事例でわかる,プロジェクトを失敗させない業務分析のコツ

第4章 EAとその他の業務分析手法について

2008年9月16日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

5.ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)

業務モデリング手法の1つとして業務プロセスを最適化して,業務プロセスの統廃合を進め,付加価値の高いプロセスに資産を投入し,付加価値の低いプロセスを削減することを推奨するビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)が登場しました。

BPRは,業務プロセスをモデル化し,As-Is(現状)からTo-Be(将来)の業務プロセスを抽出していきます。

情報システムにおけるBPRでの業務プロセスとは,ある情報の入力に対し,付加価値のある出力を出力するアクティビティ(活動)の集合と定義しています。そして,すべての業務プロセスは,情報システムへの設計,実装を容易にするため,イベントを機に開始され,一連の複数のアクティビティが終了した時点で完了するように定義します。

6.Model Driven Architecture (MDA)

また,モデルを使用してソフトウェア開発を行う手法としてMDAがあります。

MDAは特定の技術や手法を用いて開発を行うのではなく,Unified Modeling Language(UML)を用いたモデリング・アーキテクチャです。UMLを用いることにより,さまざまな技術の相互接続性を図ることができます。

7.IDEF

米国商務省の標準化機関であるNIST(National Institute of Standards and Technology)によって1990年代初頭に標準化され,米国政府情報技術の調達標準(FIPS:Federal Information Processing Standard)として採用されています。ヨーロッパでも広く採用されています。

プロセスモデリングにはIDEF0と呼ばれる規格があります。これは,別名機能モデリングとも呼ばれており,BPRと同様,企業における業務をアクティビティというレベルに分割し,それぞれのアクティビティに対しインプットとアウトプット,制約と機構という4つの情報を定義する手法です。

また,データモデリングにはIDEF1Xと呼ばれる規格があります。リレーショナルデータベースを論理設計するためにIDEF1を拡張して作られた手法で,ERモデルの発展形として位置付けられています。将来モデルであるTo-Beモデルの作成を行います。IDEF0とIDEF1XはISOで標準化されています。

現在はオブジェクト指向へのモデリングへの拡張としてIDEF objectが規格化され,IEEEでも標準化されています。詳細については下記URLを参照ください。

Itegrated DEFinition Methods(英文)
URL:http://www.idef.com/

8.Data Flow Diagram (DFD)

DFDは,Tom Demarcoによって提案された構造化分析手法の一部です。DFDは,データの流れを中心にプロセスを分解し定義していきます。提案された頃は,このDFDのみですべての分析が完結する手法として提案されましたが,現在ではほかの手法との併用により利用される場合が多いと言えます。

9.データモデリング手法

Data Oriented Approach(DOA)と呼ばれる,データそのものを中心に据えた設計手法が提唱されるようになりました。現在,多くのプロジェクトで使用されています。DOAにおいては,⁠One fact in one place」を目指しており,データこそが普遍である,というポリシーがあります。そのため,業務も情報システムもデータを中心に設計を行い,データのモデル化は必須となります。

データモデルに関しては,Entity Relationship Model(ERモデル)があり,多くのプロジェクトで使用されています。

ERモデルは,⁠世の中に存在するあらゆるものは,実体(Entity)と関連(Relationship)という2つの概念で表現できる」という概念があります。ERモデルはERダイヤグラムによるモデルのわかりやすい表現を採用していたことと,リレーショナルデータベースと親和性が高かったことにより,広く一般的になりました。

10.オブジェクトモデリング手法

現在,Object Oriented Approach(OOA)を採用している企業のあると思います。これは,OOAでは,データそのものの汎用化は出来ましたが,業務プロセスの実装の汎用化は容易ではありませんでした。また,業務プロセスがデータに依存するため,データ構造の変更が情報システムの広範囲に影響を及ぼす事が良くありました。このような背景があり,OOAが注目され始めました。

オブジェクトモデリングでは,現実の社会における物体の特性(属性)とその物体にかかわるプロセス(操作)「オブジェクト」として定義します。オブジェクトの特性や業務プロセスの変更の影響範囲をそれぞれのオブジェクトと関連するオブジェクト内に限定することで,複雑で規模の大きなシステムに対する設計や運用の容易性を提供します。しかし,OOAは現実の業務をオブジェクトとしてとらえることは比較的に容易に出来ますが,それを情報システムのアーキテクチャとして変換する際の方法が分かりにくく,OOAは分かりづらいという評価を受けています。

オブジェクトモデリングで現在一般的に使用されている手法は統一モデル言語「UML」と統一プロセス「RUP」です。

UML

ソフトウェア工学におけるオブジェクトモデリングのために標準化された仕様記述言語です。UMLは,グラフィカルな記述で抽象化されたシステムのモデル(UMLモデル)を生成する汎用モデリング言語です。

UMLは大きく分けて以下の2つに分類されています。

  • 構造図
    構造図では,システムの静的な構造をモデルで表現します。
  • 振る舞い図
    状態機械図の例振る舞い図では,システムの振る舞いをモデルで表現します。

業務分析で用いられるUMLモデルはクラス図,コンポーネント図,アクティビティ図,ユースケース図,シーケンス図です。しかし,全てを作成する必要はありません。

RUP

米国Rational Software(2003年にIBMに買収されました)が開発した,オブジェクト指向を前提にした開発プロセスです。RUPでは,以下の6つのベストプラクティスが定められています。これらのベストプラクティスは従来の開発プロセスであるウォーターフォール型とは異なるアプローチをとっています。RUPは,昨今の情報システム開発における技術リスクの増加,頻繁におこるユーザ要求の変更,開発の短納期化などに対応出来る開発手法として注目されています。

  • 反復型開発
  • 要求管理
  • コンポーネント・アーキテクチャの使用
  • ビジュアル・モデリング
  • 品質の継続的検証
  • 変更管理

詳細は下記URLを参照してください。

IBM Rational Unified Process
URL:http://www-06.ibm.com/jp/software/rational/products/life/unified/

著者プロフィール

露木敏博(つゆきとしひろ)

1966年神奈川県横浜市生まれ。1990年,株式会社日立システムアンドサービス(旧日立システムエンジニアリング株式会社)に入社。

流通系SE,営業所駐在SEなどを経て,2003年から生産技術部門で.NET技術に関する技術支援業務に携り,.NET技術に関する各種基準書および標準化,設計ガイドなどを作成。

マイクロソフトMVPアワードプログラムよりDevelopment Platforms - ASP/ASP.NETのカテゴリで2008年7月よりMVPアワードを受賞。

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