日本から米国へ、米国から日本へ。IT系スタートアップ企業の海外ビジネス最前線

第2回世界の市場の80%を失っている日本のIT系企業~btrax(ビートラックス)CEO、Brandon Hillさんインタビュー

Brandon Hillさん。
gihyo.jpの連載などでもおなじみ
Brandon Hillさん。gihyo.jpの連載などでもおなじみ

米国から日本市場へのアプローチがある一方、日本から米国進出を図る企業も一層、盛んになっています。米国企業の日本進出、日本企業の米国進出をサポートする、btraxビートラックスCEOのBrandon Hillさんにお話しを伺いました。

海外展開を希望する日本のスタートアップ企業の機運が上昇中

Q:日本企業の米国進出の状況を教えてください。

btraxは、元々、日本進出を図る米国企業のサポートがメインだったのですが、昨年から、日本企業の米国進出のサポートを開始しました。海外展開を希望する日本のスタートアップ企業の機運を感じていて、我々も何かの役立てればという思いから、昨年10月「Japan Night」というイベントを行い、それをきっかけに日本企業の米国進出の引き合いが一気に増えた流れです。

btraxは創業から7年間の累計で約160社のサポートを行っていて、現在進行中のクライアント件数は約15社あるのですが、その内70~80%を日本企業が占めています。日本企業の比率が増えた理由は、円高という要因もありますし、日本企業の海外展開がブームになっていることが挙げられますね。

日本企業の海外進出には、いくつかのパターンがあり、単に海外市場へフィールドを拡大してユーザを獲得したいという場合もあれば、ゼロから立ち上げて資金調達も海外で行うパターン、そして、逆輸入型というか日本でもっと注目されるために海外で話題になって差別化を図るパターンなどに分けられます。

日本企業の大部分が日本国内のユーザのみを対象にサービスを提供している状況は、世界の市場の80%を失っているイメージで非常にもったいないと思いますし、実際、日本に行くと日本市場に限界を感じている人が多いことを実感します。費やすエネルギーに対するリターンが割に合わないという考え方がスタートアップ企業の若い人を中心に広がり始めているような印象を受けます。

米国では、ビジネスありきのエンジニアリングが常識。「これをやれば、これだけ儲かるんだ!」というビジョン

Q:ビジネスにおいて日米どのような違いがありますか?

米国の場合、イベントやコンテスト等を遊び感覚でやるにしても、必ず、どのようにお金につながるかということが考えられています。ビジネス面がはっきりしないまま何かを始めるということは、ベイエリアではあり得ません。エンジニアが何か始めるときにも必ずビジネス面を考える。これは暗黙の了解です。

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米国では、ビジネスありきのエンジニアリングが常識なのですが、日本のエンジニアの視界からビジネスの部分がすっぽり抜けてしまっている場合が多く見受けられます。これは日本のエンジニアの1番の弱点です。米国のスタートアップ企業の場合、エンジニアが創業者としてはじめたとしても、成長期になると、GoogleやTwitterのようにCEO職や経営者を外部から雇うケースが多いです。

後は、⁠夢⁠の違いを感じますね。⁠これをやれば、これだけ儲かるんだ!」というビジョンを日本の人たちは見えていない気がします。⁠大成功する⁠ことが想像もつかない状態なのではないでしょうか。

今後は、世界を席巻する革新的なサービスがアメリカ以外からも出てくる

Q:日本企業の米国展開で成功の兆しは見え始めましたか?

日本のIT企業が米国で成功し始めたという点では、まだまだです。数年前まで、チャレンジする母数がそもそも少なかったという理由もあり、最近は、母数が増えてきたので、芽が出そうな感じのところは何社か現れ始めました。米国でのビジネスを成功させるには、3種の神器として、⁠1.プロダクトが良い⁠⁠2.ビジネスセンスがある⁠⁠3.英語できちんとコミュニケーションできる⁠の3点がそろっていないといけません。今の日本のスタートアップ企業では、どれか欠けているパターンが多いことが惜しいですね。

逆に、日本企業の強みを挙げるとしたら、とことん頑張れることです。日本のエンジニアらは根気良く作り続けられるのが強みだと言えます。

今後は、世界を席巻する革新的なサービスがアメリカ以外からも出てくると思います。それは時間の問題ですね。自動車も発売当初はフォードが中心で日本車はまったくダメダメだったのが今では日本車のクオリティが支持されているように、現在、Webはその過渡期にあるのではないでしょうか。

ありがとうございました!!

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