アンティーク・アセンブラ~Antique Assembler

第6回(最終回) 関数の機能 ~ 関数間での連携

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前回は,関数※1が呼ばれた際に,関数内での局所的な情報をどのように管理するかについて説明しました。

今回は,関数呼び出しにおける連携方法について説明しようと思います。

※1)
前回同様今回も,「サブルーチン」(sub-routine)/「手続き」(procedure)などをまとめて「関数」(function)と呼びます。

引数と戻り値

引数

関数の呼び出し元は,さまざまな形式で引数を指定します。たとえば,

  • 自身の局所変数の値
  • 自身に指定された引数
  • 他の関数の呼び出し結果
  • 上記の値から導出された値(例: 四則演算/構造体参照等)

一方で(一般的な)言語仕様上から見て,呼び出された側にとっての引数は,関数終了まで領域が保持されている=終了後は必要ない,という点では局所変数と実質的に差異がありません。

そのため,Intel x86アーキテクチャで関数呼び出しを実現する場合,呼び出し元は引数をスタック上に格納します。

リスト1 呼び出し元での引数格納

    movl    $1, 0(%esp)
    movl    $15, 4(%esp)

引数格納用のスタック領域確保は大別すると,(1)関数呼び出しのつどpush命令を使用してスタックポインタを更新しつつ引数を格納する方法と,(2)呼び出し元関数の冒頭であらかじめ必要な量を確保しておく方法の,2通りの方法があります。

本稿では,スタック上の相対位置の把握しやすさから,後者の方法での実装例を示しますが,稼働環境等の制約や,後述する呼出規約次第では,前者の方法が必要とされますので注意してください。

呼び出し先の関数は,スタック上の引数をEBPレジスタ相対の間接アドレッシングで参照します。

リスト2 呼び出し先での引数参照

    movl    8(%ebp), %eax   # eax には 1 が格納
    movl    12(%ebp), %eax  # eax には 15 が格納

格納時のESPレジスタに対する即値指定と,参照時のEBPレジスタに対するそれが異なるのは,

  • 関数復帰の際の呼び出し元アドレス格納領域(+4)
  • 旧EBP値の格納領域(+4)

上記の分だけスタック上に領域が確保されているためです。

関数が呼び出された際のスタックは以下のような構成となっています。

図1 関数起動時のスタック構成

図1 関数起動時のスタック構成

戻り値

関数引数が複数の値を扱う必要があったのに対して,戻り値は単一の値を扱うだけです。

プログラミング言語によっては,関数が複数の戻り値を返却できるものもありますが,これは関数の返却値をどのように構造化するか? という各プログラミング言語における言語仕様/実装の問題ですので,本稿では「関数の戻り値は1つ」という認識の下で説明を進めます。

Intel x86アーキテクチャで関数呼び出しを実現する場合,関数の返却値がEAXレジスタに格納された状態で呼び出し元に復帰します。

リスト3 戻り値格納と復帰

    movl    $1, %eax  # 戻り値は 1
    leave
    ret

著者プロフィール

藤原克則(ふじわらかつのり)

Mercurial三昧の日々が嵩じて, いつの間にやら『入門Mercurial Linux/Windows対応』を上梓。凝り性なのが災いして,年がら年中アップアップな一介の実装屋。最近は仕事の縁が元で,OpenSolarisに入れ込む毎日。

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