「中の人」が語るETロボコンの魅力─何が面白いのか,何に役立つのか

第2回 毎年がチャレンジ!「ETロボコン」競技のルール・機材・開発環境

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

Bluetooth通信の解禁について

昨年までは,競技中のBluetooth通信は禁止としていました。しかし,今年のETロボコン2011では,競技中のBluetooth通信を解禁とすることにしました。Bluetooth通信により,ロボットとPCで連携して制御を行うことが可能です(ただし,PCを人手操作できません)⁠これは,ロボット+PCでひとつの自律制御システムであるという考え方によるものです。

これからの組込み機器はスタンドアロンに存在するだけでなく,通信により外部システムと連携してサービスを提供していくことが重要な要素となると考えています。このため,ETロボコンでも通信を積極的に取り入れていきたいと考えました。通信が解禁されることにより,モデリングの幅も広がると考えています。

ETロボコンの競技内容の変遷

今年の競技内容は,これまでに説明した通りですが,ここで,これまでのETロボコンの競技内容の変遷について,ご紹介したいと思います。

ETロボコンは,2002年にUMLロボコンとして始まったのですが,2002年のコースは,坂道や難所などはなく,黒線が引かれたのみで,単純にライントレース制御を競うものでした。2003年に「坂道」⁠2004年に最初の難所である「点線ショートカット」が採用されました。その後,ほぼ毎年,新たな難所を追加してきています。これは,参加者のモデリング技術が上がってきており,それに対応した難所を提供する必要があるためです。また,参加者には何年も継続して参加される方も多く,そのようなリピータ参加の方向けに新たな課題を提供するという意味合いもあります。

そうした対応がある中で,初めて参加するチームがモチベーション高く学習できるようにと競技レベルのセッティングには毎年たいへん悩みます。

図9 2002年,最初のコース

図9 2002年,最初のコース

図10 点線ショートカット(2004年のコース)

図10 点線ショートカット(2004年のコース)

そして,2010年には,本格的な3D難所である「シーソー」⁠⁠階段」を採用しました。これは,ロボットが教育用レゴ マインドストームNXTベースとなり,2009年までの規定走行体であった教育用レゴ マインドストームRCXベースに比べて,ロボットの基本性能が上がったことにも関係しています。今年は,⁠シーソー」⁠⁠階段」は継続とし,さらに新たな3D難所として,⁠ルックアップゲート」⁠⁠ET相撲」を追加しました。おそらく,これまでの歴史の中で,難易度は最も高いでしょう。今年の参加者の皆さんがどのように攻略してくるのか,たいへん興味深いところです。

なお,競技内容は,ETロボコン本部技術委員会で検討しています。毎年,年明けごろから,競技内容の検討を始めています。最初は,新たな難所や競技内容の変更点についての案をメールベースで議論します。その際は,参加者の皆さんからのアンケート回答も参考にしています。競技内容がある程度固まったら,合宿を行います。合宿では,試作したコースで実際にロボットを走行させて,検証を行いながら,競技内容を決めています。

こうして長い議論の末に,4月後半に競技規約を公開しています。ETロボコンは学生および社会人が参加するイベントであり,参加者のレベルは初心者から企業の中級エンジニアまでと幅広くなっています。したがって,どのレベルの参加者にも有効な技術教育の機会となるように,競技内容の検討を行っています。今後も,参加者の皆さんに有効な技術教育の課題を提供できるよう,頑張っていきたいと考えています。

ロボット制御用ソフトウェアの開発環境

それでは,次にロボットを制御するソフトウェアの基本開発環境についてご紹介しましょう。

ETロボコン実行委員会では,ロボット制御用ソフトウェアの基本開発環境としてnxtOSEKを参加者に提供しています。nxtOSEKは,自動車業界等で使用されているOSEK RTOS(TOPPERS ATK1)をNXTに移植したものです。参加者には,nxtOSEKに関する技術資料(開発環境のセットアップ方法,プログラム作成手順,サンプルプログラムなど)も提供しており,容易に開発を始めることができます。また,nxtOSEKの他に,TOPPERS JSP/ASP,leJOS,UTOSを使用することも認められています。これらのうち,leJOSのみJava言語での開発であり,その他はC/C++言語での開発となります。

なお,ETロボコンでは,倒立制御ライブラリを含む基本開発環境は非競争領域と定めています。ETロボコン実行委員会が準備・認定した開発環境を改変する場合,あるいは,準備・認定したもの以外を利用する場合は,事前に実行委員会の認定を得なければなりません。ここで,認定の条件は,全ての参加者が利用可能であること,および,利用するための技術情報が公開されていることです。

一方,アプリケーション部分は競争領域と定めています。したがって,アプリケーション部分の開発環境については制限がありません。アプリケーション部分の開発に,ソースコード自動生成機能を含むモデリングツールを利用することも可能です。特に今年は,開発支援スポンサー様より,高価なモデリングツールをETロボコン参加者向けに無償提供していただいています。積極的にモデリングツールを利用し,モデリングの効果を実感していただきたいと思います。

今年のETロボコン競技の注目点

今年のETロボコン2011の競技内容および開発環境についてご紹介してきました。今年新たに追加した難所やBluetooth通信について,どのようなモデルが出てくるのか,たいへん興味あるところです。また,昨年から継続した難所やライントレース制御について,新たなモデルが出てくるのかという点についても注目しています。ぜひ,⁠中の人」たちが驚くようなモデルが出てくることを期待したいと思います。

※:レゴ,レゴ マインドストームはレゴ社の登録商標です。

著者プロフィール

西川幸延(にしかわゆきのぶ)

ETロボコン2011実行委員会 本部技術委員長,北陸地区実行副委員長

NECソフトウェア北陸 第三ソリューション事業部 グループマネージャー

コメント

コメントの記入