ヒューマンリソシアのGITサービスが目指す、時代にアジャストするエンジニアチームの作り方

第3回スミセイ情報システムの事例に見る海外エンジニアと働くメリット

スミセイ情報システム株式会社 システム企画・開発・運用メンバー
スミセイ情報システム株式会社 システム企画・開発・運用メンバー

住友生命保険相互会社のシステム企画・開発・運用を担い、同グループのIT戦略を支え続けているほか、保険や金融などの分野の企業に対してシステムインテグレーションを提供しているのがスミセイ情報システム株式会社(以降:SLC)です。

同社の「ITA企画部」では、海外ITエンジニアを派遣するヒューマンリソシアの「GITサービス」を活用しており、インド出身のデータサイエンティスト、アカシュ氏が活躍しています。

ヒューマンリソシアのGITサービスは世界各国からエンジニアを採用し、国内の企業に派遣するサービスで、全国300社超の企業が活用しています。採用しているエンジニアは、海外の教育機関でテクノロジーを専攻するなど技術に精通しているほか、日本に興味・関心を持ち、日本で働きたいと高い意欲を持つエンジニアたちで、AIやIoT、データサイエンスなど、さまざまな分野のエンジニアが在籍しています。またヒューマンリソシアでは、日本のIT開発プロジェクトで働く上で必要となる日本語コミュニケーション力の養成に力を入れており、海外出身のエンジニア採用で不安視されることが多い言語の面でも安心感があります。

今回、SLCがこのGITサービスを通じてアカシュ氏を受け入れることに至った背景、あるいは海外ITエンジニアの強みなどについて、同社のITA企画部 AIコンサルタント 西川達哉氏、ITA企画部 データサイエンティスト 金井聡氏にオンラインインタビューにてお話をいただきました。

インド出身のITエンジニアをデータサイエンティストとして活用

――ITA企画部の業務内容を教えてください。
スミセイ情報システム株式会社
ITA企画部 AIコンサルタント
西川達哉氏
スミセイ情報システム株式会社 ITA企画部 AIコンサルタント 西川達哉氏

西川:ITA企画部は2年前に発足した新しい部門で、最新のテクノロジーをキャッチアップして全社的なトレーニングを展開しているほか、SLCとしてどういった技術を推進するのかといったことを企画・検討する部門になります。

――人材採用や人材育成に関して、どのような課題を感じていますか。

西川:従来から人材育成を進めてきたシステムインテグレーション業務に加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)に対応できる人材の育成を進めていかなければならないと感じています。たとえばAI(機械学習)やデータサイエンス、クラウド、Webアーキテクチャなど、最新の技術がさまざまな局面で使われるようになっています。そうした技術に対応できる人材の育成は、私たちにとっての課題の1つとなっています。

――SLCでは、今回GITサービスを通じて受け入れているエンジニア以外にも、海外出身の方はいらっしゃるのでしょうか。

西川:はい。とくにここ数年、中国など海外から来日されるエンジニアの方は珍しくなくなっています。私たちの近くにも普通に海外出身のエンジニアが働いています。

――ヒューマンリソシアのGITサービスを通じて、インド出身のエンジニアが活躍されているとのことですが、そもそも海外のエンジニアを活用しようと考えた背景を教えてください。

西川:私たちのチームはITA企画部の中でデータ分析などに取り組んでいるのですが、現在の日本の人材マーケットではデータサイエンティストはかなり不足していて、そういった技術に特化した人材を採用することが難しいという背景がありました。

多くの人材サービス会社ともお付き合いしていますが、そこでデータサイエンティストの派遣や紹介をお願いすると、金額とスキルの面でミスマッチが起きることがあり、当方のニーズに合わない場面がありました。

そのような中でヒューマンリソシアからご紹介いただいたアカシュさんは、大学ですでに一定の技術を学んで実践した経験があり、加えてハングリー精神がすごく強いと感じたので、ぜひ一緒に仕事をさせていただきたいと考えました。

――アカシュさんとはじめて会ったときの印象を教えてください。

西川:強く印象に残っているのは、日本語がうまかったことで、こんなにも話せるのかと思いながら彼の話を聞いていました。また経歴についても、大学で機械学習を学んでいたことがわかったほか、さきほどお話したようにハングリー精神が強く、⁠日本で働きたい」⁠機械学習を活用した仕事がやりたい」という強い意思を感じました。

――アカシュさんは若いエンジニアで、実績や経験はそれほどありませんでしたが、その点は気になりませんでしたか。

西川:もちろん経験が多いに越したことはないのですが、今回の件で言えば優先順位はそれほど高くはありませんでした。むしろ本人のマインドや、どういった技術を学んできたのかを重視しました。

アカシュさんの場合は、機械学習という専門的な知識が求められる領域での採用事例だったため、それに関する知識を持っていることを重視しました。

機械学習を用いて既存データから予測モデルを構築

――アカシュさんの受け入れ時には、特定のプロジェクトにアサインすることが前提だったのか、それとも機械学習のエンジニアとして社内で広く働いてもらうことを前提にしたのか、どちらだったのでしょうか。

西川:どちらかというと、特定のプロジェクトにアサインする前提で、来ていただきました。あるプロジェクトに配置する要員が不足していたため、そこで働いてもらうことが前提でした。

