継続は力なり―大器晩成エンジニアを目指して

第4回 プロダクティビティの鬼

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GTD

GTD注2は,Getting Things Doneの頭文字をとったテクニックである。GTDの基本的な考え方は「頭の中から気になることを追い出す」である。⁠気になること」とはたとえば,⁠家に帰ったら年金の書類を確認しないと」「この記事をあとで読もう」などである。

GTDでは「頭の中にある気になること」をすべて書き出す。これは決まった日ではなく,いつでもやる。思い付くたびに追加する。次のように粒度はさまざまで,この時点で実現可能性は考えなくてもよい。

  • 木曜日までにPull Requestを仕上げる
  • 週末に自転車のメンテナンスをしよう
  • いつかマチュピチュに行きたい

週に一度の週次レビューで,上記のリストのアイテムをおおよそ次のように分類する。

プロジェクト
短期・中期的に必ずやらなければいけないこと
いつかやる
急いでやる必要はないが,いつかやりたいと思っていること。夢や希望でも可
読む
時間が空いたときに読みたい記事や本
予定
特定の日時にやらなければいけないことをカレンダーに登録する

そして,各プロジェクトに関して具体的な次の実現可能な物理アクションを定義する。これはプロジェクトが必ず進むようにするための大切なステップである。たとえばプロジェクトが「転職をする」であれば,⁠入りたいと思う会社を5つリストアップする」などが実現可能な物理アクションである。⁠会社Aの面接を受ける」では少し粒度が大きすぎる。

週次レビューでは,先週からの進捗も確認する。各プロジェクトごとにアクションが実行されたかを確認し,プロジェクトがどの程度進んでいるかを把握する。

先述したようにGTDでは,⁠頭の中から気になることを追い出す」ことがポイントである。気になることを外部記憶に書き出して忘れてしまい,頭がほかのことに集中できるようにする。そして週次レビューを行うことでプロジェクトの進捗を毎週チェックするのである。このチェックにより進んでいないプロジェクトが明確になる。また,この週次レビューの存在により継続性が高まることもポイントである。

ポモドーロテクニックとGTDを使い始めればすぐにプロダクティビティが上がったことが感じられると思う。以降では,その先に待ち受けるものや,筆者が利用している補助的なテクニックを紹介したい。

注2)
David Allen著/田口元監訳『全面改訂版 はじめてのGTD─⁠─ストレスフリーの整理術』二見書房,2015年

アレンジはあとから

プロダクティビティテクニックを試す場合は,必ず本家の1次情報にあたろう。ポモドーロテクニックもGTDも本家から書籍が出ているので,必ず読んでそのとおりに実践してみよう。

ありがちな間違いは,最初から自分流にアレンジしてしまうことである。良かれと思って自分に合うと思われる形にアレンジしてしまうと,最悪の場合,知らないうちにそのテクニックの本質的な部分を失ってしまう可能性がある。また,自分に合わないと感じた場合も,そのテクニック自体が悪いのかアレンジのせいなのかの区別がつかなくなってしまう。

本家の教えのとおりに実践してみて1~2ヵ月経ったころに,そのテクニックが自分に合っているかを評価する。そして合っているようであれば,小さな不満点を自分のやり方で改善してアレンジしてみよう。そのアレンジも1~2ヵ月後にうまくいったのかを評価できれば完璧である。

継続を妨げるものとその影響

GTDでも触れた継続性についてもう少し掘り下げよう。長期的な成果を上げるために,毎日30分間プログラミングの勉強をすることを決めたとする。もちろん習慣化するための工夫としてGTDを利用する。これを毎日続けていければ最高である。

しかし現実には「毎日やる」ことは難しい。みなさんも経験があると思う。会社の飲み会があった。仕事で疲れていたのでやる気が出なかった。友達と遊んだ。毎日やることを妨げる理由はいくらでもある。

数字で影響を見てみよう。週に1回くらい会社の飲み会があるとする。それとは別に,1日くらいやる気が出なかったり用事があるとする。すると毎日やるのに比べて勉強量は5/7(28%減)になってしまう。この数字は馬鹿にできない。毎日やっているつもりでも,実際の勉強量は意外と少なくなるのだ。それ以外にも「やらない/やれない」理由はいくつも思い付くだろう。年末年始や誕生日くらいは休もう。二日酔いで体調不良など。

