継続は力なり―大器晩成エンジニアを目指して

第3回 常にそこにいろ

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オフラインでの会話

オフラインでリアルに話しかけられたときも常に話を聞く姿勢でいよう。ノっているときに割り込みされたからといって,不機嫌な感じで応対したり,相手の顔を見ずにキーボードをたたきながら返事をしたりしてはいけない。そのようなことを繰り返したら,あなたは遅かれ早かれ「話しかけづらい人」になってしまい,コミュニケーションがうまくいかなくなるだろう。

もしも本当に忙しくて応対する余裕がない場合はどうしたらよいだろうか。正直に「今は時間がないがあとで必ず話を聞く」ことを伝えればよいだけだ。もちろん大事なのはそれを必ず実行することだ。忘れてしまって相手に催促させるのは最悪だ。特に新人・後輩から話しかけられたときは,意識的に優先して聞く姿勢を見せることが大事だ。

最後まで面倒を見よう

チャットの返信のような小さなことから,長いスレッドが続いている技術的な議論のような大きなことまで,ほかの誰でもないあなたがすべて最後まで面倒を見よう。そういうものは誰かが返事を忘れたり,長い休み明けに忘れられたり,誰がボールを持っているかわからなくなったりする。意図せず止まってしまうことがよくある。最後までそこにいて面倒を見よう。あなたがそこにいる限り物事が進むと周囲に認識されるのが理想的だ。

99%から100%のコツ

常にそこにいて100%返事をするのは難しいと思うかもしれない。とにかく根性でがんばるしかない。というのは嘘で,ツールを使おう。たとえばメールの場合,受信箱をゼロにするinbox zeroテクニックとスヌーズ機能を利用する。受信箱をきれいに保ったまま,会話が止まってしまったときには簡単に気付けるだろう。返信をする時間をカレンダーで確保しておくのもよい。ToDo アプリをうまく活用すれば,返事忘れも防げるはずだ。

精神的なリーダー

あなたは実際にテックリードのようなリーダーの役割かもしれないし,ただのエンジニアかもしれない。どちらの場合も心の中で自分がリーダーだと思おう。チームに来た問い合わせは率先して常に答えるようにしよう。できれば常に一番に答え続けて,チーム内外から「チームの顔」として認識されるようにするとよいだろう。そうすると自分の周りでコミュニケーションがうまく回っていく。注意してほしいのは,常に全部自分でやる必要はないということだ。問い合わせであれば,詳しい同僚を紹介してあげて最後までフォローアップすればよい。

まとめ

さて,ここまで「コミュニケーション能力」=「常にそこにいる」ということを述べてきた。筆者が前述の若い人たちにこれを勧める背景を説明したい。

この記事を読んでいるみなさんは,職場で周りの人と比べておそらく優秀であると思う。雑誌を読んで最新の技術をキャッチアップする人なのだから。優秀な人というのは,職場で多少横柄だったり,コミュニケーションに難があったりしても大目に見てもらえることが多い。⁠あの先輩はちょっと気難しいし,何をやっているかわからないけど,一番コードが書けるよね」といった具合の人を見かけたことがあるだろう。

しかし職位が上がったり,良い職場に転職したりすると,自分と同程度の技術力を持った人が周りに増える。そうなるともはや大目に見てもらえなくなる。技術でとがることは難しいし,技術以外の部分でも要求されることは多くなる。特にチームワークが上手なことと,selfsucientであることが要求される。

self-sucientとは,⁠自分のことは自分でできる」という意味だ。より具体的に言うと,ほかの人とうまいことコミュニケーションをとってプロジェクトを前に進める力のことだ。そこで必要になるのは「誰とでもすぐに仲良くなれる」コミュニケーション能力ではない。今まで述べてきたように,どんなときにも常にそこにいて,自分の周りで物事をスムーズに動かすことができる力だ。別に無口で社交性が低くても問題ない。ツールの助けを借りつつ,少しだけ意識を変えて各場面で「常にそこにいる」ように心がければよい。これらは自他ともに認める非社交的な筆者も実践できているので安心してほしい。

明日からさっそく「常にそこにいる」を実践してみてほしい。

常にそこにいる彼

かつての同僚にリモートで働くエンジニアがいた。彼はまさに「常にそこにいる」タイプだった。

メールを送るとすぐに返事をくれる。メールの往復の数を減らすために要点がまとまったメールを書いてくる。メールスレッドが止まるとここまでのまとめを書いて,誰がボールを持っているかを明確にしてくれる。コードレビューは必ず半日以内にしてくれた。彼に何かを催促したことは一度もない。JIRAのチケットのステータスは常に最新だ。彼が何をやっているかは一目瞭然だった。

難しいバグの調査を任せられたときも常にそこにいた。クライアントエンジニアはバックエンドのバグだと言い,バックエンドエンジニアはクライアントのバグだと言って議論は止まりがちだった。彼は推測と事実を分けて列挙して,みんなの議論をガイドしていった。常に議論に目を光らせていた。最終的にはクライアント,バックエンド両方にバグがあったことが判明した。

彼は物理的に遠く離れたリモートにいたが,チームのみんなは彼があたかもここにいるように感じていた。誰もが彼とまた働きたいと思うような人であった。

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著者プロフィール

ひげぽん(Taro Minowa)

Software Engineer.

Mona OS/Mosh Scheme

URL:http://www.monaos.org/
技術ネタ:http://d.hatena.ne.jp/higepon

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