スミセイ情報システム株式会社
ITA企画部 データサイエンティスト
金井聡氏
スミセイ情報システム株式会社 ITA企画部 データサイエンティスト 金井聡氏

金井:そのプロジェクトは、機械学習を用いて、それまでに蓄積したデータを分析して将来を予測するためのモデルを構築するものです。

このプロジェクトの主担当は、私とアカシュさんの2人で務めました。私がユーザー部門とコミュニケーションをとって分析要件の明確化などを行い、その内容をアカシュさんに伝えて実際の分析作業をしていただく、といった流れで進めました。

このプロジェクトは、一度中断した後に、分析アプローチを変えて再スタートしたという経緯があります。アカシュさんには、この再スタートのタイミングで加入していただきました。そのため、ゼロからのスタートと比べるとやりやすい部分はあったかもしれません。一方で、データ分析や予測モデルの構築はやってみないとわからない部分が大きく、2人で試行錯誤しながら進めました。

――実際に作業する中で、日本語でのコミュニケーションについては問題なかったでしょうか。

西川:日本語の複雑な言い回しや比喩表現、省略語はアカシュさんには難しい部分がありますが、日常会話はまったく問題はありませんでした。

――アカシュさんの評価を伺わせてください。

西川:つねに前向きにさまざまなことに取り組んでいただいており、非常に感謝しています。また、アカシュさんにとっては日本語でのコミュニケーションは難しい面があったと思いますが、それでも積極的にお話をしていただきました。そういった点も我々からするとありがたかった部分です。

――プロジェクトの期間はどの程度だったのでしょうか。

金井:3カ月間です。そして、このプロジェクトが完了した後も、アカシュさんには引き続き別のプロジェクトを担当いただいています。

西川:現状は次に実施するプロジェクトに向け、自然言語処理などの技術調査・実践をアカシュさんにお願いしており、調査・実践してもらった技術を使って次のプロジェクトの立案を実施・検討する予定です。

この調査・実践において、アカシュさんは対象とする技術を高度な部分まで理解いただいており、また、チームメンバーへのフィードバックもしっかり行っていただけるので、非常に助かっています。また、⁠ある技術について調べておいてください」といったように、曖昧な状態でお願いすることもありますが、それでもこちらのニーズをふまえてしっかり調査いただけるのも助かる部分です。

――当初から、そうした調査まで依頼することを想定されていたのでしょうか。

西川:当初は想定していませんでした。もともとデータ分析のプロジェクトに入っていただき、そこで分析してもらった結果を我々がチェックする、といった進め方を検討していたのですが、アカシュさんが非常に優秀な方だったことから、ヒューマンリソシア社のご担当者と協議のうえ、調査・実践の作業についてもお願いするようになりました。

プロジェクトに入ってもらって3カ月間、アカシュさんの働きぶりを見たり、いろいろなお話をさせていただいたりする中で、⁠もっとできるんじゃないか?」ということで、高度な業務にも対応していただくようになった、という流れです。

将来に向けて海外ITエンジニアと一緒に働く経験を積み重ねたい

――ヒューマンリソシアのGITサービスについては、どのように評価されていますか。

西川:もともと外国人エンジニアの方は、これまでにご一緒した経験もありますが、コミュニケーションの部分で難しさがあるのではないか、お願いできる業務が限定されるのではないか、という少々の懸念がありました。しかし実際にアカシュさんに会って、そうしたイメージはだいぶ変わりました。

アカシュさんとの出会いで驚いたのが彼のハングリー精神の強さです。こういうことをやりたいといった目標が明確で、それに向けてしっかりと努力している。学ぶ意欲の強さやその姿勢は私たちも見習わなければならないと感じているところです。

――海外ITエンジニアの技術力については、どのように見ていますか。
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西川:これまで接したことがあるエンジニアに限定した話となりますが、総じて、技術力は高いと思っています。日本の企業の中でも、十分に戦力として通用するレベルだと考えています。

お客さまと向き合うことを考えた場合、日本語の細かいニュアンスまでくみ取ることが求められると厳しい面もありますが、技術的な部分であれば、我々が求めたものに対してしっかり応えてくれるという印象です。

――これからの海外ITエンジニアに期待することとしては、どういったことが挙げられますか。

西川:AIや機械学習といった領域のエンジニアは、これからさらにニーズが高まっていくと思っています。そうしたスキルを持った方々が増えるとありがたいですね。

それとやはり日本語で、スムーズにコミュニケーションが取れるかどうかは大きなポイントになります。とくにテレワークが進む現状では文章を読むことも重要になると考えています。テレワークではメールやチャットでのコミュニケーションが飛び交いますが、日本語の文章には「漢字」⁠ひらがな」⁠カタカナ」が入り交じるので、文章を読み、理解できることは重要なファクターではないかと思います。

さらにデータ分析であれば、Excelを使うことも少なくありません。そうしたビジネスアプリケーションにも慣れているとありがたいですね。

――今後もGITサービスを利用する可能性はありますか。

西川:あります。少子高齢化で生産年齢人口が減少し続けていて、AI・機械学習の領域では海外のエンジニアスキルが高いといった状況を鑑みると、日本人だけで働くのは現実的ではないと考えています。今後、10~20年といった長いスパンで考えたときには、海外のエンジニアの方と一緒に仕事をする機会は間違いなく増えていくと思います。

そうした将来を見据えると、文化の違いなどを乗り越えて海外のエンジニアと一緒に働くといった経験を積み重ねていくことは重要ですし、今後もGITサービスを活用して優秀な海外エンジニアを採用していきたいと思います。

――本日はありがとうございました。

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