URL:http://www.eisbahn.jp/yoichiro

著書