ゲームデザインのミナモト

第1回 パックマン―追いかけられる気持ち良さ

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2.5 分

はじめに

みなさんはじめまして。今回から,さまざまなジャンルのゲームについて話をさせてもらうことになりました,おにたまです。

筆者は古くは8ビットパソコンの時代からゲームの開発を仕事にしています。そのほか,初心者向けのプログラミングツールとしてHot Soup Processor(HSP)注1を開発・公開しています。プログラミングの楽しさ,ゲームの魅力などを多くの人に伝えていけたらと思っていますので,よろしくお願いします。

私たちの周りには,家庭用からゲームセンター,さらに携帯端末やWebまで,誰でも手軽にゲームを楽しむ環境があります。そして自分でゲームを作ったり,作りたいと思っている方々も多くいることでしょう。

携帯向けのソーシャルゲームも,据え置きゲーム機向けのリアルな画質のゲームも,根幹には昔から築き上げられてきた「ビデオゲームの遊びのアイデア」があります。この連載では昔からあるゲームのアイデアをその歴史とともに振り返り,新しいアイデアのタネとして開発に役立ててもらえればと思っています。

注1)
詳しくはhttp://hsp.tv/にて情報配信中です。

追いかけられるゲーム

今回は,⁠パックマン」図1に代表される「追いかけられるゲーム」を取り上げます。パックマンは,そのキャラクターとともに著名なゲームです。

図1 1980年に登場し一世を風靡した初代パックマン

図1 1980年に登場し一世を風靡した初代パックマン

©NAMCO BANDAI Games Inc.

これは,1980年に当時のナムコ(現・バンダイナムコゲームス)の岩谷徹氏らにより製作されました。アーケードゲームとして発売したこの作品は,その後世界的なブームになり数多くの記録を打ち立てています。

このゲームの特徴はとにかくシンプルなことです。操作はレバーで行う上下左右4方向の移動のみです。その中で,プレイヤー(パックマン)を操作して,ゴーストに捕まらないように迷路の中にあるクッキー(ドット)を全部食べるというシンプルなルールです。逃げるだけでなく,パワークッキー(通称パワーエサ)を食べることで一定時間だけ敵を食べて反撃ができるというアイデアも秀逸です。

ドットはいわゆるチェックポイントで,すべての地点を通過させるための理由でもあります。全体の中でどこまで達成しているかを一目で把握でき,すべてを消したいという欲求にもつながるうまい仕掛けです。

キャラクターや背景などデザイン的な美しさも手伝って,今見ても30年前のゲームには見えません。⁠ドット絵」というものが認知された原点のゲームがパックマンと言われています。縦横16ドットで構成されたパックマンの登場キャラクターは,記号的な意味とゲームの世界観をつなぐ大きな第一歩でもあったのです。

みんな追いかけられていた

追いかけられるという遊びは,敵が迫ってくるというドキドキ感そのものが演出に変わります。この種のジャンルは「ドットイート」と呼ばれたりしますが,楽しさのキモは,ドットを消すことよりも追いかけられるドキドキ感,そして逃げ切ったときの快感にあるのだと思います。昔から「鬼ごっこ」という遊びがあるように,そこには普遍的な楽しさがあるのではないでしょうか。

パックマンが発表されてから,よく似たルールのゲームが大量に作られました。アーケードゲームだけでなく,当時ホビー向けにも普及を始めていたパソコン(マイコン)用のソフトとしても定番のジャンルとなりました。

これは,ゲーム内容が優れていたことに加えて,ハードウェアスペックの制限も影響していました。当時の8ビットパソコンは,現在と違い画面上の物体を大量に動かすだけの処理能力を持っていませんでした。その点でパックマンのようなドットイートゲームは,背景となる迷路とドットさえあれば,あとはプレイヤーと追いかける敵を動かすだけで済むところがパソコンに向いていたのです。

また,パックマンは迷路のパターンが1種類しかありません。ゲームをクリアしていっても同じステージが続くストイックな作りです。それだけに非常に考え抜かれた注2形状になっているのですが,⁠別な形の迷路で遊びたい」⁠こんな形にするとどうなるか…」という欲求をパソコンソフトならばプログラムを改造するだけでかなえられます。こうした背景も手伝って,パソコンで多く作られたのだと思います。

しかしながら多くの類似品は,オリジナルのパックマンが持つ完成度を越えることはありませんでした。余計な操作や要素を加えることで煩雑になってしまう場合が多く,もともとあった追いかけっこを楽しむという部分が薄れてしまうのです。オリジナルは,敵から逃れるためのワープトンネルや,目には見えないけれど敵が入ってこない一方通行の道などの要素がシンプルゆえに深く作りこまれ,完成されていたと言えるでしょう。

注2)
何度もテストプレイを繰り返し,プレイヤーがよく捕まる地点などを集計しながら,迷路の形を修正していったと岩谷徹氏は語っています。

著者プロフィール

おにたま

ゲーム制作の仕事をする傍ら,プログラミング環境「Hot Soup Processor(HSP)」を作成したり,書籍の執筆などを行っている。古くは「テクノポリス」(徳間書店インターメディア)にてゲーム製作講座を連載していたのを始めとして,「TECH Win」(エンターブレイン),「Windows100%」(晋遊舎),「日経ソフトウエア」(日経BP)などの雑誌に執筆を行ってきた。また,アーケードゲームを中心とした古いゲームの内容や開発の歴史について掘り起こしを行っており,活動の一部は講演やYouTube動画により発表している。

Webページ:http://www.onionsoft.net/

執筆書:「最新HSP3.2 プログラミング入門」(秀和システム),「無料ツールでゲームプログラミングHSP編」(エンターブレイン)ほか

コメント

  • Re:

    平安京エイリアン…
    復活して欲しいよ

    Commented : #1  詠み人知らず (2011/06/17, 12:37)

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