はじめてのWebアプリケーション

第2部 第3回 Webアプリケーションの誕生

固定的なHTMLコンテンツしか発信できなかったWebが、CGIという新たな手段を得ることで、いよいよWebアプリケーションが登場し始めます。

実はこのころに登場したものと、現在あるWebアプリケーションとを比較しても、プログラム言語や動画配信といった手段やサービスの違いはあるものの、Webに求められているものについての大きな方向性はほとんど変わっていないように筆者は感じています。その方向性とは、その時々に応じた情報を、より高い表現力を駆使して発信したいもしくはそうした情報を受信したいという人々のコミュニケーションに対する欲求です。

なぜWebアプリケーションをわざわざ作成するのかを考えたとき、ほとんどの理由はそうしたところにあるのではないかと思っています。そしてその理由は、どんなWebアプリケーションがこれまで登場してきたかを調べることによって見えてきます。

検索-草創期から登場し、現在も発展が続く分野

この記事をお読みいただいているあなたも、もしかしたら検索でこれを見つけられたかもしれません。検索した結果たどり着くWebサイトの情報は、必ずしもリアルタイムとは限りませんが、情報を欲しているそのときに、それが記述されているWebサイトに出合うことができれば、それもまたユーザにとってはリアルタイムな情報といえるでしょう。

Web上にどのような情報が存在するのかということを知るのは、Webの登場当初はそれほど簡単なことではありませんでした。

そんな折、Webサイトを項目ごとに分類したリンク集が登場します。それが当初のYahoo!です。1994年のことでした(*1)。この試みは大きな注目を浴びたのですが、リンクを順にたどりながら目的のWebサイトを探すのはなかなか大変でした。当時は限られた情報しかありませんでしたし、ユーザが見当をつけた分類に、目的とするWebサイトがリンクされているとも限らなかったからです。

そこで、Webサイトをより簡単に見つけやすくする手段として、リンク集に登録済みの紹介文を、ユーザが入力したキーワードを元に検索できるようにしたのです。それが検索サイト/検索エンジンの始まりです。そしてユーザが直接検索サイトにリンク先と紹介文の登録を依頼できるしくみも登場し、Webサイトの掲載件数もだんだんと増えていきます。一方で、⁠一発太郎」のような検索サイトへの登録を代行するサービスも誕生します(1996年 *2)。

これとは別のタイプの検索サイトも登場します。その1つに全文検索を採用したAltaVistaがあります。AltaVistaの登場は1995年です(*3)。登録済みの紹介文の内容を検索できたとしても、紹介文にWebサイトの内容のすべてが盛り込まれているとは限りません。そこで、Webサイトの内容をまるごと読み込み、それに含まれるキーワードを検索できるようにしたのです。

もともとのAltaVista開発の目的は、それを開発した企業(DEC:Digital Equipment Corporation、Compaqが買収、その後CompaqをHPが買収)が自社サーバの性能を示すためでした。当時の検索の精度(ユーザが閲覧したいと思うコンテンツが上位に並ぶかどうか)は、現在のそれには遠く及びませんでしたが、検索の幅が格段に広がったことが支持され、検索エンジンの主流は徐々に全文検索に移っていきます。

また、全文検索が広がるにつれて、事前に検索サイトに登録された情報のみならず、自動的にWebサイトの情報をかき集めようという動きも広がります。それがロボット型検索と呼ばれるものです。これによって検索対象となるWebサイトの数が桁違いに多くなりました。執筆時現在、Googleでは80億以上のページが検索できるそうです(*4)。

*1 Yahoo!のあゆみ
*2 「一発太郎」誕生秘話
*3 About AltaVista
*4 Google の人気の秘密

ネット掲示板(BBS)-しくみはシンプルだが、Web2.0の基盤を築いた

ネット掲示板(BBSともいう)とは、あるテーマに関する意見をさまざまなユーザが投稿するものです。しくみとしては、ユーザが入力したメッセージを、決まったレイアウトで表示するようになっており、比較的シンプルな構造です(*5)。CGI草創期に最もヒットしたWebアプリケーションのひとつといえるのではないでしょうか。

ネット掲示板アプリケーションがヒットした要因として、Web裏技(1995年~)、KENT-WEB(1997年~)などにおいて、無料で公開されたアプリケーションの存在があったことは否定できません。

自分でプログラムが作れなくても、アプリケーション導入の仕方さえわかれば、ネット掲示板の設置が可能になるというのは、Webサイトの開設者にとって魅力があります。現在は広く普及を遂げているオープンソースによるアプリケーションも、ある程度までは完成しているものをいち早く導入できるという点で似たような魅力があり、支持が広がっています。

単にそうした技術的な部分だけでなく、自分の意見を他人にも知ってほしい、あるいは他人の意見を知りたい、という欲求は、すでにこのころから少しずつネット上に顕在化していたともいえます。

ある人が投げかけたテーマに対して、別の人が何らかの意見を投稿することによって披露するという行為は、ネット掲示板が登場するまでは、雑誌やラジオ番組に投稿するハガキ職人(主に常連の読者および聴取者)が行うことであって、それほど多くの人が行うことではありませんでした。投稿の手段がFAXになったとしても、大きくは変化しませんでした。

ですが、ネット掲示板が開設されるようになってからは、より多くの人が「投稿」を日常的な行為とすることとなり、やがてブログや口コミサイトの登場によって、爆発的な広がりを見せることになります。ブログのエントリーや口コミ情報に対してコメントをつける機能は、ネット掲示板への投稿と、ベースとなるシステムはよく似ています。

*5 現在はセキュリティ対策などで、しくみはより複雑になっています。

これらのWebアプリケーションは、すでに登場して10年以上経つものが多くあります。技術やサービスにおいては季節単位、月単位ともいえるスピードで変化しているWebの世界ですが、Webアプリケーションの形態がこのころとそれほど大きく変わっていない現状は、人がWebに求めているものもそれほど大きくは変化していないことを表しているのではないか、と筆者は思うのですが、あなたはどのように思われますか?

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