GW短期集中連載!マイクロはちゅねで楽しいネット工作の世界へ

第4回体と頭脳をつなぐインターフェース回路を組み立てる

マイコンだけがあってもネギは振れない

前回は、ネギ振りを自動化するためのマイコン・プログラミングの概要を説明しました。しかし、実際にネギを振らせるには、1個のICでしかないマイコンだけではどうしようもなく、(電磁石)や電源をつながなければなりません。そのためには、プログラミングとはまた違った、電気に関する知識が若干必要となります。今回はそれを説明します。

マイクロはちゅねに最低限要る回路

マイクロはちゅねの最も素朴な回路構成を図1と以下のPDFに示します。回路図に抵抗感があるかもしれませんが、マイクロはちゅねのような小電流・低速な回路では細部に神経質になる必要はありません。大まかな意味を把握すれば大丈夫です。

回路は大きく分けて、コイル駆動部、マイコン部、電源部の3つのブロックからなります。その名前のとおり、マイコン部はマイコンのICそのもの、コイル駆動部は電磁石とマイコンをつなぐためのインターフェース回路、電源部はマイコンや電磁石への電力を供給する回路です。どのようなマイコン工作でも、これらの回路は必ず必要になってきます。

図1 マイクロはちゅねの回路構成。マイコン工作としては最も簡単な部類
図1 マイクロはちゅねの回路構成

部品の意味が分かると面白いコイル駆動部

今回の鍵となるコイル駆動部から説明します。複雑に見えますが、この回路ができてくる過程を理解すれば、とくに難しいものではありません。

マイコンで制御したくなるパーツとしては、モーター、リレー(はちゅねの電磁石もこれと同類⁠⁠、LED、電球など各種ありますが、土台となる回路は共通です。図2のとおり、駆動する部品の一方を電源の+か-につなぎ、他方をマイコンのI/Oポートにつなげば部品のON/OFFができます。要するにマイコンがスイッチということです。

ここで注意する必要があるのは、部品を電源の+につないだ場合はI/Oポートの電圧がLow(プログラムでは0を書く)でON、-につないだ場合はHighでONになることです。電流の向きも逆になります。どちらでも良さそうなものですが、両者の最大電流が異なる場合などに使い分けの必要が生じます。

図2 電磁石とマイコンをつないだときの電流の流れ方。これを把握すると、I/Oポートにどのような値を書くと何が起きるか理解できる
図2 電磁石とマイコンをつないだときの電流の流れ方

さて、図2を土台として図1の回路に至る過程を、図3に示します。

図3 マイコンでは直接コイルを駆動できないので、いろいろな保護を付け加えていく。この過程を知ると、部品の意味を把握できる。モータやリレーを駆動するときも同様の回路になる
図3 マイコンでは直接コイルを駆動できないので、いろいろな保護を付け加えていく

図3-1図2の回路図です。この回路では、コイルの巻き数にもよりますが数十mA~数Aの電流が流れます。たとえば電源電圧が5Vでコイルの直流抵抗が50Ωなら、100mA流れます。ところが、マイコンのI/Oポートに流せる最大電流は20mA~40mA程度なので必ずデータシートの絶対最大定格の欄を確認してください⁠、このままではマイコンが壊れる原因になります。このため、図3-2のようにFET(電界効果トランジスタ)という電子的なスイッチを外付けします。品種によりますが、小型のFETでも数百mA~数十Aの電流を扱えます。

さらに、電磁石、モータ、リレーなどのコイルを駆動するときには、図3-3のようにダイオードを入れます。ダイオードとは、図の矢印の方向のみに電流を通す部品です。これをつけないと、コイルがOFFした瞬間に数十V~数百Vといった電圧がFETへかかり、壊れる原因となります図3-2⁠。この電圧は電流の大きさとON→OFFにかかる時間から決まるので、FETのゲートに抵抗器を入れて電流変化をゆっくりにする場合もあります(ゲート抵抗には他の意味もあるが、ここでは省略⁠⁠。また、コイルの直流抵抗が小さいときは、抵抗器を入れるなどの方法で電流を制限し、コイルが焼けたりしないよう保護します。これはLEDを駆動する時なども同じです。

マイクロはちゅねのように扱う電流が高々100mA程度で小さいときは、以上のような保護回路を忘れても、わりあい平気で動いてしまいます。しかし、ロボットやラジコンのモータ制御などをするつもりなら、数Aや数十Aの電流を扱うことにもなるので、丁寧に回路を設計しなければなりません。そうしないと、すぐに回路が焼けてしまったりします。

電源まわりの回路は電圧や電流を考えて作る

コイル駆動部に続いて、電源まわりの回路を見てみましょう図4⁠。

図4 最近のマイコンは3.3V~5V駆動である場合が多い。電源電圧をどうするかは、他の回路や各種デバイスとつなぐときに、とくに良く考えなければならない。また、誤動作防止用のコンデンサを省略しないこと
図4 最近のマイコンは3.3V~5V駆動である場合が多い

電源を考えるにあたっては、まず、電圧を決める必要があります。最近のマイコンは3.3V~5Vの範囲で動くものがほとんどです。マイクロはちゅねを単独で動かすなら、この範囲内であれば何でも構いません。しかし他の回路とつなぐなら、出来るだけ統一するようにします。電源電圧の異なる回路どうしは、単純にはつなげられないからです。電圧が食い違う問題は、センサやアクチュエータなどを複数種つなげる時などに良くぶつかるものです。

回路全体の消費電流についても見通しを立てる必要があります。マイクロはちゅねのような小電力・低速な回路なら、どのように電源まわりを作っても大して問題ありません。しかし、アンペア単位の電流になったり100MHz単位の動作速度になったりするなら、話はかなり違ってきます。回路が安定して動くかが、電源まわりの設計や実装に大きく依存するようになります。

電源そのものとしては、ACアダプタや電池などが考えられます。これらを直接マイコン等につなぐのではなく、一定の電圧にするため定電圧レギュレータという素子を通します(レギュレータを選ぶとき、十分な電流容量のものにすること⁠⁠。電池にもアルカリ電池、リチウム電池、酸化銀電池、空気電池、鉛蓄電池など多くの種類があり、それぞれ供給できる電圧・電力や大きさが違います。最近の携帯機器などでは、リチウム・ポリマー電池が高電圧(3.7V⁠⁠・大容量・小型軽量なので良く使われています。マイクロはちゅねも、動かす場所に応じてそれらを適宜使い分けています図5⁠。

図5 電源にACアダプタなどが使えないなら電池駆動になる。電池にも多くの種類があり、サイズや必要な電力・電圧などを元にして選定する。最近はリチウムポリマー電池が良く使われる
図5 電源にACアダプタなどが使えないなら電池駆動になる

電源まわりで忘れてはならないのが、マイコンなどの誤動作防止用のコンデンサバイパス・コンデンサ図4です。これもまた、手抜きで省略しても何となく動いてしまったりする部品ですが、分かりにくい誤動作の原因になったりするので丁寧に入れる癖をつけましょう。

検討が必要になる他の回路

普通は、マイコンを動作させるためのクロック供給源やリセット回路についても検討が必要となります。マイクロはちゅねでは、クロック源はPICに内蔵のオシレータを使い、リセットはPIC内蔵のパワーオン・リセット機能を使うことにしています。


今回説明したとおり、物を実際に動かそうとすると、電圧や電流について程度の差こそあれ意識をしなければなりません。純粋なプログラミングやディジタル回路設計には無いセンスですが、その基礎を掴むうえでマイクロはちゅねは良い素材です。次回は、マイクロはちゅねを発展させていく話です。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