サイバーエージェントを支える技術者たち

第52回 サイバーエージェントのネットワークインフラを探る[後編]

この記事を読むのに必要な時間:およそ 1.5 分

サービスを支えるネットワーク基盤には,今後何が求められるのでしょうか。サイバーエージェントにおけるネットワーク基盤の今後の展開について,前編に引き続き篠原雅和氏と高橋哲平氏,村越俊克氏にお話を伺っていきます。

インフラ構築の自動化を目指すサイバーエージェント

アプリケーションやサービスを迅速にリリースできる体制を整えるために,開発担当者(Developer)と運用担当者(Operator)が密接に協力してインフラ構築の自動化などを実現する,⁠DevOps」という考え方が急速に広まりつつあります。たとえば新たなサービスを提供するといった場合,従来であれば開発担当者からの要望を受けて運用担当者がインフラを構築し,その上でサービスを提供するといった流れが一般的でしょう。しかしDevOpsが目標とする世界では,インフラ構築のステップを自動化することなどにより,迅速なサービス提供を目指していくというわけです。

写真1 ⁠左から)村越氏,哲平氏,篠原氏

写真1 (左から)村越氏,哲平氏,篠原氏

サイバーエージェントにおいても,このDevOpsの考え方が浸透しているようです。2013年春,新たなサービス提供基盤で利用されているネットワークの設計と構築に携わった哲平氏は,今後の目標を次のように説明します。

「現状ではサービス提供に利用するネットワークの構築にはエンジニアが携わっていますが,最終的にはそれぞれのサービスのプロデューサーがWebインターフェース上でクリックしていけば,ロードバランサやファイアウォールなども含めたネットワーク環境が自動的にできあがる,というところを目指しています。極端な話,明日からサービスを開発したいといったときでも,ほんの数クリックでサーバやネットワークのインフラを構築できて,それを使ってすぐにサービス開発に取りかかれるという状態です。こうした環境を実現して売上に貢献することが,我々の大きなミッションの1つです(哲平氏)⁠

ちなみに,現状でも社内システムからファイアウォールの構築などを依頼すると,作業を委託しているアウトソース先で作業を行うといった形で自動化されていますが,⁠最終的にはソフトウェア技術を利用して完全に人の手を介さないような形にしたい」と篠原氏はさらに高い目標を掲げます。

別の側面から,自動化のメリットを語るのは村越氏です。

「たとえばミスオペレーションでトラブルが発生した場合,これまでであれば設定のチェック体制を強化したり,あるいは設定内容を記録しておいたりといった対応になりがちですよね。ただ,そうした対応ではまた同じトラブルが起きる可能性が高いわけです。しかし,そのオペレーションをシステムに置き換えておけば,システムを改修することによってトラブルが繰り返し発生することを防ぐことができ,サービスの品質向上にもつながります(村越氏)⁠

さらにサイバーエージェントでは,現状利用している複数のデータセンターをネットワーク仮想化技術を使って統合することも視野に入れています。

図1 ネットワークの仮想化によってデータセンターを統合

図1 ネットワークの仮想化によってデータセンターを統合

「現状は4つのデータセンターをバラバラに運用していますが,上位レイヤの人たちがデータセンターの物理的な場所を意識することなく利用できるよう,SDN(Software Defined Network)の技術などを使って仮想的に集約していきたいと考えています。現状ではそうした要件はありませんが,今後ディザスタリカバリが必要となるサービスを開発するといった場合,このように仮想的にデータセンターを統合しておけば現状のインフラよりも容易に実現できると考えています(哲平氏)⁠

「特定のデータセンターにサービスやインフラがロックインしてしまうことを防げるというメリットも期待しています。具体的には,あるデータセンターで稼働しているサービスを別のデータセンターに移すといったとき,実際はインフラ面の制約から移行できないといったケースがあります。しかし,インフラをフラット化しておけば,こうしたマイグレーションを容易に実現できるようになります(篠原氏)⁠

そして哲平氏は,⁠SKBNW」というキーワードで最終的なネットワーク環境のコンセプトを説明します。

「捨(S)てやすい,(K)築しやすい,(B)散可能型のネットワーク(NW)ということでSKBNWです(笑)⁠このように柔軟性の高いネットワークを実現していくことが,これからの目標ですね(哲平氏)⁠

「現状は私と高橋で,どういう技術をどのように当て込めばこれを実現できるのかを構想している段階です。現状のイメージだと,OpenFlowを使ってネットワーク仮想化を実現するというのが一番近いですね。もちろん,既存のプロトコルを使って似たようなことを実現できる可能性はありますが,結局は各メーカー独自の機能を使うことになりかねません。OpenFlowはまだ不充分な点もありますが,目指すべき方向性としてはそちらなのかなと考えています(篠原氏)⁠

注目したいのは,今後のコンセプトの中に「捨てやすい」という言葉が入っていること。一度構築したインフラをただ守るのではなく,変化を積極的に受け入れ,新たな価値を創造するという姿勢が,サイバーエージェントの強さの理由の1つになっていると言えるでしょう。

著者プロフィール

川添貴生(かわぞえたかお)

株式会社インサイトイメージ代表取締役。企業サイトの構築及び運用支援のほか、エンタープライズ領域を中心に執筆活動を展開している。

メール:mail@insightimage.jp

コメント

コメントの記入