ソフトウェア開発の必須アイテム、BTSを使ってみよう

第5回Tracの導入

今回は、エンジニアに人気の高いTracを取り上げます。

図1 The Trac Project
図1 The Trac Project

Tracとは

Trac(トラック)は、スウェーデンのEdgewall Softwareが開発しているオープンソースのプロジェクト管理ツールで、Pythonで作成されています。日本ではインタアクト⁠株⁠がTracを日本語化したtrac-jaを配布しています。

The Trac Projectの公式サイト
URL:http://trac.edgewall.org/
インタアクト株式会社─公開資料
URL:http://www.i-act.co.jp/project/products/products.html
Trac Hacks─多数のプラグイン、マクロが登録されています。
URL:http://trac-hacks.org/wiki/
図2 Trac Hacks
図2 Trac Hacks

Tracの特徴

Tracは厳密にはBTSではなくプロジェクト管理ツールです。バグだけでなく開発タスクなどもチケット化して進行を管理できます。

プロジェクトポータルとして機能
wikiとバージョン管理システムとBTSが統合された構成をしており、プロジェクトポータルとして使用することを想定されています。規模の小さい開発であれば、Trac上ですべての情報管理が済んでしまいます。
スマートなプロジェクト管理が可能
wikiとバージョン管理システムが統合されているので、相互に横断したリンクを貼るなどスマートなプロジェクト管理が可能です。プロジェクト管理ツールを使ったことがない方は、ぜひ一度触れてみてください。
BTSとしてはシンプル
バグトラッカーとしての機能は、他のBTSに比べるとシンプルで、すぐに覚えることができます。ITS(issue tracking system)に近い使い方を想定されているようです。軽めの開発であればこのくらいでちょうどいいのかもしれません。
もっと機能を強化したい場合はプラグインで行うことができます。
日本のコミュニティ活動が盛ん
Web上の日本語の情報量ではMantisに届かないようですが、探すと参考になる情報が見つかります。最近は解説本が出版されたり、Shibuya.Tracという勉強会も開催されるなど、コミュニティ周辺も盛り上がりを見せています。
Shibuya.tracプロジェクト Wiki
URL:http://sourceforge.jp/projects/shibuya-trac/wiki/FrontPage

Tracの弱点

Tracは直感的に扱い易いとても優れた管理ツールですが、問題になりそうな点もあります。

インストールしにくい
本体だけなら難しいことはありませんが、Subversionなどとの連携などがあるぶん手間が増える上、まとまった読みやすいインストールガイドがなかなか見つかりません。Windows環境であれば、後述するTrac Lightningを使用すると簡単にインストールできます。
複数のプロジェクトは扱いにくい
プロジェクトが複数ある場合については、あまり想定されていないように感じます。メンバーがさまざまな案件を掛け持ちしているような現場だと設定に手間取るかもしれません。
デフォルトではQAステータスがない
テスト待ちのステータスがありませんので、必要な場合はプラグインを導入します。バージョン0.11からはTrac本体でワークフローの調整ができるように統合されています。

連携するツールなど

Tracにはさまざまなプラグインがあります。色々カスタマイズして使いましょう。

TracGantt
ガントチャートを表示するプラグインです。
MailArchive
メールをTrac上に読み込んでくれます。Trac上にMLのアーカイブが作成できます。
WebAdminPlugin
Tracの設定をWEBから行えるようになります。0.11で本体に統合されました。それ以前のバージョンを使う際は入れておいたほうが便利です。

Linuxサーバへのインストール

執筆現在の安定版バージョンは0.10.5および0.11.1です。英語版でよければ、Linuxのディストリビューションによってはパッケージとして提供されていますので、そちらをインストールしていただくこともできます。ここではFedora 9へTrac-0.11.1.ja1をインストールする場合について解説したいと思います。

Trac-0.11の動作環境は以下の通りです。

  • Python2.3以降
  • Genshi0.5以降
  • Subversion1.0 以降(1.1.x推奨)

データベースは標準でsqliteを使用します。PostgreSQLやMySQLも使えるようですが、そのままで問題ないでしょう。

まず、いくつか必要なパッケージのインストールを行います。

図3
# yum install python-devel

Tracにはtracdという独自のWebサーバがついていますが、権限設定などを細かく行う場合はApacheを使います。その場合はmod_pythonが必要です。

図4
# yum install mod_python

Subversionと連携させる場合は、リポジトリも先に用意しておいてください。

インタアクト株式会社のページから、Trac-0.11.1日本語版をダウンロードします。

図5
# wget http://www.i-act.co.jp/project/products/downloads/Trac-0.11.1.ja1.zip

適当な場所で展開しましょう。

図6
# unzip Trac-0.11.1.ja1.zip

インストールします。

図7
# cd Trac-0.11.1.ja1
# python setup.py install

次にtrac-adminでプロジェクトを構築します。

まずはディレクトリを作ります。ここでは/var/trac 配下に設置するとしましょう。

図8
# mkdir /var/trac
# mkdir /var/trac/<プロジェクト用のディレクトリ名>

プロジェクトを作成します。

図9
# trac-admin /var/trac/<プロジェクト用のディレクトリ名> initenv

下記のプロンプトが出ますので、プロジェクト名を入力します。

図10
project Name [My project]>

データベースに何を使うか指定します。

図11
Database connection string [sqlite:db/trac.db]

バージョン管理システムに何を使うか指定します。もちろんデフォルトはSubversionです。

図12
Repository type [svn]>

リポジトリのパスを指定します。

図13
Path to repository [/path/to/repos]> <Subvirsionのディレクトリ名>

ここまで入力して、最後にConguratulations! と表示されれば準備OKです。

TracにはtracdというWebサーバがついていますので、こちらで表示を確認してみましょう。

図14
# tracd --port 8000 /var/trac/<プロジェクト用のディレクトリ名>

ブラウザでhttp://localhost:8000/にアクセスすると、次のページが表示されるはずです。

図15 
図15

今作成したプロジェクトを選択すると、TOPページが開きます。

図16 
図16

Trac Lightningについて

Trac LightningはTracをWindows環境で簡単にインストールでき、Tracを簡単に使うことができます。有用なプラグインも追加された状態になっており、大変魅力的です。

Trac Lightning
URL:http://sourceforge.jp/projects/traclight/wiki/FrontPage

まとめ

今回はTracの特徴とインストールについてご案内しました。小規模案件向きですが、ツールとしての使い心地がとても良いので、ぜひ一度触ってみてください。

次回は、BTSの運用Tipsついてお話したいと思います。

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