サイバーエージェントを支える技術者たち

第40回 プロジェクト管理の課題をアジャイルで解決

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効率的にプロジェクトを管理,またソフトウェアの開発を進めるため,サイバーエージェントではスクラム開発の導入を進めています。今回は,サイバーエージェント社内でアジャイル開発に率先して取り組む,アメーバ事業本部 メディアクリエイティブDiv スマートフォンコミュニティグループの寺本隆彦氏と,同スマートフォンコミュニティグループの渡辺雄作氏にお話を伺いました。

サイバーエージェントが抱えるプロジェクト管理の課題

現在サイバーエージェントが進めるプロジェクトの1つに,スマートフォン向けプラットフォーム事業である「デカグラフ」があります。これは多数の外部サービスのアカウントを利用できる「コネクト」⁠ユーザ同士がコミュニケーションするための場を多数提供する「コミュニティプラットフォーム」⁠そして外部のゲーム会社によるコンテンツ配信を可能にする「ゲームのオープン化」の3つのキーワードを軸に進められている事業戦略で,これに合わせて100個ものスマートフォンアプリを提供する予定となっています。

このデカグラフの枠組みの中で提供するスマートフォンアプリの開発を含め,サイバーエージェントでは現在数多くのプロジェクトが進められています。こうした中で課題として浮かび上がってきたのが「統一的なプロジェクト管理手法が存在しないこと」だと渡辺氏は説明します。

渡辺雄作氏

渡辺雄作氏

「これまではプロジェクト管理の手法やプロセスについて全社的に決まった方法はなく,チームごとにそれぞれのやり方で開発するという形になっていました。従来はそれでも特に問題はなかったのですが,積極的に採用を進め,エンジニアの人数が増えるにつれ,どのように開発を進めるべきか戸惑いを感じるメンバーも出てきたのです。またプロジェクトを進めていても,たとえばリリース日をいつにするのかといったことを考えるときの判断基準がないことも課題でした。以前であれば⁠ツーカー⁠で決めていたところがあったのですが,入社したばかりの人にとってはやはり難しい。そうした背景から,何らかのプロセスを導入すべきではないかということになったわけです」⁠渡辺氏)

さらに寺本氏は次のように話を続けました。

「運用フェーズに入っているプロジェクトであれば,機能を追加するといっても小規模な開発で済むため,仰々しいプロセスを持ち出さなくても特に問題はありませんでした。しかし,デカグラフという構想により,スマートフォン向けのアプリを新たに開発するプロジェクトが多数立ち上がることになりました。サービスの新規開発には10~20人前後と多くのメンバーが関わることになるほか,開発期間も4ヵ月,あるいは5ヵ月と長いスパンになります。さらに,メンバーの中には入社したばかりで,サイバーエージェント流のプロジェクトの進め方への理解が浅いメンバーもいます。こうした状況の中でプロジェクトを適切に進めていくために,共通の軸となるプロセスや開発手法を取り入れようという動きが広まっている状況です」⁠寺本氏)

100人以上が参加したスクラム開発の勉強会

そうした中,サイバーエージェント社内で注目されつつあるのが「アジャイルソフトウェア開発」です。2012年8月23日には渡辺氏と寺本氏が中心となって「アジャイルサムライ道場」と題した勉強会を実施,100名を超える人々が参加しました。

「アジャイルサムライ道場」と題したスクラム開発勉強会

「アジャイルサムライ道場」と題したスクラム開発勉強会

「手探りでプロジェクトを進めている現状を改善するうえで,その⁠よりどころ⁠となるものが欲しい,あるいは改善を進めるうえでの⁠ものさし⁠となるものが知りたいと考えている人は多かったんですね。そのよりどころやものさしとなるものとして,アジャイルの開発手法の1つである『スクラム開発』について勉強会を開こうということになりました」⁠渡辺氏)

スクラム開発はアジャイル開発手法の1つで,プロジェクトを管理するためのフレームワークです。実際に開発を行う「チーム」とチーム内外の調整役となる「スクラムマスター」⁠そしてプロジェクトの総責任者である「プロダクトオーナー」から構成される体制で,⁠スプリント」と呼ばれる開発期間を何度も繰り返して開発を行います。

従来一般的だったウォーターフォール型のソフトウェア開発との大きな違いとして,スプリントごとに実際に動作するソフトウェアを成果物として提出することが挙げられます。これにより,実際に動くソフトウェアを使ってプロジェクトの進捗を把握することが可能となるわけです。

このスクラム開発のメリットについて,渡辺氏と寺本氏は次のように話しました。

「個人的には,そのプロジェクトの状態が一発で見えることが一番のメリットだと思います。たとえば,スケジュールについてエンジニアに問い合わせたとき,⁠オンスケジュール(スケジュール通り)です』という答えが返ってきたとします。でも,オンスケジュールという言葉には人によって幅があり,実は結構厳しい状態かもしれないわけです。ただ,スクラム開発などのフレームワークでプロジェクトを管理していると,進捗状況が数値として見えるのでブレをなくせるんですね。そのため,メンバーもマネージャーもスケジュールの状況がすぐに把握できる。こういった点は大きなメリットだと感じています」⁠渡辺氏)

「スケジュールが可視化されるのは本当にいいところですね。たとえばスケジュールが遅延していても,早い段階でこのままではプロジェクトが期日どおりに終わらないことがわかれば,必要な対策を打つことで立て直せますよね。これまでは最後まで期日どおりにリリースできるかどうかがわからず,開発している側としても『何とかします』としか言えない状況に陥りがちでした。しかし,スクラム開発の手法なら,自分たちのチームで何度かスプリントを回してみて,その結果がベロシティとして現れるので嘘がつけない。それによって,スケジュールの見積りが自然と適正になっていくところが大きなポイントではないでしょうか」⁠寺本氏)

著者プロフィール

川添貴生(かわぞえたかお)

株式会社インサイトイメージ代表取締役。企業サイトの構築及び運用支援のほか、エンタープライズ領域を中心に執筆活動を展開している。

メール:mail@insightimage.jp

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