小飼弾のアルファギークに逢いたい♥

#18 コミュニティーエンジン 森田 創(omo)

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クラウドってどうよ

弾:クラウドについてどう思いますか?「いいんですか? クラウドというバズワード的なのを使っちゃって」という質問です。

森:VM(仮想マシン)はいいと思うんですよ。結局は仮想化できたらいいですねっていう話だと思うんです。

弾:クラウドはVMである。分散VMである。

森:いや,VMがいっぱい,向こうにあるだけですよね。

弾:bunch of VM(VMの束)だと。

森:VPS(Virtual Private Server:注2とか楽じゃないですか。すごい身近な話なんですけど。ああいうのが企業でも使えるようになりますよねっていうだけの話で。なんか,いろんな話が混ざっちゃっていて,ちょっとよくない…。

弾:Web 2.0以上にわけわからない言葉ですよね,クラウドって。

森:ハード屋さんが儲けられるんで,なんかバズりがいがあるんじゃないですか。

弾:なるほど。確かにお金が動いてくれないと困る人たち,いっぱいいるので。我々も含まれますが。

森:そうですね,食わせてもらってるので。Web 2.0は結局あんまり儲からなかったわけですが。儲かった人もいますけど。

弾:ほんとに,クラウドってものが売れるんですか? クラウドって聞くと,世界で必要なコンピュータは5台だけだっていう言葉が出てきますけど,そうなると5台のコンピュータのコンポーネントとしてのコンピュータ,ハードウェアは売れるけど…っていう話になっちゃうじゃないですか。

森:そこはなんか話が混ざってるところで,ちゃんとスケールするっていう話とVMを使ってるっていうのとは関係ないですよね。Googleだって,たぶんほとんどの検索とかはVM使わずにやってるわけで,でも一般のユーザにとってありがたいのは,VMになっていて,ぽこぽこと増やせるとか,お金がかからないとか,そういう話になるわけで。

弾:でもバズになってるわりに日本でうちがやったるっていうところはあんまり聞きません。なんででしょう?

森:日本でうちがやったるって言って,ちゃんとやってたバズって,クラウドに限らず何もないので。

弾:でもWeb 2.0の少なくともブログは根付いたわけじゃないですか。

森:そういう意味では逆方向のスケーラビリティが必要だと思うんですよ。しょぼいほうにいってもありがたくなきゃダメで,すごくスケールするAmazon S3よりは,普通の中小企業がさくっと仮想化できるVPSとかのほうが流行る。

弾:そう。だから日本でやっても流行るはずなのに,なんで出てこないのか。たとえば,日本でS3を使うとかってすると,やっぱりレイテンシ(遅延時間)の問題で使えない。日米往復すると,200ミリ秒失うんですよ。人間がわかるディレイですよね。

森:10フレームですからね。Amazonじゃなくても普通に国内でやればいいんですけどね。

弾:仮説の1つとしては電気代っていうファクターがありますよね。

森:あー。あと土地代ですか。ブツが必要だと。

弾:やっぱり電気とネットワーク,帯域幅が豊富なところでないと。ただ,あんまり遠くに置くとレイテンシの問題が出てきちゃうんで,S3使いたいけど,ちょっと日本だと難しいなっていう。僕もクラウドというバズワードじゃなくて,要は,日本でもまともにさくさくレスポンスがあるS3みたいなものをやれば,絶対流行るとは思うんです。なんで,日本のホスティング会社はやってくれないんでしょうね。サーバは貸してるのに。

森:それはハッカーがいないからじゃないですか(笑)⁠ mixiとかやればいいんですよ,本当は。

弾:ああ,確かにそうですよね。クラウドがやってることって,自分で使ってたら良いから,人にもお譲りしますという発想ですよね。

森:マシンのユーティリゼーション(使用率)が上がらないので,貸すっていう話じゃないですか。だったら別にmixiとか,いろいろスーパーハッカーがいそうな感じなんで,コンピュータいっぱい持ってる人がやればいいわけですよ。

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注2)
専用サーバを仮想的に作ったもの。

注目している技術

弾:最近注目している技術ってなんですか?

森:全然流行ってるものと関係ないんですけど,これですね,電子ブックリーダー。

弾:ほう。どこのですか?

森:ドイツのiRexという会社です。

弾:ソニーのLIBRIeとKindleは見たことがあるんですけど。

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森:Kindleよりも一回り大きくて,二回りはしょぼい。画面が大きいのがとりえで,KindleってSVGA(800×600ピクセルの解像度)じゃないですか。小説は読めて,マンガも読めるんですけど,技術書はちょっとつらい。これはXGA(1024×768ピクセルの解像度)なんですね。技術書はぎりぎりいける。論文もまあまあいけるっていうくらい。友達がソニーのやつを買って,すごい熱烈に勧められて,買ってみたら確かになかなかよくて,家が狭いんで,家の本はすべてスキャンしてこれに入れるっていう計画のもとに。

弾:(iRexを操作しながら)きれいに映るもんだな。

森:ページめくりがちょっと遅いんですけど。E Ink注3というのは再描画があまり速くないので。

弾:確かに遅いな,Kindleもこんなに遅かったっけ。ソニーのやつは速かったな。いくらくらいでした,これ?

森:5万円くらい。

弾:さすがにそりゃ手を出す人はまだあんまりいないだろうな。

森:ソニーのは2万円くらいなんですよ。

弾:それくらいでしょうね。しかもなんか最初に読むべき本を付けてそんな感じじゃないでしょうかね。

森:英語のフリー書籍,グーテンベルク注4のとかは入ってます。

弾:シーケンシャル(先頭から順番)に読むのは僕ももう,これでいいと思います。逆にダメだと思うのが,いわゆるレファ本(リファレンス)⁠

森:最近,オライリーのSafari注5とかは結構よくて,Safariとこれでいいんじゃないかという結論になりつつあります。こういう端末に需要があるのは確かで,携帯で見られるじゃないですか。おもしろいのは,スキャンして読む文化,なんか2ちゃんねるでは「自炊」と言われてるらしいんですけど,要はツールがあって本の活字を認識して改行を組み替えて携帯用にしてくれるツールとかがあるらしいんですよ。

弾:すごーい。

森:そういうのを使って,みんな読んでいるらしいので,電子化そのものは進んでいって,あとはAppleがiPaperを出せばみんなそっちに代わると思うんですよね。

注3)
E Ink Corporationの電子ペーパー(超薄型ディスプレイ)⁠
注4)
1971年創設の電子出版プロジェクトで,著者の死後一定期間が経過し,米国の著作権法が切れた文書をインターネット上で公開している。
注5)
Safari Books Online。O'Reilly,Prentice Hall,Microsoft Press などの書籍やビデオを,オンラインアクセスで利用できるサービス。

著者プロフィール

小飼弾(こがいだん)

ブロガー/オープンソースプログラマー/投資家などなど。ディーエイエヌ(有)代表取締役。1999~2001年(株)オン・ザ・エッヂ(現(株)ライブドア)取締役最高技術責任者(CTO)。プログラミング言語Perlでは,標準添付最大のモジュールEncodeのメンテナンス担当。著書に『アルファギークに逢ってきた』(2008年5月,技術評論社)。ブログは『404 Blog Not Found』

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