ゲームデザインのミナモト

第5回 ロールプレイングゲーム―長く楽しめる冒険と成長のアイデア

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コンピュータ上で動くRPG

ロールプレイングゲーム(RPG)というジャンルは,現在でも「ドラゴンクエスト」シリーズ注1「ファイナルファンタジー」シリーズ注2をはじめとしたメジャーなゲームが存在し広く認知されています。その名の通り,ロール(役割)をプレイする(演じる)ことを楽しむ遊びで,その起源は兵士のコマを動かして遊ぶ卓上の戦争ゲーム(ミニチュアゲーム)だと言われています。

その後,ファンタジーの世界でプレイヤーが戦う「ダンジョンズ&ドラゴンズ」⁠D&D)注3が1974年に発売され大ヒットします。ボードやフィギュア,20面体のサイコロを使った緻密な内容は,家族で楽しむボードゲームとは違った新しい世界を見せてくれたのです。コンピュータゲームと区別するため,このような卓上のゲームは,日本ではテーブルトークRPGと呼ばれています。

D&Dでは,最初にプレイヤーが,クラス(職業)のほか,筋力,敏捷力,知力など自身の能力に関するさまざまなパラメータを持つキャラクターを作成し,ゲームの中で育てていきます。ダンジョンを探索し,敵を倒して経験値や宝物を得てパワーアップするという現在のRPGにも通じる基本的な要素はこの時点で盛り込まれていました。これをコンピュータ上で再現したものが,現在のRPGへとつながっていきます。

Apple II上で動作する「Akalabeth:World of Doom」注4)⁠⁠Wizardry」注5や,UNIX上で動作する「Rogue」注6などがコンピュータ初期のRPGタイトルと考えられています。

注1)
最初の作品である「ドラゴンクエスト」は1986年チュンソフト開発,スクウェア・エニックス(旧エニックス)発売(ファミリーコンピュータ)⁠
注2)
最初の作品である「ファイナルファンタジー」は1987年スクウェア・エニックス(旧スクウェア)発売(ファミリーコンピュータ)⁠
注3)
Tactical Studies Rulesが発売。卓上で遊ぶウォーゲームをベースにした,当時はまったく新しいジャンルのゲームでした。
注4)
Ultima(後述)の作者Richard Garriott氏による初期のRPG。California Pacific Computer Company発売。
注5)
1981年Sir-Tech発売。ファンタジーRPGの標準を作った記念碑的作品。
注6)
1981年,Michael ToyとGlenn Wichmanらによって開発されたテキストのみで構成されたRPG。

成長する主人公

D&Dをはじめとする卓上のRPGでは,パラメータ,シナリオ,マップなど非常に多くの情報をゲームマスターと呼ばれる人間が管理します。これは,ゲームのシナリオやバランスをゲームマスターが作ることを意味し,経験と才能が必要な作業です。

こうした作業はまさにコンピュータに置き換えるのに適したものでした。ゲーム内容をセーブするという行為も,ちょうどコンピュータと記憶装置(フロッピーディスクなど)が普及した当時に得られた新しい体験だったのです。それまで主流だったアーケードゲームは,終わってしまえばそれまでで,次はまた最初から遊ぶのが普通です。一方RPGでは,それまでに得たプレイヤーの能力値やお金を保存し,続きからまた育てることができます。それまで勝てなかった相手にも,ゲームを遊び続けていれば勝てるようになるという希望が与えられているのです。この「主人公が成長する」という要素こそがRPGの大きな特徴であり,長く楽しめる要因でもあります。

広大な世界の冒険

コンピュータ上のRPGが登場した1980年代初頭は,アドベンチャーゲーム注7の登場とも重なっています。

RPGにはアドベンチャーゲームと同様に冒険の要素も含まれており,謎解きの代わりに戦闘を行って探索を続けるという楽しみがありました。その要素が強かったのが,⁠Ultima」シリーズ注8です。マス目状に区切られたマップを俯瞰(ふかん)する画面は,ドラゴンクエストに代表される2DマップによるRPGの元祖と言ってよいでしょう。

Ultimaのマップはとにかく広く,ダイナミックに冒険ができる作りになっていました。船や馬といった乗り物だけでなく,宇宙船に乗り込み別の星に移動することすらできるスケールの広いものでした。マップ上には敵のシンボルが存在しており,プレイヤーが接触することで戦闘になります注9)⁠スクロールする2Dのマップを冒険する最初期のゲームと言えるでしょう。

それに対して本家のD&Dに忠実な作りになっているのが,Wizardryシリーズです。3D迷路として描かれるダンジョン内で突然敵と出会うスタイルは,ドラゴンクエストの戦闘シーンにも引き継がれています。硬派で王道を行くWizardryは,プレイヤーが作成したキャラクターを最大6人のパーティーで編成し,武器や装備,アイテムをそろえながら育てていくという現在の標準的なスタイルを確立しました。戦士を前衛として配置し,僧侶や魔法使いが後衛でパーティーを援護するといった戦略的で細かい戦闘のルールや,キャラクターの善悪がパーティーを組む制約になるなど,設定の緻密さと奥深さも大きな特徴です。

注7)
詳しくはWEB+DB PRESS Vol.64の本コラムで取り上げています。gihyo.jpでも公開しています。
注8)
1980年Origin Systems発売(Apple II)⁠息の長い大作タイトルとなりました。初版のコピーライトは1980年ですが,1981年リリースとされることもあります。
注9)
ちなみに,Ultima IIまではプレイヤーは一人で冒険しており,Ultima IIIからパーティー制の戦闘となります。

著者プロフィール

おにたま

ゲーム制作の仕事をする傍ら,プログラミング環境「Hot Soup Processor(HSP)」を作成したり,書籍の執筆などを行っている。古くは「テクノポリス」(徳間書店インターメディア)にてゲーム製作講座を連載していたのを始めとして,「TECH Win」(エンターブレイン),「Windows100%」(晋遊舎),「日経ソフトウエア」(日経BP)などの雑誌に執筆を行ってきた。また,アーケードゲームを中心とした古いゲームの内容や開発の歴史について掘り起こしを行っており,活動の一部は講演やYouTube動画により発表している。

Webページ:http://www.onionsoft.net/

執筆書:「最新HSP3.2 プログラミング入門」(秀和システム),「無料ツールでゲームプログラミングHSP編」(エンターブレイン)ほか

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