これらに対処するには2つの方法がある。

1つ目は強い習慣化である。強い習慣のわかりやすい例は歯みがきだ。飲み会に行ったり,やる気が出なかったりするからといって歯みがきをサボる人はあまりいないだろう。子どものころから毎日続けている習慣で,⁠やるのが当たり前」となっているはずだ。⁠勉強する」をこれと同じレベルにするのである。強い習慣は一朝一夕には身に付かない。習慣化を助けるアプリや後述する時間割などを利用して,長期的に習慣化していこう。

2つ目は天引き法である。⁠給料から天引き」と同じ天引きだ。日々のスケジュールで,⁠勉強する時間」を天引きしてしまうのだ。一番良い例はランチの時間だろう。毎日ランチの時間は勉強すると決めてしまい。周囲にも宣言する(付き合いは悪くなってしまうが)⁠ランチの時間はカレンダーでブロックしておい て予定も入らないようにする。天引きしてしまえば,その時間はもとからなかったものとされるので飲み会などの突発的なイベントから影響を受けにくい。通勤の時間も同様に天引きしやすい。

時間割

前述したようにプロダクティビティの肝は常に1つのことに集中すること,そしてやるべきことが明確であることだ。定期的にやると決めたことを明確にするには,時間割を作るのがよい。小学校時代に使っていたような時間割である。

たとえば月曜日であれば,

  • 6:30 Swiftの本を読む
  • 7:00 英単語の復習
  • 21:00 機械学習の勉強

といった具合である。ポイントは朝起きたり家に帰ってきたりしたときに,⁠えっと,何をしようかな」と考えなくて済むようにすることだ。眠かったり疲れていたりすると「何をするか」を考えるだけでも負担だし,短期的な視点で決めがちである。時間割そのものが適切かどうかは,GTDの週次レビュー時に見なおすとよいだろう。

飽き

自分に合ったプロダクティビティテクニックをマスターする。ツールを使いこなす。毎日のプロダクティビティに大きな向上を感じられる。この3週間とても充実している。ところが,残念ながらそれは長くは続かない。プロダクティビティの敵である「飽き」が猛威をふるい始める。ふと気付くと使っているツールに新鮮味が感じられなくなっている。以前は「タスク完了ボタン」を押すときにワクワクしていたが,今ではその大げさなアニメーションにイライラする。カレンダーからのリマインダーのプッシュ通知も無視し始める。そしてちょうど1ヵ月ほど経ったころにもとのプロダクティビティに戻ってしまう。これが飽きによる停滞の危険性である。

飽きを完全に防ぐことは難しいが,飽きの存在を認識できていれば細かい運用で軽減できる。いくつか方法を紹介しよう。

  • 定期的にタスク管理ツールを新しいものに変える
  • 定期的に時間割を変更する
  • 同志とグループを作ってゆるやかな相互監視をする注3
  • プッシュ通知を無視しないようにタイトルに絵文字などを使う

このように,根幹となるプロダクティビティ向上の考え方は変えずに変化し続ければ,飽きを回避できる。

注3)
週報仲間

まとめ

プロダクティビティマニアである筆者が思考錯誤してきた,プロダクティビティテクニックを紹介した。この記事がみなさんの人生の助けになれば幸いである。

ミーティング

集中したいのだけどミーティングがあって中断してしまうことはよくある。ミーティングはプロダクティビティの敵だ。

ミーティングがスケジュールされない時間をカレンダーで確保してしまおう。筆者は週に何個か分散してDNS(Do Not Schedule)という予定を入れている。また,週次ミーティングを1日にまとめてしまうのもよい。同僚たちと相談して調整してみよう。あとは全社的もしくはチーム内でNo meetings dayを作るのもよいだろう。1日まとまった時間が取れるのはたいへん効率が良いはずだ。

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  • 特集3
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  • 一般記事
    自作キーボードのススメ
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著者プロフィール

ひげぽん(Taro Minowa)

Software Engineer.

Mona OS/Mosh Scheme

URL:http://www.monaos.org/
技術ネタ:http://d.hatena.ne.jp/higepon