ゲームデザインのミナモト

最終回 シューティングゲーム―本能的な楽しさと様式美の追及

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古くからある定番のジャンル

ゲーム誕生初期から現在まで,非常に多くの作品が作られてきた定番ジャンル,それがシューティングゲームです。弾を発射するという行為や,対象を狙い破壊するというわかりやすさが根源的な楽しみを提供していると言えます。今回は,その中でも深い歴史を持つ2Dのシューティングを取り上げます。

初期のアーケードゲームで見られたシューティングは,戦いや戦争をテーマにしたものが多く,お金を入れると一定時間だけ遊べて,その間に得られるスコアを競うという時間制のものがほとんどでした。これは,まだソフトウェアではなく電子回路によりゲームが作られていたため,複雑な処理ができなかったことに起因します。敵を動かすことも難しいため,⁠Tank」注1や,⁠ウエスタンガン」注2といったタイトルに代表される2人で対戦するスタイルが一般的でした。

注1)
1974年,Kee Games発売(アーケード)⁠2人のプレイヤーが迷路内をタンクで移動して撃ち合うゲームです。
注2)
1975年,タイトー発売(アーケード)⁠2人のプレイヤーがガンマンのキャラクターを操作して撃ち合うゲームです。

2D表現の時代

シューティングゲームがメインのジャンルに踊り出るのは,ソフトウェアによりゲームが作られるようになる1970年代後半からです。その代表的なタイトルが,当時国内で大ブームを巻き起こした「スペースインベーダー」注3写真1,2です。ゲームセンターの爆発的な増加をもたらし,ビデオゲーム産業の基礎を築いたと言っても過言ではありません。しかし,その内容があまりに異質だったため,発売当初はヒットを誰も予想していませんでした。

写真1 ⁠スペースインベーダー」のゲーム画面。それまでのゲームにはない,戦略や奥深さを持つアイデアが詰まっていた

写真1 「スペースインベーダー」のゲーム画面。それまでのゲームにはない,戦略や奥深さを持つアイデアが詰まっていた

©TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.

写真2 1978年ごろの当時の模様。⁠インベーダーハウス」と呼ばれるスペースインベーダーのみを置くゲームセンターが各地にでき,社会現象にまでなった

写真2 1978年ごろの当時の模様。「インベーダーハウス」と呼ばれるスペースインベーダーのみを置くゲームセンターが各地にでき,社会現象にまでなった

©TAITO CORPORATION 1978 ALL RIGHTS RESERVED.

それまでは,敵の動きに合わせてタイミング良く弾を撃ったり,避けることが中心だったのに対して,スペースインベーダーは能動的に自機を移動させて敵を狙い撃つことができる自由度の高いものだったのです。これを契機に,画面下を自機が左右に移動して,画面上の敵にミサイルを発射するというシューティングのスタイルが一般的になりました。

日本で生まれたスペースインベーダーは世界中に輸出され,大ヒットとなりました。その後登場した「ギャラクシアン」注4は,敵の飛行パターンなど細かい動きにもこだわった画期的なビジュアルを誇っており,その電子回路技術は,ビデオゲーム基板の標準として後の作品に大きな影響を与えました。

こうしたヒットにより,日本製シューティングの様式が世界中を席巻することになります。

注3)
1978年,タイトー発売(アーケード)⁠国内で社会現象になり数々の伝説を作ったビデオゲームの大ヒット作です。
注4)
1979年,ナムコ発売(アーケード)⁠

王道を行く縦スクロール

1980年代のアーケードで,日本が世界で優位に立った理由の1つは,ハードウェアにあります。スプライトと呼ばれる技術により平面の画像を高速に美しく描画できたのです。当時,アーケードはPCと比較しても格段にきれいな映像表現ができていました。こうしたビジュアル面も含めた一つの到達点が,1983年の「ゼビウス」です。ゆっくりとスクロールしながら進む背景の上で地上と空中の敵を撃破するという内容は,縦スクロールシューティングの基礎を確立しました。

背景がスクロールするゲーム自体は,⁠Avenger」注5「Bomber」注6など1970年代から存在していました。しかし,それらが同じ背景の繰り返しだったのに対して,ゼビウスはその世界観とともに,ステージが進むと現れる謎に包まれた新たな背景がプレイヤーの好奇心を刺激しました。また,プレイヤーの動きに応じて回避を行うといったリアルな敵の動きも,当時としては珍しいものでした。

このような縦スクロールのシューティングは,その後多くのメーカーが追従しました。特に本能的な楽しさを追求していた「タイガーヘリ」⁠究極タイガー」注7といったタイトルや,誰にでも楽しめるバランスで,後に家庭用ゲーム機にも登場した「スターフォース」注8などのヒット作が次々に生まれました。1980年代は,多くの人がシューティングに熱狂した時代であり,その中で急速に進化したジャンルと言えるでしょう。

横方向など縦以外にスクロールするゲームも作られ,後にヒット作も生まれましたが,全体として主流にはなりませんでした。これは,人の視線移動の特性で縦のほうが状況把握がしやすいためとも言われており,今でも縦方向を好むプレイヤーは多くいます。

注5)
1975年,Electra Games発売。初期の縦スクロール表現を使用したゲーム。背景に雲が流れる中で,敵の戦闘機を倒します。
注6)
1977年,セガ発売(アーケード)⁠初期の横スクロールゲーム。戦闘機を操作して地上物に爆撃を行う横視点のゲームです。
注7)
それぞれ1985年,1987年。タイトー発売(アーケード)⁠東亜プランが開発を担当。
注8)
1984年,テーカン発売(アーケード)⁠

著者プロフィール

おにたま

ゲーム制作の仕事をする傍ら,プログラミング環境「Hot Soup Processor(HSP)」を作成したり,書籍の執筆などを行っている。古くは「テクノポリス」(徳間書店インターメディア)にてゲーム製作講座を連載していたのを始めとして,「TECH Win」(エンターブレイン),「Windows100%」(晋遊舎),「日経ソフトウエア」(日経BP)などの雑誌に執筆を行ってきた。また,アーケードゲームを中心とした古いゲームの内容や開発の歴史について掘り起こしを行っており,活動の一部は講演やYouTube動画により発表している。

Webページ:http://www.onionsoft.net/

執筆書:「最新HSP3.2 プログラミング入門」(秀和システム),「無料ツールでゲームプログラミングHSP編」(エンターブレイン)ほか

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