ActionScript 3.0で始めるオブジェクト指向スクリプティング
第12回 マウスポインタとスクロールの連動
プロパティ値の有効桁数
できあがったスクリプト1は,実際に使ったとき少々不具合を生じることがある。このフレームアクションの設定されたインスタンスを複数,横にすき間なくびったりと並べて,10分程度以上スクロールさせ続けてみる。すると,すき間がなかったはずのインスタンス間に間隔が空いたり,逆に重なったりしてしまう(図3)。
これはインスタンスの座標のプロパティ値に,誤差のあることが原因だ。たとえば,[プロパティ]インスペクタで,x座標値として「123.456789」と入力してみよう(図4)。すると,実際に設定される値は「123.4」となり,以降の端数は切捨てられてしまう。
ActionScriptでも,DisplayObject.xプロパティに小数点以下の端数がある数値を設定すると,小数点以下第2位までの値に丸められてしまうのだ。前述のように複数のインスタンスにフレームアクションを設定した場合も,それぞれに毎フレーム設定される座標値は端数が毎回切捨てられる。そのカットされる数値の大きさは,当然インスタンスによって変わってくる。その違いが誤差になる訳だ。
小数点以下第3位以降の端数が小さいといっても,デフォルトのフレームレート(12fps)で1秒間に12回10分以上処理を繰返せば,累積の差が1ピクセル以上になっても不思議はない。その差が,インスタンス同士の間隔のばらつきとして現れることになる。
しかし,変数は最大で小数点以下15桁の値を保持できる(※2)。したがって,座標値を変数に入れて扱えば,目に見える誤差が出ない十分な精度で処理できる。そこで,座標値を新たな変数nXに入れて処理するよう修正したのが,次のスクリプト2だ。
スクリプト2 座標値の処理を変数で行うように修正
// MovieClip: スクロールさせるインスタンス
var nSpeed:Number = 20;
var nStageLeft:Number = 0;
var nStageRight:Number = stage.stageWidth;
var nStageWidth:Number = nStageRight-nStageLeft;
var nStageCenter:Number = (nStageRight+nStageLeft)/2;
var nSensitivity:Number = 0.2;
var nX:Number = x;
addEventListener(Event.ENTER_FRAME, xScroll);
function xScroll(eventObject:Event):void {
var nNewSpeed:Number = (nStageCenter-stage.mouseX)*nSensitivity;
if (nNewSpeed>nSpeed) {
nNewSpeed = nSpeed;
} else if (nNewSpeed<-nSpeed) {
nNewSpeed = -nSpeed;
}
nX += nNewSpeed;
if (nX>nStageRight) {
nX -= nStageWidth;
} else if (nX<nStageLeft) {
nX += nStageWidth;
}
x = nX;
}
注目してほしいのは,変数nXにDisplayObject.xプロパティの値を代入したのは,変数宣言の初期化時のみだということである。リスナー関数xScroll()内では,変数nXに対して座標計算の処理を行う。そして,関数xScroll()の最後のステートメントで,DisplayObject.xプロパティに変数nXの値を設定している。つまり,変数宣言時を除いて,処理は変数値をプロパティに代入する一方通行のみのなのである。
これはたとえば,JPEG画像を作成する場合と同じ考慮だ。 JPEG画像に修正が必要なとき,そのJPEGファイルを開くのではなく,劣化しない形式(PNGやPSDなど)で保存しておいた元の画像に手を加えるだろう。JPEGファイルを開いて再びJPEG保存すれば,画像がさらに劣化してしまうからだ。
変数も宣言時にプロパティの初期値を保持したら,以降は2度とプロパティ値で上書きしない。それをしてしまうと,プロパティのもつ誤差により,変数値が「劣化」することになる。したがって,上記スクリプト2では,値の設定を変数からプロパティへの一方通行としているのだ。これで,横に並べたインスタンスをスクロールさせ続けても,ピクセル単位の誤差が生じることは防げる(図5)。
マウスポインタに連動してインスタンスをスクロールさせるムービーはこれで完成だ。次回は,キーボードのキーで,インスタンスをコントロールしてみたい。
- ※2)
- 厳密には,数値(Number型データ)の有効桁数が約15桁になる。
今回解説した次のサンプルファイルがダウンロードできます。


