データ発見隊

第4回 長いIDと短いID

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身のまわりのものをIDで管理する

Gyampはネット上の情報を整理するのに便利ですが,身のまわりのものを管理するのにも利用できます。たとえばオフィスで無線LAN接続のプリンタを利用しているとき,プリンタに関連する次のような情報を知りたくなる場合があります。

  • IPアドレス
  • インクの型番や値段
  • マニュアル

このような情報はメーカーのサイトやプリンタの設定を調べればわかりますが,調べるにはある程度時間がかかってしまいます。最近流行の拡張現実(AR)技術を駆使すれば,プリンタを見るだけでこれらの情報を知ることができるようになるかもしれませんが,近い将来にそのようなシステムを準備するのは難しそうです。

筆者はGyampを使ってこのような情報を管理しています。手順は次のようになります。

  • プリンタに数字(例:1234)を書いておく
  • プリンタに関するあらゆる情報を書いたWikiページを用意する
  • これをhttp://Gyamp.com/office/1234のようなURLに登録する

このようにしておけば,プリンタに書いてある数字を利用してネット上のプリンタ情報に簡単にアクセスできます。数字をもとにネット上の情報にアクセスするやり方はバーコードでお馴染みのものですが,バーコードは印刷するのも読み取るのも機械が必要なのに対し,ペンで数字を書くのは簡単ですし,数字は目で読むことができます写真2⁠。

写真2 パソコンに貼り付けた数字

写真2 パソコンに貼り付けた数字

WebページやPDFを印刷したとき,印刷された紙からもとのURLや関連情報を知ることができなくなってしまいがちですが,紙に「2345」のような数字を書き込んでおいてもとのURLをhttp://Gyamp.com/office/2345に登録しておけば,もとの情報に簡単にアクセスできるようになります写真3⁠。

写真3 印刷物に書き込んだ数字

写真3 印刷物に書き込んだ数字

このように,数字を使って情報をhttp://Gyamp.com/場所の名前/番号に書いておくことにより,実世界の情報とネット上の情報を簡単にリンクさせることができます。また,同じ場所にいる人に対して「93番の資料が……」のようにして情報共有できるようになります。

IDの長さで公開レベルを制御

出現頻度の高い情報ほど短いIDを利用することは情報圧縮の基本ですが,世の中で利用されているIDもそのような傾向が多いようです。世間で最もポピュラーな情報ソースであるテレビ放送の場合「4」「12」のような短いIDでチャンネルが表現されている一方,自分だけが利用するサービスの場合には「ログインID+パスワード」のような非常に長いIDが利用されています。つまり,公共的な情報には短いIDでアクセスし,個人的な情報には長いIDでアクセスするのが一般的になっていると言ってよいでしょう。

Gyamp上に情報を置く場合,http://Gyamp.com/office/123のようなわかりやすいアドレスだと同僚との情報共有に使えるでしょうし,http://Gyamp.com/toshiykimasui1959/memoのような秘密的なアドレスだと個人的なメモを書くのに利用できるでしょう。この場合はID的なものとパスワード的なものを連結して長いIDとすることによって安全を確保していることになります。

現在のWeb上のサービスは,完全に公開されたサービスおよび完全に個人的な情報を扱うサービスは存在しますが,その中間の適当な粒度で情報共有を行うためのしくみが足りないように思われます。短いIDは公共情報/中間のIDは共有情報/長いIDは個人情報のような使い分けが自然にできるようになれば,IDの長さによって情報共有レベルが簡単に制御できるようになるかもしれません。Gyampのようなシステムの利用法を考えながら,各種のIDの使い方を再考してみたいと思っています。

著者プロフィール

増井俊之(ますいとしゆき)

慶應義塾大学教授。ユビキタス時代のインタフェース技術の研究開発に従事。

本棚.orgGyazoQuickMLFeedTVなど各種のネットサービスを運用中。

http://www.pitecan.com/